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古本屋日誌

2019-12-16 11:36:00

アメリカの社会学者スティーブンピンカーの新刊「21世紀の啓蒙」が草思社から出たようだ。

まだ入手できてないのだが、以前「暴力の人類史」を読んでこれまで第二次大戦が大量の戦死者を生み出した人類史上最悪の戦争と思っていたのに、その蒙を破られてびっくりした。

ピンカーは資料を博捜して当時の人口を推定して各時代の戦乱によって何割くらいの人が影響を受けたかを割り出していた。それによれば唐末の安史の乱による戦死者数は3600万人でそれを20世紀半ばの人口に換算したら4億2900万人死んだことになるという。この数字は第二次大戦の戦死者5500万人をはるかに上回っている。

ほかにもモンゴルの征服では換算して2億7800万人、中東の奴隷貿易では1億3200万人死んだことになっていて、確かにこれを読むと人類は戦乱を忌避して進歩してきているようにも感じるよなあ。

今度の新著でどんな話が聞けるのか楽しみではある。


2019-12-15 12:02:00

漫画雑誌「アクション」に連載中の河野那歩也の「監禁嬢」にはミナミの戎橋や道頓堀橋周辺の風景が見開きでたくさん出てくる。作品の舞台が当面大阪で、主人公たちがひとときデートを楽しんでいるというだけのものなんだが、初めが御堂筋が道頓堀川と交差する道頓堀橋上空からの大開の俯瞰、ついで戎橋上空からの俯瞰、例のグリコの大看板、道頓堀川から見たかに道楽、ドンキホーテの観覧車と続く。

おそらく精密な写真を元に描き起こしたものだろうが、見ていて楽しい。主人公の元高校教師は教え子と一緒に出身校の大阪教育大学の学寮に向かうのだが、ここの描写もリアルで駅からかなりの距離がある山の頂上にキャンパスはあって、登り口に到着するとそこからエスカレーターを三基乗り継いでようやく到着するあたりも忠実に描写してある。校舎、図書館、学寮の描写も極めて忠実だ。

夏になるとこの山間にはびっくりするくらいの蛍の乱舞が見られてというあたりもリアルなんだが、ここで主人公が学生時代に図書館で知り合い、付き合っていた女の話が出てくる。女は突然大学を辞めて父親が経営していた古本屋を継いだという話になっていて、主人公は数年ぶりにその古本屋を訪ねるのだ。

間口が2間くらいはあって、うなぎの寝床風に奥行きがあり三列に本棚が置いてあって、ただ地べたに本は積み上げていない清潔感のある古本屋なんだが、これが思い当たるふしがない。

ここまであくまでもリアルで、現実をなぞっていたのに古本屋だけ、少なくとも私の記憶にはない店が描いてあって悔しい。

 


2019-12-14 11:46:00

NHKの深夜番組の「球辞苑」が初回を特集していた。

ファイターズの栗山が「ショートスターター」を導入して先発ピッチャーの不安定な立ち上がり対策を取ったことが取り上げられていた。

ショートスターターとは従来のように先発ピッチャーに最低5回までは投げてもらうというのではなく、中継ぎやセットアッパーを先発に起用してまず初回だけを抑えてもらって2回からはまた引き継ぐ形だ。

メジャーではかなり一般的な形で特にレイズは40試合以上で導入していて、今シーズンはメジャー全球団が試みている。

まあ確かに力のある投手でも立ち上がりで失点してあとは無難に抑えて、結局スミ1で敗戦投手になることもあるから、中継ぎやセットアッパーに初回を任せればそれを防げるというわけでなかなか面白い試みだな。

それにしても野球はピッチャー中心で打者はどんなに低レベルで打率も2割を切りそうな選手でも4番同様、平等に一打席与えられる変な民主主義的なスポーツですね。私はこれが嫌だ。

打者も1番から5番くらいが繰り返して打つようにしてほしいけどなあ。タイガースなら近本がヒットで出たらファーストには足の速いやつを代わりに置いて、また近本が打つようにしてもらいたい。近本がまたヒットを打ったらこんどは糸井がバッターボックスに入ってスリーランホームランをうつ。

その後もまた糸井が続けてバッターボックスに入るというのはどうかなあ。


2019-12-13 10:30:00

今年の7月、雑誌「望星」が大阪の特集号を出した。阪大の中野徹が井上章一と対談するページがある。

井上は昭和10年ごろの雑誌で東京に暮らしている元タカラジェンヌたちの座談会を読んだが、皆大阪弁で話しているし、それを東京の雑誌記者は「日本語におけるフランス語ともいうべき大阪弁で語り合っている。江戸っ子には理解しがたい、えもいわれぬ味わいがある」と語る。

また昭和30年ごろから大阪の会社が本社機能を東京に続々移転した影響で、東京のサラリーマンには大阪弁が高圧的で威張っているように聞こえたことも指摘している。大阪から来た上司の話し方が大阪弁なんだからうなづけることですね。

まああれですね、今はおちゃらけか金のからんだ、下品なヤクザ言葉めいたものとして位置付けられてしまった大阪弁の捉えられ方の変遷は興味深い。

私も含めてそのもう一つ下の世代、1970年代の前半生まれくらいまでは大阪弁やアクセントへのこだわりが強いひとたちが必ずいた。小さい子が幼稚園や小学校で変なアクセントを覚えて家で話していると強い口調でたしなめるわけだ。

そのために東京アクセントやその話し方を受け入れようとしていたある層が、「これではならじ」とまた大阪弁に復帰してくるという過程が見られた。

ちょうど小学生が巨人やホークスのような単に強いだけのチームに憧れてファンになるが、中学生に上がる頃に周りから「お前も大人なんだから、勝つのが嬉しいなどという幼稚な価値観は反省せなあかん」とか言われてタイガースに回帰してくるのとよく似ている。

でもまあ今はそういう改心や洗礼を受けることもないだろうなあ。

 


2019-12-12 08:18:00

岩波文庫から近代100年の東京の変貌を小説やエッセイでたどる「東京百年物語」が全3巻で出た。

その2巻目に中野重治の「雨の降る品川駅」が収録してあって、例の「日本プロレタリアートの前盾後盾」がちょっとおかしいのではないのかという話はよく聞かされた。

まあそれはどうでもいいとして、解題によればこの詩は昭和天皇の即位式の邪魔になるからという理由で朝鮮人を強制送還したことを読んだものなんだという。

今回収録のものには1929年の雑誌「改造」掲載時には伏字になっていた部分も復元してあって「君らは雨にぬれて君らを追う日本天皇をおもいだす 君らは雨にぬれて髭 眼鏡 猫背の彼を思い出す」がそれに当たる。

昭和天皇の即位式に、当時は大日本帝国臣民である朝鮮人が強制送還されてしまうのは皮肉な話だ。

まああれですね、朝鮮を植民地化したわけだから、大日本帝国には清濁併せ呑む度量が求められていたのに、混乱を恐れたり、過剰警備で臣民たる朝鮮人が追い返すとは言語道断、わけがわからない。

その当時に的確に矛盾を指摘した中野重治の慧眼は大したものだ。


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