Welcome
古本屋日誌
2020-12-16 15:31:00
山本周五郎は人情ものも得意にしていて人気のある作家だが、私は「青べか物語」や「季節のない街」の方が作家の地であると思う。
折しも最新号の「ゴルゴ13 vol210」で人情ものの「三年目」が忠実にマンガ化されていて改めてそう思った。
江戸の腕のいい大工の友吉は博打でしくじり、許婚のお菊を弟弟子の角太郎に預けて3年を上方で過ごした。
さて江戸に帰り着いてみるとかつての長屋に2人はおらず、噂では2人は夫婦になって暮らしているという。
嫉妬に狂った友吉は探し当てるが、折あしく雨が降り続きかわが氾濫しそうになっている。
委細かまわず、飛び込んだ友吉はお菊に何も言わせず監禁してしまう。
そこへ角太郎が帰ってきて実はお菊は別の男から迫られていてその魔手から逃れるために夫婦になったと偽って暮らしているだけで友吉を裏切るようなことは何もしていないことがわかる。
風雨が強まり堤防も切れて濁流が家の中に侵入してくる。手足を縛られ自由が効かないお菊はもう、水の底だ。うろたえた友吉は必死で潜りお菊を助け出してめでたしめでたしてな筋ですな。
普通に考えて無理があるストーリーですね。友情は愛情に勝つということなんでしょうけど、子どもじゃあるまいに、面妖な筋だてだ。
「季節のない街」ではスラム街に棲む名もない大衆の赤裸々な姿をあれほどリアルに描いた周五郎がどうしたのかと思う。
もちろん計算して書き分けてるんですよね。それこそが天才たる所以ですな。
iPhoneから送信