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古本屋日誌

2020-07-06 16:49:00

昭和23年に出た吉田三七雄の「大阪こぼれ話」は著者が朝日新聞の記者ということもあって戦後間もなくの大阪の世相を写しとって愉快な作品だ。
芦屋令嬢の話があってもともと船場の商家の娘なんだが、金を貯めて芦屋に本宅を構えてからは商売人の娘だと思われないように振る舞うこと、大阪弁は謹んで「いとはん」やら「どうさん」やらは使わないこと、交際、お付き合いのためには金を惜しまない、出入りの業者の品物をねぎらないてなスタイルで過ごしてきた。

ところが戦争で船場の店が丸焼けとなって金が入ってこなくなると考えを改めてまた商売人になろうとする。

近所には「新しい家をこうた」と触れ回って今の居宅を売り、その金で心斎橋筋に「最新流行、最も高尚なるファッションの店」という触れ込みでブティックをオープンした。この後の吉田三七雄のコメントが面白い。


「ファッションの店であり、美しい上品なマダムが居る店、ただそれだけで飛びついてくるのが大阪である」


もちろんこの店も大繁盛したことは改めて述べるまでもない。

阪神間の住民が伝統的に東京志向で鼻持ちならない連中であることは以前から度々指摘されていたのだが、吉田は何か含むところがあるのか、殊更に強調して書き記しているような感じもある。


大阪の人が単に新しいもの好きでかつ熱しやすく冷めやすいことも従来からよく言われてきたことだ。

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2020-07-05 20:06:00

川崎彰彦は編集工房ノアから数冊の小説や詩集を出している。
いずれも私小説であり、自分の流儀を譲らないふてぶてしさがよい。
「夜がらすの記」所載の短編は京阪電車の牧野駅近くの学生アパートに暮らす中年男が主人公で、嫁にはすでに愛想を尽かされて逃げられ、カルチャーセンターの講師をしたり、あまり依頼がこない原稿に頼って生活する話だ。
冬には1ヶ月も風呂に入らず、セーターを着たまま寝て、本人も気にするほどの悪臭を漂わせ、食生活はファンから送ってもらったじゃがいもにパンの耳という暮らしだ。それでいて塾で教えて金を稼ぐとか、ガードマンになるとかをする気はない。いよいよ押し迫って、つてを頼って測量の仕事を回してもらおうとするぐらいだ。
これが昭和や大正時代なら極貧生活で、公園で凍死した藤澤清造みたいになってしまうだろう。
ただ高度成長を経て豊かになった我が国ではこんな自堕落な生活でもそれなりに物が部屋に溢れるほどの暮らしぶりになってしまう。


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2020-07-04 11:59:00

このところ東京のコロナ感染者数が1日100人を超えていて困ったことだという報道がある。

しかし以前に比べてPCR検査の実施数が極めて高くなっていて、要するに何の症状もないのにとりあえず全部検査しているのだ。

キャバクラとかスナックとかそういう店が従業員全員を検査させているようだが、そりゃあ感染者数は上がるよなあ。だってそもそも集団免疫がだいぶできているわけなんだから。

それにしてもキャバクラ、スナックの経営者はよく検査に同意するよなあ。健康で何の症状もなかったら、何の問題もないだろうになあ。

「うちの店は安全だとお墨付きが欲しい」とか「他の店も検査受けてるからうちだけしないのもなあ、口コミが怖い」とかなんかね。

昨日一時退院した嫁と「神戸どうぶつ王国」に出向いた。

ハシビロコウが二羽いることが売りではあるが、様々な動物に餌やりができることも楽しみの一つだ。

奈良公園はあの鹿煎餅があって200円するが、帯封を解くいとまも与えず、大勢のシカが近寄ってきてつついたり、噛み付いたり大騒ぎで面白いし、煎餅をシカの頭の上にかざすと例のお辞儀をしてくれる。

また東大寺大仏殿の回廊外にある大きな池ではたくさんのフナに、ふを一本100円でやることもできる。同じように平安神宮の池では、差し渡した橋の欄干から餌をふなや亀に与えることもできる。しかしともに飼われているのは大型のフナが中心でかなり量のある棒状のふでもものの1分もたたないうちになくなってしまう。あっけないものだ。

さてこの「神戸どうぶつ王国」なんだが、蓮池が二面あって100円で丸子状の餌をやることができるのだが、その数は20粒程度で、あっというまになくなってしまいそうだ。
コイにしてもフナにしても大型の魚だからなんでも丸呑みにしてしまう。

ところがここで飼われている魚はメダカ程度の🐟に限られていて、水面に丸子がぷかぷか漂うと、波立って餌を四方八方からつつきだす。

口が小さく、餌も簡単に柔らかくはならない、水にも溶けないタイプのものなので、いつまでも漂い、何十尾もの小さか魚が果てしもなくつつくのが楽しめる。下手をしたら一粒がそれぞれの魚の胃袋に入り切るまで10分以上もかかり、じっと眺めていると楽しい。

