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古本屋日誌

2022-08-30 15:30:00

こないだの参議院選挙で共産党から立候補して当選した仁比聡平くんは大学の後輩だ。

 

彼は福岡の出身なんだが、弁護士になった後、国政選挙にも何度か出馬し、今回は参議院議員となったのだ。

 

 

さて、彼は一回生の時点で既に共産党の活動家として確固たる信念があった。

 

俺も反体制運動に勤しんではいたものの、今ひとつ確信を抱くまでには至っておらず、共産党系の集会に参加したり、新左翼の集まりに行ったりとフラフラしていた。

 

仁比くんは「先輩(つまり私のこと)のこと、みんな二重スパイやゆうてますよ」とニヤニヤしながら話しかけてきた。

 

いつもエネルギッシュな仁比くんだが、ある時からばったりと大学に来なくなった。

 

共産党系の自治会のメンバーに聞いたら「仁比はな、自律神経失調症なんや。朝起きられへんようなんや」

 

「そら、大変やな、見舞いに行かなあかんね」

 

「いや、お前には言わんといてくれ言われてたんや、仁比の意向や」と心外なことを言うのだ。

 

しばらくして仁比くんが大学に姿を見せたので、とっ捕まえて

 

「病気のことどないやったんや、気になってたんやで」

 

「そうなんや(長い沈黙)」

 

「えらい言われようやな、迷惑そうやけど」

 

「そんなにゆうんやったらな、俺もな、あれこれ抜き(暴力沙汰になって怪我しても文句言わないという意味)でやったるわ❗️外へ出ろ❗️」

と怒鳴る。

 

病気のことを案じて、それも、一応後輩からどつかれるのも不思議な話なので、びっくりしたまま、すごすごと引き下がりました。

 

しかしこれが出来る人間の姿なんだよなあ。

 

頭はいい(ただし、弁護士や代議士になれる程度でしかないとはいえるが)また同時に喧嘩も押しも強い、おまけになかなかのイケメンだ。

 

これがわれわれの時代の典型的なガキ大将の姿だったんだよなあ。

 

仁比くんは、以前衆議院議員になったこともあって、その時、彼のホームページから中学受験の進学塾である日能研関西の過労死事件やその後の不当労働行為事件について相談したことがある。

 

 

もちろんなんの返事も返ってこなかったのは今さらいうまでもない。


2022-08-29 10:22:00

大阪の作家で取り上げられるのは非常に偏りがある。

 

古くは織田作之助。上司小剣。水上滝太郎。

 

織田の作品は昭和はじめの近代化に突き進む大大阪とは正反対の市井ものだ。時流に乗らない復古的な作品だ。

 

上司のものはいつも「鱧の皮」。

 

大阪の節約精神と望郷や、家族愛がテーマになっている、やはり復古的な作品だ。

 

でも上司小剣には大阪をテーマにしたたくさんのエッセイがあるのに、誰も顧みない。

 

水上は「大阪の宿」。大正時代から大阪の人はケチで無粋だという話で、要するに今の大阪像にマッチしているだけの作品だ。

 

そんな薄っぺらな意味のない文学史はいい加減やめたほうがいい。

 

杉山平一、山田稔、小林一三、宇野浩二、川端康成、富士正晴、川崎彰彦、岩阪恵子、大谷晃一、岩野泡鳴、足立巻一、小松左京、富岡多恵子、町田康、開高健、庄野潤三、芦辺拓、三輪正道、杉本秀太郎、加藤一雄、天野忠、小野十三郎、藤澤桓夫、このあたりが、至極真っ当な大阪の作家(京都の人もいるけどね)だろう。

 

杉山平一は詩人としても有名だが、興味深い私小説「わが敗走」(編集工房ノア)はことに魅力的だ。

 

実家の鐵工所経営が行き詰まり、雇用している労働者との交渉に明け暮れるストレスフルな日常をなんとか平静に乗り切ろうとする話で、驚くほかない。

 


2022-08-28 17:11:00
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今日は下鴨にある三井家別邸に嫁と出向いた。

 

明治時代に建てられた三階建ての本邸と椋の大木が聳える庭園を見た。

 

650円で抹茶のムースもいただけた。

 

三井家といえば、維新後、東京に、ほとんど天守閣を模倣したような銀行を建てたことで有名だ。

 

井上章一がそのことを指摘してなるほどなあと感心したものだ。

 

徳川時代は、商売人ごときが巨大な3階建て、4階建てを作るなどもってのほかだった。

 

 

ところが御一新以後は、四民平等となって堂々と、武士のすまい、それも御城主さまのお住まいでも真似できることになった。

 

 

井上章一はそこに明治維新の革命としての徹底ぶりを見る。

 

