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古本屋日誌
今日から谷町四丁目の大阪古書会館で古本市、早速行ってみた。
今回は先月で店を閉じた汎書店がたくさん出品していたのが目についたくらいで、それ以外はあんまり変わらない印象だ。
朝は30人くらいで、いつもよりは多い。
入り口には検温と同時に手指の消毒ができる機械が置いてあって、一人ずつおとなしく検査をやっているのが、バカバカしくて面白かった。
古書会館のすぐ南に、先月、居酒屋「酒米」ができた。魚料理を中心にうまい清酒を飲ませる店だ。
もともと夜しかやっていなかったのだが、ついこないだから、お昼のランチもやるようになった。
ランチも魚料理がメインで、午前10時前には店の前の歩道に「本日のランチ」の看板が出ていた。居酒屋の出すあては、だいたい間違いなくいい加減だ。
酒やビールで十分利益は出せるし、酔っ払いは味音痴もたくさんいるから、適当なものでも文句は言わないからだ。
しかしこの「酒米」に限ってはそれはあてはまらない。
「呑んで、食べれる店」なのだ。
さて、肝心の古本市。
京都のシルヴァン書房は雑本、唯書房は大阪の本、新書、新左翼本。真木は大量の小学館文庫と新書。横丁は雑本と和本。杉本は岩波、ちくま、講談社学術文庫。矢野は文学書。ディックはSF。汎は雑本の新書、文庫。寸心堂は海外の文学書と文庫。厚生は雑本と文庫。象々は雑本と文庫。
いつも思うのだが、この古本市の値段は普通だ。
大阪の大規模な古本市、天王寺さんや天神さんに比べると割高であることは間違いない。
大きな古本市に参加している古本屋は、なんらかの手段で大型の顧客を、売るにせよ買い付けるにせよ確保できているからだ。日常的に十分な利益を出せているから、古本屋では文字通りのバーゲンセールができるのだろう。
寺尾文孝の『闇の盾』は権力者などから持ち込まれるトラブルをあらゆる手段を駆使して解決する話だ。
その中に山口組5代目渡辺の話がある。
「神戸市内のゴルフ場でプレーしていた渡辺組長らの一行は、プレー中の前の組にポールを打ち込んでしまった。
渡辺組長の前を回っていた面々は、大阪で会社を経営する社長たちの一行だった。
相手が誰かも知らず、「失礼なやつだ」と渡辺組長らを待ち構えていたという。
「おい、失礼だろう」そう言ったとたん、組長の警備のため周囲に潜んでいた組員が社長たちに殴りかかり、重傷を負わせてしまったのである。」
ということで呆れるしかない話だよなあ。
これまで「ヤーさんはな、下っ端はややこしいけど、えらいさんは物腰も柔らかで、揉めたりせーへんねんで」てな話を爺さん、婆さんから何度か聞いたことがあったが、当然それは与太話だということだ。
兵庫県警は捜査を進めて、渡辺に逮捕状を出す。
山口組は辣腕の弁護士を求めて著者に頼み込み、著者は
「『吉嶋さん(知り合いの弁護士)それは受けてあげなよ。日本の法廷は殺人事件でも弁護士がいなければ裁判を開けないわかだし、今回の件、私は報道でしか知らないけど、警察もちょっとやりすぎな気もするよね。あんたがいいと思ったら、やってあげたら』
私のひと言だけが決め手でもないだろうが、吉嶋さんも踏ん切りがついて、渡辺組長の依頼を受けることに決めた。(中略)
暴力団の現役組長の逮捕ではほとんどの場合が実刑となり、刑期も短縮されず満期を勤めるが、驚いたことにこのときは、吉嶋弁護士の奮闘によって翌日、保釈されたのである。」
大藪春彦は角川文庫や新書本でバイオレンス小説を量産していた。
細かい銃器の蘊蓄は、俺は何の興味もない。ただそのワンパターンでお決まりのストーリーは魅力的だった。
強欲な金持ちは常に豪邸で女と情事を楽しみ、そこへテロリストが現れ、見苦しい命乞いをする金持ちを無慈悲に射殺する話だ。
バカバカしいよなあ、そんなバカで無警戒な金もなんかいるのかよ❗️とかツッコミながら読んでしまう。
