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古本屋日誌

2020-12-18 15:28:00

今日から谷町4丁目の古書会館で古本市がある。
早速朝から出向いてみた。

年末だが取り立てて大規模なものではなく、出店もいつも通りだった。寸心堂、杉本、アジア、真木、シルヴァン、横丁、唯、厚生、ディック、矢野あたりだった。象々の平台に富士正晴と庄野潤三の単行本がたくさんあった。

レジでいつものことだが、一冊ずつ値段が印字されたレシートを欲しいというお客さんがいて「それは無理です、お客さんだけ特別扱いはできません」「レシート出しますから自分で書き込んで下さい、察してください」などと言われている。

帰りに久しぶりに茶屋町の「MARUZENジュンク堂書店」に出向いた。

編集工房ノアが出した山田稔の「富士さんとわたし」を受け取るためだ。山田は90を超えているのだがまだまだかくしゃくとして本も出し続けているので頼もしい限りだ。

時々銀閣寺の古本屋「善行堂」にも姿を現すそうで店主によれば「山田さんは探してる人も多いんです。こないだは来られた時にサインしてもらいました。小説だけでなく岩波文庫に入ってるフランス文学の翻訳もよう売れます」とのことで羨ましい限りだ。

5階の大阪の本コーナーに脇田憲一の「朝鮮戦争と吹田、枚方事件」があった。

脇田は例の枚方事件で逮捕されたが懲りずに日本共産党の山村工作隊に入り様々な「工作」に従事してその後高槻市議にもなった面白い人物だ。


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2020-12-17 18:51:00

武闘家の内田樹が雑誌「フリースタイル」の最新号に「コロナ・マッチョと正常化バイアス」なる一文をものしている。

彼の周りには「コロナなんかただの風邪だ‼️」とうそぶいてきちんとした感染対策を取らない「コロナ・マッチョ」がいるという。

内田によれば彼らがコロナをなめている根拠は自分の周りに感染した人間も困っている人もいないことで、内田はその根拠を意味のあるものだと認めている。現実を自力で捉えて判断を下しているからだ。

 

その上で、内田は事態が個々人の日常感覚に収まらないほど切迫してしまうケースを想定してみる。

万が一コロナの感染が笑えないほどになってしまったとしたならば、「コロナ・マッチョ」の人たちは「正常化バイアス」に冒されていたことになるというのだ。

「正常化バイアス」とは平常時の判断基準を非常時にまで持ち込むことを言う。

内田の主張だが、全く理解に苦しむ。

結局今のようになんの根拠もなく大げさにコロナを恐れましょうねということにしかならないではないか。

内田はコロナが日常性を覆す脅威である証拠を示して話を進めないといけない。

それなのにコロナが非常事態である根拠は何も示さないから正邪の判断なんかできるわけもない。

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2020-12-16 15:31:00

山本周五郎は人情ものも得意にしていて人気のある作家だが、私は「青べか物語」や「季節のない街」の方が作家の地であると思う。

折しも最新号の「ゴルゴ13 vol210」で人情ものの「三年目」が忠実にマンガ化されていて改めてそう思った。

江戸の腕のいい大工の友吉は博打でしくじり、許婚のお菊を弟弟子の角太郎に預けて3年を上方で過ごした。

さて江戸に帰り着いてみるとかつての長屋に2人はおらず、噂では2人は夫婦になって暮らしているという。

嫉妬に狂った友吉は探し当てるが、折あしく雨が降り続きかわが氾濫しそうになっている。

委細かまわず、飛び込んだ友吉はお菊に何も言わせず監禁してしまう。

そこへ角太郎が帰ってきて実はお菊は別の男から迫られていてその魔手から逃れるために夫婦になったと偽って暮らしているだけで友吉を裏切るようなことは何もしていないことがわかる。

風雨が強まり堤防も切れて濁流が家の中に侵入してくる。手足を縛られ自由が効かないお菊はもう、水の底だ。うろたえた友吉は必死で潜りお菊を助け出してめでたしめでたしてな筋ですな。

普通に考えて無理があるストーリーですね。友情は愛情に勝つということなんでしょうけど、子どもじゃあるまいに、面妖な筋だてだ。

「季節のない街」ではスラム街に棲む名もない大衆の赤裸々な姿をあれほどリアルに描いた周五郎がどうしたのかと思う。

もちろん計算して書き分けてるんですよね。それこそが天才たる所以ですな。


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2020-12-15 12:33:00

連続テレビ小説の「おちょやん」に合わせて宝島社から「浪花千栄子の人生劇場」が出た。

大判のムック本で宝島社お得意の付録、「祇園囃子」のDVDが付いている。

昭和28年の大映映画で溝口健二が監督だ。

木暮実千代扮する祇園の芸妓の美代春は弟子の芸妓の美代恵(若尾文子)の不始末を実力者の君(これが浪花千栄子)から責め立てられる。

美代恵は旦那になろうとする東京の金持ちに迫られて、苦し紛れに男の舌に噛み付いて大怪我を負わせてしまったのだ。

君は美代恵はともかく、美代春に旦那を取るように要求するのだが、美代春はどうしてもうんと言わない。

君は裏から手を回して美代春や美代恵のお座敷がかからないようにする。

ここで自分が元で姉さんを窮地に追い込んだことを悩んで美代恵が祇園の路地を着物姿で行き来するシーンがある。おりしも祇園祭が近いこととて画面いっぱいにコンチキチンの祇園囃子が流れる。

楽しい楽しい祇園祭のおはやし、華やかな芸妓衣装、祇園の路地、何もない時ならこれほど心を癒してくれるものはないのに、窮地に立たされた美代恵には神経を逆撫でする暴力的なメロディでしかない。楽しい日常が横溢する中で自分一人が追い詰められている。

追い討ちをかけるように傍輩の芸妓たちが美代恵を訪れて口々に「がんばってね‼️」などと励ましてくる。これがまた神経に障るのだ。


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2020-12-14 15:47:00

柳美里が全米読者賞を獲り、そのためか一部の本が値上がりしている。

新潮文庫の「石に泳ぐ魚」はモデル問題でもめたから前から少し高かった、といっても700円くらいだ。

新潮社からだいぶ前に出た「柳美里不幸全記録」が高騰している。黒いバックに柳美里の細長く、青白い顔が全面に登場する面白いカバーの本で、非常に分厚い。

シングルマザーで子育てに追われるてんてこまいの日常、15下の男との出会いなどが詳細に語られる。

つまりは詳細な私小説なんだが確かに面白い。

ところが従来の古書価はせいぜい600円くらいで、分厚くて簡易な発送方法が使えず、レターパック520などを使用せざるをえないから古本屋泣かせの本だった。

ところがこのところ5倍くらいになっていて、帯付きの本を探しているお客さんも多い。

私小説ではないが彼女が1995年ごろから「週刊朝日」に連載していたエッセイも多くは幼少期の自身の家族を描いたもので面白い。

なんでも父親と母親は金が入ると子供を連れて美味しいものを食べに行ったり、欲しいものをどんどんこうたりして数日で全額使い切ってしまう。その後の4週間あまりは食べるものにも事欠く有様なんだが、両親ともけろりとしていたという。
面妖な家庭だよなあ。


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