Welcome

古本屋日誌

2019-12-03 12:45:00

先ごろ亡くなった吾妻ひでおの「逃亡日記」を入手しました。2015年発行の文庫版で、二回の失踪時の放浪場所を編集やカメラマンと訪ねた写真が20ページにわたって掲載してある。

なんでも失踪時は金もなく、シケモクや廃棄弁当の入手を狙って東伏見から石神井公園まで2時間くらい毎日歩いていたとある。

吾妻ひでおはレストランやコンビニの廃棄物を狙って出向いて、それでも処分場では開けたりせずにそのまま人目につかないところまで持ち帰り、そこで必要なぶんだけ取ってまた返しに行っていたとある。

まああれですな、人目は気になっているのだが、それはマナーにもとることをしたらもう廃棄弁当が手に入らなくなるおそれがあるという極めて実用的な理由からで、人から自分がどう見られているか気になるからではないんですね。

吾妻は失踪中、ガスの配管工になって日給1万で働くようになり、やがて社内報に漫画を投稿して当然掲載されて、まわりの若いヤンキー風の配管工から一目置かれる存在になるのだが、それでも「この人があの吾妻ひでおなのか‼️」と話題になることはなかった。

これは寂しいといえば寂しいことなんだが、日本が繁栄している証でもあるよなあ。王や長嶋とはいわないまでも娯楽の少ない昔はそれこそ国民的ヒーローがいたわけだが、そんなものは退屈なだけですよね。

今はそれぞれが自分の好みに応じて熱狂できるものを手に入れている時代で「有名人」と言ってもたかが知れてます。

結局吾妻ひでおが友人から借りていた自転車がじつは盗難車で、警察に見つかり連行されることになって失踪は終わる。