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古本屋日誌

2020-10-09 13:58:00

住吉の長屋に暮らしていた中学生時分に、同じ長屋に競輪の選手をしていた後藤さんがいた。

長屋なので六畳2間に台所、玄関のすぐ右に二階に上がる階段がありそこも同じような作りだった。家の中には競輪用の軽快な自転車が並べてあった。

周りの人が言うには「後藤さんはなあ、スゴイんやで、日本一に二回もなってんねんで」

日本一になっているにしては貧相な長屋住まいだと小学生でも思ったことは思った。

競輪の選手なのにえらいこえていて、夕方になると家の前に床几を出してどっかと座り、パンツ一丁、上半身は裸で酒を飲んでは町内の悪ガキに目を光らせていた。

プライバシーなどない時代なのであることないこと全て筒抜けで、小学生の時には虫歯を治すように言われていたが、歯医者が怖いのでいつまでもぐずぐずしていたら、後藤さんのおばさんに無理やり自転車の後部座席に乗せられて膝の上にロープをかけられて歯医者に連行された。

中学2年の11月に倒立前転を失敗して右足を骨折して入院した折には「正月は家に帰らんとな」と病院まで自転車で迎えに来てくれて、わざわざ住吉警察署の前をゆっくりしたスピードで走った。
警察署の前に制服姿、樫の棒を両手で持つ警官はハッとした顔つきになってこっちを向いてなんか叫んでいる。
「あれはな、2ケツはあかんゆうとんねん」と涼しい顔で通り抜ける。

その後藤のおっちゃんは酒で身を持ち崩して肝硬変になってしまい、入院先の病院で死んでしまった。葬式も済んでしばらくたった真夏の午後おかしな出来事があった。

右手に以前池があったが、埋め立てられその時はもうモータープールとなっていて、正面に国道26号線に向かう東西の道左手に安立小学校へ向かう南北の道がある辻のところに、真夏のギラギラ照りつける太陽の中、西側から突如として自転車に乗った後藤さんが現れた。

赤錆びたいつも乗せてもらっていたやつで後藤さんは上はシャツを着ていたが下は相変わらずパンイチだった。

ゆっくりしたスピードで驚愕する私の前をニヤニヤしながら通り過ぎた。

これまで生きてきて幽霊を現認したのはこれが唯一だ。

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2020-10-08 18:07:00

うちの店はほぼ通販しかやっておらず、お客さんから注文のあった本を探し出して梱包して発送する。

なかなか本が見つからないことがある。

その時はパソコンにある仕入れ日のデーターにアクセスして日付を確認し、仕入れた順に並んでいる本の列から探し出すことになる。

ところが何故かさっぱり見つからないことがあって途方に暮れる。

見つからないならお客さんに詫びて発送はできないので、それは仕方ないとしてもなぜ見つからないのかの理由ははっきりさせておきたくなる。

日付を確認すると同じ日の同じ時間に2冊登録してしまっていることがある。

スマホから登録しているのだが、電車の中ではアクセスが途切れて完了できないケースがあってまた初めから登録するのだが、どうも先の完了できなかった分はタイムラグが生じているだけでやはり登録は完了してしまうようだ。これで本が1冊しかないのにweb上では2冊あることになってしまう。

お客さんの中には注文してから気が変わって(やっぱりこの本は要らんわ)とか(もっと安い本を見つけたからキャンセルしたい)とおもう方もいて、それでもすでに本を発送しているから先方に着いてしまう。

そんな時封筒を開封しないで郵便局員さんに「この本はうけとりません、拒否します」というようだ。するとお客さんは返送の料金を支払うことなくこちらに本は戻ってきてしまう。

またこちらの手違いで間違った本を送ってしまうこともある。

その時は注文を受けた正しい本をお送りするのだが、先方に間違って着いてしまった本を返送していただく必要がある。

正しい本と一緒にクリックポストの封筒を同封しておく。宛先はうちの店でそうするとお客さんは送料の負担などなく返本できる。
いずれにしてもミスのないようにしなければいけない。



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2020-10-07 21:57:00

今月29日に父の49日をやることにした。

もう20年くらい肺気腫に苦しんでいたが、寄る年波も加わって呼吸が満足にできなくなった最期の方は苦しそうだった。

正月に妹のマンションで家族が集まって宴会をしてその時病院に入っていた父を妹が車で迎えにいったんだが、長男のわたしを見て一言目に「義晴きたんか‼️」という。

義晴というのは父の兄の息子で、おそらく20年以上会ったことはない。

体形も年齢もだいぶわしとは違うのにどうしてしまったんだろう。ボケてしまったのかとあれこれ考えもしたけど、家族の誰もがその話題には触れずそのままになった。


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2020-10-06 12:45:00

明日まで天王寺さんで古本市がある。

以前の古本市では100円均一コーナーやいい本がある棚の前では、押し合いへし合いし、嫌がらせでわざと同じところにとどまるとか、肘でライバルを押し除ける、睨みつけるとかいろいろ面白い現象が見られた。

人がいっぱい来てるところで目を走らせても集中力も散漫だしいい本を見逃してしまう。

その上近くにいる人を出し抜こうという煩悩に責め立てられてますます気もそぞろとなる。

しかし今回の天王寺さんの古本市ではそういう光景があまりない。三密を避けようとする意志が働くのかある程度混んでくるとそそくさと立ち去っている人もいる。

店の側から見たら三密でおしあいへしあいしてもらう方が購買意欲が増進し、衝動買いに走る可能性が高まり好都合なんだがそうなってない。

ただ相変わらずこういうお客さんはかなりいる。

それは本棚の前でしきりに立ち読みをしているのだが、当然他にもその棚をチェックしたいと近づいてくる人がいますよね。

古本市のこと、棚と棚のスペースは大した取ってないから袖も触れ合わん程度には近づきます。
すると今まで集中して立ち読みしていたのに、何か大事件でも起こったかのようにあわただしく顔を上げて首を曲げて近づいてきた赤の他人の顔をしげしげ見つめるのです。

これですよね〜

大阪という巨大な田舎の特徴ですな。

(ひょっとして近所の田中さんが来たのかな❓)とか(俺の好きなジャンルの本に関心ありそうなこの人はどんな顔してんねやろ〜)とか思ってるわけです。

そんなもん近所でよく顔を突き合わして話をしてる田中さんなんか古本市には来ませんよね。好きなジャンルといっても顔を見たから何がわかるというのでもない。

こういうおかしな人は今回の天王寺さんにもいっぱいいます。

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2020-10-05 21:56:00

文春新書から一ノ瀬俊也の「東條英機」が出た。

これまでの竹槍で敵機を落とすみたいなファナチックな精神論者像を塗り変える試みだ。

東條は早くから航空機がこれからの戦争の主役になるとみていてその拡充に努めていたし、精神論にしてもそもそも物資が不足している中で戦争をするための苦肉の策として唱えていただけだった。

面白かったのは従来の開戦のきっかけとなったナチスドイツの快進撃への評価だ。これまで陸軍はまたなくモスクワも陥落してスターリンは白旗を挙げると楽観的な見込みで戦端を開いたことになっていた。

ところが実際そんなことはなく東條は「スターリン政権は崩壊せず民族戦にて長引くべし、英独戦も同様英国の回復により長引くと断」じているというのだ。

それなら対米戦争に勝ち目なんかないやないの。

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