ここには300円かかるのだが、人間の肌の角質をつついて食べてくれる小型の魚も池にたくさん飼われていて、両足を池につけることができる。途端にそれこそこそばくてたまらなくなるくらいお掃除に励んでくれる。


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2020-07-03 18:28:00

幻戯書房から坪内祐三の「みんなみんな逝ってしまった、けれど文学は死なない」が出た。

その中に東京の高原書店の話がある。

町田市に4階建ての大きなビルいっぱいに古本を満載していた。地代の安い徳島に倉庫を構えて基本どんな本でも買い取って客のニーズに応えるスタイルだった。ここの従業員が独立して「ささま書店」やら「音羽館」のようなやはりたくさんの本を安く売ろうという古本屋もできた。
確かに今はネットで流通している程度の本なら見つからないということはないわけで、プレミアをつけて価格を維持するより、安く売って本を回していこうというのは卓見だろう。ただ高原もささまも閉店してしまった。

鴨川を挟む丸太町通りにはかつてたくさんの古本屋があった。
東山丸太町通り西入ルに「不識洞書店」ここは理系の本の専門店で、細長い店内に左右の壁とセンターに本がきれいに並んでいて、毎日店の前の丸太町通に面した歩道を店主が履き清め打水していた。
その横、熊野寮のまあ前に「一信堂」。ここは間口が2間くらいある正方形の構造で左右の壁とセンターに本が並んでいるわけだが、セメントを敷き詰めたやけに通路が広く、置いてある本もきれいに整理整頓してあって、店主は子どものいるおばさんで、小説の文庫本が主体だった。店主が婆さんでないのは何か事情があってなんだろうが、雰囲気は完全に未亡人のしもたや風だった。
天理教の巨大な建築の東側に「マキムラ書店」があった。ここは昔風の古本屋で店先の歩道にダンボール箱を並べてぎっしりカバーが色あせて、スレも多い文庫本が100円で売られているほか、店内はそれこそ床から2メートルはありそうな天井付近まで本のタワーが並んでいて、通路も狭く身体を横にしないとすり抜けられない。

マキムラはやがて新しいビルを同じところに建てた。これでジャングルのような店内が一新されると思いきや、今は新築前と全く同じカオス。店主は旧来の古本屋スタイルによほど執着があるのだろう。本の密林の中でないと落ち着かないに違いない。



鴨川を渡ってすぐの浜にあったのが「丸三書店」。ここは高齢の爺さんがやっていて文学書が並んでいる極めて狭い古本屋だった。さらに少し西には「博文堂」があって2間くらいの間口で、戦記文学の本がたくさん並んでいた。そのさらに西には「群書堂」があってここはもう完全にしもたやで、広い通路にはたいてい自転車が詰め込んであり、本棚もスカスカだった。

これらの諸店舗はいつもまにか一掃されて現在も古本屋を営んでいるのはマキムラだけだ。

不思議といえば古本屋は全て北側に並んでいることだった。南側にはロシア語文献、辞書などを出版しているナウカがあったくらいで本屋は皆無だったな。玉子を一個売りする昔ながらの乾物屋、一膳飯屋、熊野寮、共産党の選挙事務所、スキューバーダイビングの免許が取れる踏水会というスイミングスクールが雑然と並んでいた。

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2020-07-02 16:51:00

うちの近所に萱島生野病院があり、嫁が入院しているのだが、主治医の説明も取り立てて矛盾もなく好感が持てたなあ。

初診のときはいろんな病気の可能性があるから、問診、触診、血液検査、CT、尿検査などデータも集めて一つずつ可能性をつぶしていくわけだ。

私が2011年に結核で入院した寝屋川の大阪病院はその点デタラメだったなあ。紹介状を持って診察を受けてレントゲン、痰の検査で医者は「これは結核やな、あんな今入院せなあかんで、いろいろ仕事もあるやろけど、無理したら取り返しのつかんことになるよってな、ちゃんと決めなあかんで」ということでてっきり結核と確定したと思っていた。ただ「菌の培養をして数を増やす必要がある、診断にはしばらくかかる」との話で「今日から入院する?家に戻って要るもんとってきたり、連絡したらするか?」

これは実は確定してないわけですけど、おそらく結核だろうから、入院した方が良い、でも患者は「仕事がでっぱってますねん」とか「どないしても外されへん商談がおますねん」「まだ診断ついてませんねやろ?」てな感じで入院を避けようと食い下がってくる人も数多くいるので医者としては脅かしてるわけです。

それだけ自信があるなら結構なことなのに、入院後の回診では「結核菌となエイズやライ病の菌はよう似てるねん、せやからなその可能性も考えとかなあかんねん、夜の街とかその手の店に行って行為に及んだことはこの5年くらいの間にあったかな?」と聞いてこられたので、不安になりましたよ。

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