 

そしてこの下鴨別邸だ。

 

 

ご覧のように木造で3階建て、中央に望楼が、設けてあるのだ。

 

 

これも天守閣風の建物だと考えられなくはないな。

三井家はとにかく生意気な、血気盛んな人たちだったんだろう。


2022-08-26 08:34:00

昨日取り上げた『本の雑誌』の2014年8月号なんだが、大阪のはなしで承服できないところがある。

 

ブックオフに関する対談で今柊ニの発言だ。

 

「あの異常なブックオフ(これはかつてJR鶴橋駅にあった店舗のこと)。大阪は心斎橋筋にも何店かありますけど、美容院かなんかの跡に作った中途半端なエスカレーターがあるでしょう。」

 

 

「大阪のブックオフって無理やり作ってるのが多いから、変な店舗が多いんですよね。」

 

鶴橋駅のブックオフは改札を抜けたらそのまま店舗に入れるもので、便利だし、古本屋に行かない人には他にもたくさん改札はあるから、別に異常ではない。

 

 

また心斎橋店のエスカレーターが「中途半端」だということだが、意味がわからない。

 

間口は二間、一階の天井が高くて、エスカレーターで2階に上がるシステム、エスカレーターは40段分くらいあるし、何が中途半端なんだろう。

 

また大阪の店舗が「無理やり」作ったというのも意味不明で、言いっぱなしで困ったものだ。

 

そもそも大阪への偏見に基づいた愚論、暴論には飽き飽きしている。

 

大阪の人が百貨店や、エレベーター、電車、街頭で見知らぬ人にも親しげに話しかけることがあるのを

 

「大阪は大きな田舎だ」

「血縁、地縁で結ばれた昔の社会の名残りがある」

 

みたいなステレオタイプ。

 

本当にバカだよなあ。

 

徳川時代から、大阪は貨幣経済が発達し、商品作物も農村に浸透していた大都会だということを忘れている。

 

西鶴も読んだことがないんだろう。

 

昭和の初めの雑誌に載っている大阪へのコメントは「近代化され、人情も失われてしまった巨大都市」であることも知らないんだろう。

 

大阪の人が話しかけてくるのは、大きな田舎だからではない。

 

都市空間の中で、見知らぬ人同士がかち合うスペースで気づまりになってしまうのを防ぐためだ。

 

韓国でもアメリカでも大都会はみんなそうなっている。

 

ニューヨークなんかエレベーターで見知らぬ者同士、なんやかや話をしてるし、街中で話しかけてくるのは人もいる。

 

大阪とおんなじだが、ニューヨークを田舎だという人はいないよなあ。

 

完全にダブルスタンダードなのが不愉快だ。

 


2022-08-25 09:51:00

『本の雑誌』の2014年8月号はブックオフの特集だ。

 

全国にあるブックオフにはまり、機会を見つけては行脚して400軒以上訪ね歩いたというおかしな人のリポートやライターが東京のおすすめのブックオフを語る座談会などが載っている。

 

その中で東京在住でせどりをして儲けてる人やブックオフに仕入れを依存している古本屋の話がある。

 

せどりの方は、1日2時間程度、ブックオフを巡回して仕入れをして、AmazonのFBAに送る手法で月商120万以上、利益で30〜40万出ているというのだ。

 

インタビュアーが 「俺の給料より多い…それ、どれくらいの時間で稼ぐんですか。」と聞くと

 

「毎日の仕入れに2時間と、アマゾンへの発送作業を合わせて、月に80時間くらいです」

というわけだ。

 

予想されていたことだが、東京て、商売ラクだよなあ。大学やマスコミ、出版社が密集して、業務として本の需要が高いからいくらでもいい本がある。

 

 

 

交通も至便で、大した距離移動しなくても大きなブックオフがいくらでもあるから、簡単に仕入れできる。

 

大阪では、全く思いもよらない話。ほんまに羨ましいよ。

 

 

ちょっとびっくりするのが古本屋なんだが仕入れはほとんどブックオフだという店があることだ。

 

「しまぶっく」という古本屋でその店主へのインタビュー。

 

「仕入れはほとんどブックオフですか。」

 

「9割方そうです。買取や神保町の均一棚で買うこともあるけど、ほぼブックオフ。」

 

「ブックオフがないと商売が成り立たないですね。」

 

「なければないで別の方法を考えるとは思うけど。いまのところ、均一本や安めの本はブックオフで、棚のポイントになるいい本は古書会館で買う。そんな感じで使い分けています。」

 

いいなあ、なんの努力も工夫もなく金儲けできるんだからね。

 

つまり、東京はバカでもちゃんと暮らせる都会なんだ。

 

確かに魅力的な街だよ。