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古本屋日誌

2019-12-06 12:27:00

千林に行ってみて商店街の楠書店がずっと2割引セールをやっている。
店主の娘さんがいたので聞いてみたら父親は腰を悪くして店に立てる状態ではなく全品2割引にして、切りがついたら閉店するのだという。なんでも齢90になっているそうで、確かにその年齢で重たい本を扱う商売は苦しかろう。
この店はうなぎの寝床のような細長い店内の両側とセンターの本棚は天井まで本で埋め尽くされているのみならず、左側の本棚の前にはこれまたうず高く天井を目指して本が積み上げてあったので本棚を見渡すこともできなかった。
しかしさすがに昨日は本棚の前にあった本は撤去してあって初めて全体を見渡すことができて、意外なことに谷崎と棟方志功がコラボして作った「瘋癲老人日記」や「鍵」「夢の浮橋」なんかがえらくたくさんあった。それぞれが3冊くらいは置いてある。
これは箱と本体に棟方志功がえらく凝った彫りを施していてみている分には楽しく、豊かな気分になれるのだが、何分にも大型本で場を取るので従来敬遠されていて100円内外で売られていたものだ。

今はさすがに7〜800円になったが、それでも安い。ところがこの古本屋のやつはどれも昔から2500円くらいしていて、「必ずこの本はこの値段でも十分安いといえるまでになる」というような強い思い込みが感じられた。


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2019-12-05 12:09:00

雑誌「大阪春秋」最新号はシナリオライターの長沖一の特集号で、長沖が本格的にプロレタリア作家だったことがわかってびっくりした。

大阪高校から東大というルートは藤澤桓夫と同じで、藤澤も左傾していた時期があったからなあ。

小林多喜二の「工場細胞」のマネみたいな作品が復刻されて載っていたけど、さて評価できるレベルなのかというと難しい。

この雑誌には藤澤桓夫が長沖に宛てた書簡も載っていて「怠りなく精進して小説創作に励むように」とか「先月の小説はつまらなかった、もっと粘り強い描写が必要だ」とか叱咤激励する内容で、藤澤が自分の小説に自信を持っていたことがわかってこれまたびっくりした。

藤澤桓夫の小説もご多分にもれずくだらないもので、とうてい再読にはたえない。

まあ時代ですよね〜〜需要があれば供給もある、そんなもんだとみんなが思っていたらそれでいいわけです。

アメリカの中流階級の家はそもそも床暖房を入れっぱなしで、つねにぬくい。家の外壁には油を溜める巨大なボンベが付いている。

我々は外出時はストーブも消すし、床暖房も付けっ放しにはしない。でもまあこれは好みの問題だからそういうものでしかない、ただ光熱水費はアメリカの方が圧倒的に高いことは確かだ。

われわれだってなぜかわからないが休みになると旅行に行きたがる。多大な旅費と宿泊費に加えてただ電車や飛行機に揺られている長い時間をものともせずに出かけていく。

名所旧蹟といっても大したことはなく、うまい飯とかいっても大阪でいくらでももっとうまいものが安く食べられる。


2019-12-04 12:50:00

吾妻ひでおの「逃亡日記」を読んでいたら石ノ森章太郎の忘年会の話が出ていてアシスタントからファンも入って家族ぐるみの宴会なんだが、酔っ払ったアシスタントが「仮面ライダーなんかくだらない、どうしょうもない」とからみだした。

石ノ森章太郎は何もいわずに出て行って、その後奥さんがアシスタントに「そんなにお酒飲んだらあかんよ〜〜」とたしなめていて、吾妻ひでおは「さすがは石ノ森章太郎、大したものだ」とその対処術をほめていて、その上で「俺も仮面ライダーはどうかなあ、というのはあるよ、だけどあれだけ子どもに受けているんだからね、石ノ森章太郎は先を読む目があったんだね」という。

吾妻ひでおは不思議な人だなあ。自分の好みでは「仮面ライダー」は認めないけれど、世間がもてはやしてるんだからその価値は認めないといけないという、極めてまともな感覚ですよね〜〜


