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古本屋日誌
山本周五郎は人情ものも得意にしていて人気のある作家だが、私は「青べか物語」や「季節のない街」の方が作家の地であると思う。
折しも最新号の「ゴルゴ13 vol210」で人情ものの「三年目」が忠実にマンガ化されていて改めてそう思った。
江戸の腕のいい大工の友吉は博打でしくじり、許婚のお菊を弟弟子の角太郎に預けて3年を上方で過ごした。
さて江戸に帰り着いてみるとかつての長屋に2人はおらず、噂では2人は夫婦になって暮らしているという。
嫉妬に狂った友吉は探し当てるが、折あしく雨が降り続きかわが氾濫しそうになっている。
委細かまわず、飛び込んだ友吉はお菊に何も言わせず監禁してしまう。
そこへ角太郎が帰ってきて実はお菊は別の男から迫られていてその魔手から逃れるために夫婦になったと偽って暮らしているだけで友吉を裏切るようなことは何もしていないことがわかる。
風雨が強まり堤防も切れて濁流が家の中に侵入してくる。手足を縛られ自由が効かないお菊はもう、水の底だ。うろたえた友吉は必死で潜りお菊を助け出してめでたしめでたしてな筋ですな。
普通に考えて無理があるストーリーですね。友情は愛情に勝つということなんでしょうけど、子どもじゃあるまいに、面妖な筋だてだ。
「季節のない街」ではスラム街に棲む名もない大衆の赤裸々な姿をあれほどリアルに描いた周五郎がどうしたのかと思う。
もちろん計算して書き分けてるんですよね。それこそが天才たる所以ですな。
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連続テレビ小説の「おちょやん」に合わせて宝島社から「浪花千栄子の人生劇場」が出た。
大判のムック本で宝島社お得意の付録、「祇園囃子」のDVDが付いている。
昭和28年の大映映画で溝口健二が監督だ。
木暮実千代扮する祇園の芸妓の美代春は弟子の芸妓の美代恵(若尾文子)の不始末を実力者の君(これが浪花千栄子)から責め立てられる。
美代恵は旦那になろうとする東京の金持ちに迫られて、苦し紛れに男の舌に噛み付いて大怪我を負わせてしまったのだ。
君は美代恵はともかく、美代春に旦那を取るように要求するのだが、美代春はどうしてもうんと言わない。
君は裏から手を回して美代春や美代恵のお座敷がかからないようにする。
ここで自分が元で姉さんを窮地に追い込んだことを悩んで美代恵が祇園の路地を着物姿で行き来するシーンがある。おりしも祇園祭が近いこととて画面いっぱいにコンチキチンの祇園囃子が流れる。
楽しい楽しい祇園祭のおはやし、華やかな芸妓衣装、祇園の路地、何もない時ならこれほど心を癒してくれるものはないのに、窮地に立たされた美代恵には神経を逆撫でする暴力的なメロディでしかない。楽しい日常が横溢する中で自分一人が追い詰められている。
追い討ちをかけるように傍輩の芸妓たちが美代恵を訪れて口々に「がんばってね‼️」などと励ましてくる。これがまた神経に障るのだ。
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柳美里が全米読者賞を獲り、そのためか一部の本が値上がりしている。
新潮文庫の「石に泳ぐ魚」はモデル問題でもめたから前から少し高かった、といっても700円くらいだ。
新潮社からだいぶ前に出た「柳美里不幸全記録」が高騰している。黒いバックに柳美里の細長く、青白い顔が全面に登場する面白いカバーの本で、非常に分厚い。
シングルマザーで子育てに追われるてんてこまいの日常、15下の男との出会いなどが詳細に語られる。
つまりは詳細な私小説なんだが確かに面白い。
ところが従来の古書価はせいぜい600円くらいで、分厚くて簡易な発送方法が使えず、レターパック520などを使用せざるをえないから古本屋泣かせの本だった。
ところがこのところ5倍くらいになっていて、帯付きの本を探しているお客さんも多い。
私小説ではないが彼女が1995年ごろから「週刊朝日」に連載していたエッセイも多くは幼少期の自身の家族を描いたもので面白い。
なんでも父親と母親は金が入ると子供を連れて美味しいものを食べに行ったり、欲しいものをどんどんこうたりして数日で全額使い切ってしまう。その後の4週間あまりは食べるものにも事欠く有様なんだが、両親ともけろりとしていたという。
面妖な家庭だよなあ。
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ちくま文庫から三島由紀夫の「恋の都」が出ている。
敗戦直後の東京の楽団の話でオーナーがアメリカ人で主人公でプロモーターのまゆみは原爆を落としたヤンキー憎さに言い寄ってくるアメリカの若者を袖にするのを生きがいにしている。
なかなか愉快なお話だがプロダクションの社長である大槻という老人が出てくる。
大阪の人で妻が楽団のピアニストと浮気しているのを突き止めて、コンサート当日ホテルにそのピアニストを呼び出して詰問する。
そこへ困り果てたまゆみがやってきて一悶着起きる。
大槻は流暢な大阪弁でしごく真っ当な話をするのだが、浮気相手のギタリストをホテルの一室に鍵をかけて閉じ込めたところは「わて、早速ドーアに鍵こうて、今日のコンサートは、しらちのつくまであきらめてもらいまっさ」となっている。
「ドア」を「ドーア」、「鍵かけて」を「鍵こうて」、「らちがあく」を「しらちのつく」という大阪弁は耳にしたこともないもので蒙を啓かれた。
「鍵をかって」というのは文章では読んだことがあるが、大阪では「かく」をウ音便にして発音していることがわかる。「買う」が「こうて」とおんなじですね。
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京阪電車は来年の3月から全ての回数券を廃止する。ピタパなどのIC乗車券を使えば1割引きにはなるのだが、これまでの昼間割引や土日割引が全廃されてしまう。実質大幅な値上げだ。
確かに萱島までは複々線で極めて高速であり、阪急や近鉄など比べものにならないほどの設備だとは思うものの、他社線との乗り継ぎは極めて不便だ。
神戸方面なんか、京橋ですぐ下にJRが走っているにもかかわらず、いったん一階に下ろされてまた上がるなどという不合理さだ。梅田で環状線を降りてまた乗り換えなければならず利便性の欠如は甚だしい。
そこで自衛策として株主優待として与えられる定期券を買いたいなと思って、先日梅田に出向いた折第四ビルから第三ビルに櫛比する金券ショップで価格を聞いてみた。
「うちはバスも付いてるやつなんですが、10万5千円です」とか
「今はないけど系列店にあるから取り寄せられます、8万です」
という話なのでもう聞くのはやめた。
阪急電車の株主優待定期は12月1日から半年間ということで既に使用期間開始となっているが、ヤフオクで相場を見てみたら5万円くらいだ。
京阪電車はやたらに高いけどこれは使用期間開始前だからなのか、それとも人気が高いからなのかよくわからない。
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