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古本屋日誌

2020-07-03 18:28:00

幻戯書房から坪内祐三の「みんなみんな逝ってしまった、けれど文学は死なない」が出た。

その中に東京の高原書店の話がある。

町田市に4階建ての大きなビルいっぱいに古本を満載していた。地代の安い徳島に倉庫を構えて基本どんな本でも買い取って客のニーズに応えるスタイルだった。ここの従業員が独立して「ささま書店」やら「音羽館」のようなやはりたくさんの本を安く売ろうという古本屋もできた。
確かに今はネットで流通している程度の本なら見つからないということはないわけで、プレミアをつけて価格を維持するより、安く売って本を回していこうというのは卓見だろう。ただ高原もささまも閉店してしまった。

鴨川を挟む丸太町通りにはかつてたくさんの古本屋があった。
東山丸太町通り西入ルに「不識洞書店」ここは理系の本の専門店で、細長い店内に左右の壁とセンターに本がきれいに並んでいて、毎日店の前の丸太町通に面した歩道を店主が履き清め打水していた。
その横、熊野寮のまあ前に「一信堂」。ここは間口が2間くらいある正方形の構造で左右の壁とセンターに本が並んでいるわけだが、セメントを敷き詰めたやけに通路が広く、置いてある本もきれいに整理整頓してあって、店主は子どものいるおばさんで、小説の文庫本が主体だった。店主が婆さんでないのは何か事情があってなんだろうが、雰囲気は完全に未亡人のしもたや風だった。
天理教の巨大な建築の東側に「マキムラ書店」があった。ここは昔風の古本屋で店先の歩道にダンボール箱を並べてぎっしりカバーが色あせて、スレも多い文庫本が100円で売られているほか、店内はそれこそ床から2メートルはありそうな天井付近まで本のタワーが並んでいて、通路も狭く身体を横にしないとすり抜けられない。

マキムラはやがて新しいビルを同じところに建てた。これでジャングルのような店内が一新されると思いきや、今は新築前と全く同じカオス。店主は旧来の古本屋スタイルによほど執着があるのだろう。本の密林の中でないと落ち着かないに違いない。



鴨川を渡ってすぐの浜にあったのが「丸三書店」。ここは高齢の爺さんがやっていて文学書が並んでいる極めて狭い古本屋だった。さらに少し西には「博文堂」があって2間くらいの間口で、戦記文学の本がたくさん並んでいた。そのさらに西には「群書堂」があってここはもう完全にしもたやで、広い通路にはたいてい自転車が詰め込んであり、本棚もスカスカだった。

これらの諸店舗はいつもまにか一掃されて現在も古本屋を営んでいるのはマキムラだけだ。

不思議といえば古本屋は全て北側に並んでいることだった。南側にはロシア語文献、辞書などを出版しているナウカがあったくらいで本屋は皆無だったな。玉子を一個売りする昔ながらの乾物屋、一膳飯屋、熊野寮、共産党の選挙事務所、スキューバーダイビングの免許が取れる踏水会というスイミングスクールが雑然と並んでいた。

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