2019-12-03 12:45:00

先ごろ亡くなった吾妻ひでおの「逃亡日記」を入手しました。2015年発行の文庫版で、二回の失踪時の放浪場所を編集やカメラマンと訪ねた写真が20ページにわたって掲載してある。

なんでも失踪時は金もなく、シケモクや廃棄弁当の入手を狙って東伏見から石神井公園まで2時間くらい毎日歩いていたとある。

吾妻ひでおはレストランやコンビニの廃棄物を狙って出向いて、それでも処分場では開けたりせずにそのまま人目につかないところまで持ち帰り、そこで必要なぶんだけ取ってまた返しに行っていたとある。

まああれですな、人目は気になっているのだが、それはマナーにもとることをしたらもう廃棄弁当が手に入らなくなるおそれがあるという極めて実用的な理由からで、人から自分がどう見られているか気になるからではないんですね。

吾妻は失踪中、ガスの配管工になって日給1万で働くようになり、やがて社内報に漫画を投稿して当然掲載されて、まわりの若いヤンキー風の配管工から一目置かれる存在になるのだが、それでも「この人があの吾妻ひでおなのか‼️」と話題になることはなかった。

これは寂しいといえば寂しいことなんだが、日本が繁栄している証でもあるよなあ。王や長嶋とはいわないまでも娯楽の少ない昔はそれこそ国民的ヒーローがいたわけだが、そんなものは退屈なだけですよね。

今はそれぞれが自分の好みに応じて熱狂できるものを手に入れている時代で「有名人」と言ってもたかが知れてます。

結局吾妻ひでおが友人から借りていた自転車がじつは盗難車で、警察に見つかり連行されることになって失踪は終わる。


2019-12-02 14:13:00

えらい早うに亡くなってしまった黒田一樹の「すごいぞ 私鉄王国関西」を入手しました。ぜひお読みください。

今はJRのアーバーンネットワークがずいぶん整備されて長浜から明石まで乗り換える必要もなく、圧倒的なスピードでいけます、それに引き換え関西の私鉄は阪急はまだ堺筋線と乗り入れているから、天下茶屋から河原町までスムーズに行けるが、その他京阪にしても、南海にしても近鉄にしても、JRとの接続駅で長大な階段の後、いちいち改札を出て、ひちめんどくさいことこの上ない。

近鉄など特急を最優先で走らせる上に複線でしかないから普通列車はえんえんと10分以上も通過待ちを強いられてビックリする。

また京阪電車の京橋駅はすぐ下に環状線があるのに、三階のホームからエスカレーターで下まで降ろされ、寒風吹きすさぶ中100メートルはあろうかという連絡通路を通らされてとなっているのだから、いい印象など持ちようがない。

黒田はこれについて「関東のターミナルはどこも乗降客で満杯であったのに対して関西のターミナルはまだ余裕があったのに加えて、大阪市の鉄道経営方針がモンロー主義で、私鉄の介入を許さなかったところから直通運転は発達しなかった」という。また「それぞれの私鉄が独立していたので特色ある独自の文化を生み出した」とやけに肯定的にとらえている。

まあ俺はそんな風には全く思わないけどな。普通に毎日通勤して、満員電車にゆられていく身にしたら、京阪電車の京橋駅は人をおちょくっているとしか思えない。おまけに京橋駅到着時には日本語、英語、中国語、朝鮮語での全く何の意味もないどころか騒音を垂れ流す公害放送まで聞かされるのだからイライラさせられる。阪急電車はあんまり車内放送も、駅での放送もやらないわけで、京阪電車のバカさ加減にはあきれる。

黒田は京阪電車の複々線は目的地別のそれなので、普通と急行や準急の乗り換えが極めてスムーズに行えるようになっている、目的地別複々線が12キロも続くのは関西では京阪電車だけなんだという。

そういうものなのか〜〜

燈台下暗し、幸せの青い鳥みたいなもんなんですかな。


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