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古本屋日誌
文藝春秋から田辺聖子の18歳の時の日記が出ている。
亡くなってから姪が彼女の自宅を整理していたときに発見したもので、昭和20年の4月からのものだ。
日記帳の欄外にはすでにいくつかの短編小説が書き込まれていてそれも併せて刊行している。
興味深いのは5月の空襲で死んだ人を地中から掘り出す作業のシーンだ。
空襲から何日かたった地面の下に死体が埋まっていることがわかり、付近の住民が集まって掘り出すのだが、出てきた死体は傷つき、切り裂かれて血肉したたる無残なものだった。
田辺はそれを目の当たりにしてそのむごたらしさに目を背けて茫然としている。
ところが近所に大人たちは
「あれは焼肉みたいやな❗️」とか
「こんがり焼けて立派なもんだよ❗️」と笑いながら言い合っているのだ。
田辺はこれを聞いて仮にも戦争で死んだ人を悼むでもなく、笑い者にするとはと憤慨するわけだ。
これはプレグマンが「希望の歴史」で書いていたことだ。
ナチスが苛烈なロンドン空襲を仕掛けて市民の戦争への意識を喪失させようとしてが、事態はまるで逆でむしろ戦意は高揚したというのだ。
日本でも同じようなことが起こっていたのは間違い無いだろう。
うちもたくさんの本をAmazonに出品して販売している。
販売力があるからだ。
Yahooオークションもたくさんの本が出品されていて、その集客力はAmazonにおとらない。
ただ問題はヤフオクは出品時何枚かの写真を自ら撮影し、書名を打ちむ必要がある。
落札後、発送時もAmazonのように即座に発送先住所、宛名が印刷できる仕様になっていないので、いちいち書き写す必要がある。
ただこの二つの通販サイトには売れない商品の価格を自動で最安値に合わせる機能が付いていて、希望すればいちいち手動で価格を下げていく手間を省けるようになっている。
ショーンバイセルの「ブックセラーズ・ダイアリー」はスコットランドの古本屋店主の営業日誌だ。
なんでも世界12ヵ国で翻訳、出版されているという。
面白いのは出入りする客のことだ。
ある日店主のバイセルが客から買い取った8箱の本の一杯詰まった箱を店の前に積み上げていると、ひとりの男性客が
「その箱にも本が入っているのかい❓」と、まるで卑猥な秘密でも暴くみたいな顔つきで訊いた。
そうですよ、と答えると、その男は大声で、こちらが不安になるほど長い間笑い続けた。
とある。これは2004年の話なんだが古本屋が本の入った箱を積み上げるのがどう面白いのか、不思議というほかない。
今年の夏に白水社からショーンバイセルの「ブックセラーズ・ダイアリー」が出た。
これはスコットランドの古本屋の実録で一年にわたって毎日の店での売り上げ、購入者数に加えてネットでの売り上げも記してある。
ただこの本によれば店頭の在庫は軽く10万冊を超えているし、ネット売りもそのうちの1万冊なんだそうで、われわれとはそもそも規模が違う。
2月の店売りは、5日が274ポンド。6日は95、7日は67、8日は77、9日は休み、10日は119、11日は5、12日は104、13日は13、14日は307ポンドという具合だ。
1ポンドは150円くらいだから307ポンドは46000円くらいになる。これが毎日だったらいいんだが、1日店を開けても5ポンドしか売り上げのない日がある。
これは750円だから俺だったらもう精神的に参るよなあ。
ネットの売上でもたまにものすごく少ない日があると気になって仕方がない。
古本屋の仕事の最大の問題は仕入れだ。販売は店舗でも売れるし、通販なら販路は全国なので他の業種のように売り方で悩むことはない。
昔からの古本屋でお客さんも何代にもわたっていい本を売ってくれるという関係を築いているところは商売も容易だ。
ぢこういう古本屋にも悩みはあって1つは売れない専門書を持ってくる大学の先生だ。文系の専門書は万を超えるものも多いが、大半は同人誌レベルで学問的な価値はない。
しかしお客んは自分が著者ということも多くて、そういう常識的な判断もできないから、断る理屈を捻り出すのが大変なのだ。
また和本を扱う古本屋も必ず購入してくれるお客さんがいるので商売としては楽だ。
しかし、売ってくれるお客さんは必ず和本とセットで何十年も前の売れない本を大量に持ち込んでくるので、その処分をどうするかいつも困るのだ。
私の感じでは仕入れが容易な分野はなんといっても文学書だな。とりわけ日本文学の初版本とかを取り扱う本屋は客との個人的な関係を作りやすい。
それは客がこちらからは窺いしれないいろんなこだわりを持っているからなのだ。
ある気に入った作家の初版から始めてその後の全ての刷が欲しいとか、文庫本なんだがカバーがある刷から変わった、ついてはその変わる前の最後の刷の本が欲しいとかいうわけだ。
だからそのこだわりに応えられる古本屋だということになれば、お客さんはリピーターになって何度も本を売ってくれる。
文学書のコレクターは同時に哲学書や人文系のなかなかいい本も持っているものだ。客の方は古本屋にすがる思いでお目当ての本を探しているから、恩義も感じていて、いろんな本を安く売ってくれるわけだ。
というわけで仕入れが容易な古本屋は
❶文学書を専門に扱っている、日本文学でも西洋文学でもかまわない。
❷店主はある程度自分の扱う本について思い入れを持っている必要がある。単に一発当てたれとか、古本屋は楽な商売だとか、やまこだけではいけない。
❸古本屋の所在地は大阪府南部(堺、和泉、貝塚)と大阪府北部(豊中、吹田、箕面、高槻)が望ましい。金持ちがそれなりに多いし、大阪大学、大阪市立大学、大阪府立大学などがある。また南部は引退して余生を過ごす老人もたくさんいる。