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古本屋日誌

2021-02-26 11:47:00

桂米朝は講談社文庫の「桂春団治」の解説を書いているなど、春団治に関してあれこれ発言している。

わたしが印象的だったのは初代春団治の「阿弥陀池」に関するコメントだ。

この落語の中で主人公のアホが人をかついでやろうと近所で強盗殺人事件があったという虚偽の受け売り話をするシーンがある。

強盗が懐から抜身のあいくちを出して八百屋の親父に切りつけた。「おやっさん、ぱっとあれかわした」「何かわしたんや❓」
てなやりとりになって、つまり「体をかわす」が出てこないで、四苦八苦する模様が西ノ宮のえべっさんまで引き合いに出して面白く語られる。

米朝はこのくだりについて「しかし『あれかわした』で意味は問題なく通じる。それを『何かわしたんや❓』と尋ねるのはそもそも不自然だ」という。

これは米朝が春団治に嫉妬しているのがよくわかる話だよなあ。

そんなもの相手は「体をかわした」だということなど先刻承知で、おちょくってやろうとして嫌がらせを仕掛けていることなど一目瞭然だろうよ。

聞いてる方も「さ〜て、どないしてこのアホを困らしてやるんやろ、おもろいなあ」と思って一生懸命聴いているわけで、米朝ともあろうお方にしてはバカげた発言だ。

自分にもあるんだけど、思うように表現できない領域って誰にでもある。

米朝にとってはこの辺の途方もないおちょくりの面白さはなかなか出せない話芸の一つで、それを難なくクリアしていく春団治にへんねしを覚えるのはよく理解できる。

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2021-02-25 18:37:00

初代桂春団治のCDが新たに出た。

桂文我のプロデュースで様々なSPレコードから6巻にまとめている。

春団治のCDはたくさん出ていて取り分け「春団治三代」はほぼ全集といっていい博捜ぶりで驚かされた。

今回のは春団治が時間を変えて吹き込んだネタがそのまま収録してあって面白い。

第1巻は「馬の田楽」なんだが7分、13分、12分と3種類だ。長いネタでもうまい具合に切り縮めて不自然さを感じさせない話芸を楽しんで欲しいということだろう。

各巻には冒頭桂文我の解説が収録してある。

春団治に関しては既に富士正晴の浩瀚な「桂春団治」があるのでその焼き直しのような話は聞き飽きている。

文我が何を付け加えているのか❓

例の有名なレコード煎餅の話がよかった。これは煎餅にレコードとしての機能も持たせたもので、春団治の小咄を聞いたあと食べることもできるとの触れ込みで売り出されたものだが、煎餅もそれを収納していたカンカンも発見されていなかった。

ところが10年ほど前そのカンカンに入った煎餅レコードが会津若松で発見されたという。文我は「わたしもそれを手に入れて米朝師匠にお見せしたら『長生きしたんでええもんが見れた』というていただけた」と話している。

このレコードは確かヤフオクに出品されていてかなり高額で落札されていた記憶がある。おそらく文我が落札したんだろう。

それはさておき文我はもう一つ興味深いことを話している。

それは煎餅レコードのお披露目は天理教の開祖40周年祭に合わせたものだったということだ。春団治は天理教と関係があったわけだろう。

そういえば「血だるま剣法」の平田弘史も天理新聞に教祖中山みきの伝記をもちろんマンガで連載した。彼も関係者なんだろう。

しかし、なぜか単行本になってない。

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2021-02-24 16:27:00

講談社学術文庫は国内外のいろんな古典を出版している。

2019年には「古今和歌集全評釈、全三巻」や「宇治拾遺物語、全2巻」が出た。これらはいずれも一冊が500ページを超える厚冊だ。

他にも全4巻の「平家物語」や「醒睡抄」「和英語林集成」「言海」「十八史略」「歌舞伎十八番」「靖献遺言」など枚挙にいとまがないのだがどれもすごく分厚い。

以前はこんなことはなく、今流行の渋沢栄一、全8巻の「論語講義」や全10巻の「今昔物語集」はペラペラでそれぞれ100ページくらいしかない。

これは定価を低く抑えないと買うてもらえないんじゃないかという懸念があったからだろう。

しかし蓋を開けてみたら少々高くてもお客さんは買うてくれるし、逆に薄すぎて何冊にもシリーズがわたるとめんどくさいとのクレームがあって、それではと今のような厚冊かつそれなりの値段が定着した。