金持ちが権力にものを言わせてあれこれ不正をすることもいろんなドラマや小説で描かれてきた。
バカ息子やバカ娘が交通違反したら、息のかかった署長に電話して揉み消してもらう。
銀座に220坪もあるまとまった一等地の出物があるが、手元に金がない。配下の頭取に頼んで無担保で25億融資して、土地を手に入れる。
しかし本当なんかな❓との疑念を挟まずにはいられない。
いくらなんでもバレたらただでは済まないし、身内から裏切るやつなんかいくらでも出そうだから、危ないにも程があると思うのだ。
しかし、それが、実際に行われていることを細かく記したノンフィクションが去年出た。
「日本リクスコントロール社長」を称する寺尾文孝の講談社刊、『闇の盾』だ。
なんでも政治家から芸人、経営者、宗教団体とあらゆる有象無象から持ち込まれる相談事を解決する会社の代表だという。
現金(げんぎん)で支払う必要がかなり減り、ICカードや電子マネーでサクサク決済できるのは爽快だ。
以前は484円などという支払いで千円出そうものなら1円玉やら5円玉やらがジャラジャラ掌に乗せられ、落としそうになるわ、財布に入れたらパンパンになるわで不快だった。
コンビニのレジでは若い女の店員が、俺みたいな訳の分からない中年男の掌に硬貨を置かないといけないのは苦行ではないか❓
そんな目で店員を見たら、確かに目を背けているような気がする。
やっぱりな、それはわかる、よーくわかる。
でも客商売なんだからもっと真面目にやってもらいたいものだとか、全く意味のない妄想をへめぐらしていたものだ。
今やスマホの画面を差し出すだけだからアホな妄想の出番もなくなった。
ただ、バーコード読み取りが下手くそな店員がいるのはイライラさせられる。
読み取り機をスマホのバーコードにかざすのだが、あまりにも速く引き上げてしまうために、読み取れない。
「あんた、速すぎるで、なんぼなんでももうちょっとかざしとかなんだら、あかんやろ」
ゆうて、女は再度やるんだが、また速すぎて読み取れない。
「お客さんのスマホ、あかんのちゃいますか❓」とかゆうてくるから笑わせるぜ。
お客さんから西村賢太が「本の雑誌」にずっと連載していた『一私小説書きの日乗』のセットを買い付けた。(単行本7冊と未収録分が載っている「本の雑誌」全部)
西村は2月の5日に亡くなっているのだが、3月号にはその直前の1月7日までのが載っている。
2021年の12月19日に気になる記事がある。
西村が初めて「スポンサー付きの小説」を引き受けたが、あれこれもめる話だ。
「作中で煙草を吸いまくる主人公の年齢が何やら問題になっているらしい。
すでに原稿料は振り込まれ、全額費消してしまっているので、伏せ字という伝統的手法で問題を解消し、再提出。
今回初めてスポンサー付きの小説を引き受けたが、厄介也。」
スポンサー付き小説なんか、いろいろ束縛の多いものだし、相手のリクエストに答えなければならず、よく引き受けたものだ。それだけ金に困っていたのだろうか❓
原稿料にしても帯封で手渡されたものを、開封して使ってしまったというなら、美学として返しにくいかもしれない。
でも振り込みなんだから、金子を返そうと思ったらいとも簡単だろう。それなのに「全額費消してしまっている」という意味がよくわからない。
西村賢太は芥川賞以降、夥しい収入があったはず。それなのに、スポンサー付き小説だの、「全額費消」だの、実に面妖だ。
また大晦日は乗り鉄よろしく、在来線を乗り継いで大阪まで来ている。
そして
「ビジネスホテルをおさえたあと、繁華街に出て早々に飲食。
雄心も起きぬまま、狭き室にて静かなる年越し。」
とあるのも不思議だ。
天下の西村賢太が大晦日、旅先の大阪で、ビジホの「狭き室」て、よくわからない。
大晦日だし、コロナ騒ぎだし、いくらでもちゃんとしたホテルが取れると思うのだがな。