それにしても500ページを超えるとなると重たいし、強く開くと開き癖ができそうだし、背割れの危険もある。

電子書籍ならそういった懸念もないわけで、講談社も紙の本と同時に電子版も出している。ただ値段が紙と全く同じというのはいただけないよなあ。ものでなくて情報なんだからその分安くするべきだろう。

電子書籍は高い伸び率で普及していて出版物全体に占める割合も25%に達している。

ただ電子書籍はその85%以上はマンガだ。つまり学術書はもとより、啓蒙書、新書、文庫に至るまで紙の本が圧倒的にシェアを占めているわけだ。

この状態はもう20年くらい続いている。





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2021-02-23 13:07:00

きつねうどんは今も丼池で営業している「うさみ亭松葉屋」の考案になることはちくま文庫の「きつねうどん口伝」に詳しい。

丼池は古くからの繊維問屋街で丁稚さんや番頭どんが汗を滴らせて朝から荷物の積み下ろしに精を出している。明治の話だ。

お昼となるとうどんだけではもたない。そこでうどんに別皿で甘くたいた揚げを付けてさらに丼飯も添えたという。

つまりは今のカツ丼みたいなスタイルですな。

あげさんをおかずにご飯を掻き込んでもいいし、うどんの出汁の中にドボンと入れておついかけにして食べても実にうまいから好評だったようだ。

今は揚げは別皿ではなく直接うどんに乗せて供される。

これは味のハーモニーや変化が楽しめるからだ。

食べ初めは揚げをかじると甘い汁が印象的で、とりあえず炭水化物を欲する疲れた体に心地よい。その口でうどんの出汁をすするとこぶやサバの香りが効いていて好対照だ。

食べ進むにつれて揚げの中にうどんの出汁が染み込んできて、揚げの味がまろやかに変化していく。

その一方でうどんの出汁には甘い揚げから溶け出した汁が混じり、食べ始めたはうってかわって、甘味もミックスされた絶妙な味に変化していくので思わず出汁は全部飲み干したくなる。

さてこのちくま文庫の「きつねうどん口伝」だが品切れになっていて、われわれもなかなか見つけられない。

価格も高騰している。


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2021-02-22 13:13:00

講談社現代新書の定方晟の「須弥山と極楽」は昔から人気のある本だ。また定方は今月インド仏教の世界観を図解した本を出すようだ、これも面白いに違いない。

さてこの「須弥山と極楽」は仏教のとてつもない巨大なスケールの由旬という価値観を視覚化して説明した本で、分かりやすさに感動する。お客さんからのリクエストも非常に多いが「1刷のものはないかなあ❓」というお方もいらっしゃる。

この本は現代新書の刷新に伴い、群青色のカバーに変更になったのだが、その前は長らく例のクリーム色のカバーだった。

昭和47年の初版時、果たしてどういうスタイルだったのか、よくわからないがひょっとして帯があったのかもしれないし、まあないとは思うけど何か特別な仕掛けがあったのやもしれない。

「私は初版は見たことがないし、わからないんですが、何か特別な仕様なんですか❓」

「いや、普通の現代新書のスタイルで、帯があったかもしれない、とにかく探してくれや‼️」とのことでした。

まもなく初版は入手でき、このお客さんにお売りしたんですが、特に変わりがあるようには見えませんでしたし、帯もその本にはありませんでした。

いずれにしても初版が手に入るのは極めてレアで、このお客さんは前世にどんな徳を積まれたのだろうか、けなるい限りだ。

確かに朝日新書や中公新書は10万部を超えた本にはスペシャルなカバーをつけていますね。また新潮文庫や角川文庫も初版だけカバーの背の色を変えている本があります。

私の大の好みの洲之内徹の「気まぐれ美術館」は初版だけ白い背表紙になっていて、それ以降は浅い茶色ですし、角川文庫の横溝正史は初版からしばらくは例の白い背表紙ですね。

こちらはマニアの方が集めていらっしゃってプレミアがついています。



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