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古本屋日誌

2025-05-18 12:53:00

今日は9時40分に萱島駅に出向き、京橋、大阪と乗り継いで新快速で姫路駅に11時20分に到着、神姫バスで姫路城北側にある文学館に行った。

 

6月22日まで開催の、没後10年車谷長吉展を見るためだ。車谷は私小説の達人で、『赤目四十八瀧心中未遂』で直木賞を受けた。

 

俺は『忌中』という恋愛小説集が好きで、文庫本のほか、初版の単行本も持っている。

 

今年の4月に没後10年にあたり新書館から『車谷長吉全集 第4巻』も刊行され、再び車谷にスポットが当たりつつある。数日前の朝日新聞にも全集の広告が掲載してあった。

 

 

実は全集はこの4巻で終わりなんだが、版元では第2巻が品切れになっていて、手を尽くしてもなかなか入手できなくなっている。姫路文学館には置いてあるのではないかとの期待もあるのだ。

 

 

さて展示の方は北館の2階、3階を使っての大規模なもので、中学生時代の通知簿(中3の時のは体育以外はオール5)、東京に住んでいた片思いの女に宛てた80通にも及ぶ絵手紙(実際は100通くらいあったという、もらった女の方もよくとっておいたものだよね)、日常の出来事を細かくメモした20冊にも及ぶ手帳、小説の筋を細かく書き留めた創作ノート、編集者に宛てたたくさんの手紙などが並べてあった。

 

 

生原稿が置いてあるのはもちろんだが、プライベートや作家誕生の秘密、心のひだにわけいるような品品が惜しげもなく展開してあって圧倒された。

 

 

メモ類の中には、尾羽打ち枯らして、東京から自宅に戻っていたおりのものもあって、姫路駅近くの居酒屋によく出入りしていた。

 

 

そこで注文した料理もいちいち細かく記されているほか、酒量も書いてあるのだ。

 

 

酒四合とか三合とか書いてあるので、かなり行ける口だったことがわかるよなあ。俺なんか一合も呑めないのに。

 

 

新潮社から『塩壺の匙』初版の印税振込を知らせる手紙も展示してあったが、右側を丁寧に鋏か何かで切り取って開封してあるし、中身の通知書も折り目一つなくきれいな状態だ。彼の細やかで繊細な一面を窺い知ることができる。中学生時代の通知簿もきれいな、折り目もないコンディションで展示してある。

 

そんな大昔のものを後生大事に取っておくというのは、理解できないけれど、田舎の旧家はだだっ広い造りなので、納屋なんかに放り込んでおくだけなのかもしれない。

 

 

2階展示スペースからは、国宝姫路城の西の丸を望むこともできるほか、一階には姫路の歴史、ゆかりの文人の展示がある。

 

 

またスロープを歩いて、南館にはナポリタンが売りの喫茶店、柳田國男、司馬遼太郎らの著作、生原稿の展示エリアがある。

 

 

肝心のショップだが、展覧会の図録(1000円)はもちろん、予想通り『車谷長吉全集』全巻が販売中であったし、第一創作集『塩壺の匙』初版帯もあった。

 

 

注目すべきは、車谷直筆の色紙がたくさん並んでいたことで、俳句風の警句が、例の四角い几帳面な字体で書いてある。1枚25000円。

 

他には2008年に刊行されたシリアルナンバー、サイン入りの『隠国』という歴史小説が積んであって9000円くらいだった。


2025-05-17 13:40:00

中央公論社から出た『完全版 沖縄戦』を読んでいる。

 

 

前にも書いた通り、帝国陸海軍の読みでは、本島の飛行場を占領されてしまうと、そこから戦闘機を飛び立たせて、機動部隊(空母を含む艦隊)の防衛が可能になり、特攻の効果が薄れてしまう。そこで何度となく、防御陣地、つまり地下壕から出て夜間に総攻撃をかけて飛行場を奪い返そうと考えた。

 

 

しかし参謀の中には、それはなんの意味もないばかりか、貴重な時間、弾薬や人員を無駄に無くしてしまうだけの愚行だとの意見を持つものもいて、作戦の実行は躊躇われた。

 

 

例の戦艦大和を沖縄に突っ込ませようとした捷1号作戦では、陸海軍が特攻攻撃を大規模に行い、相当な損害を機動部隊に与えたことは確実だから、米軍に地上部隊が大規模攻撃をかけても、艦載機からの攻撃は行い得ないのではないか、などという情勢分析もなされた。

 

 

現実はその翌日にも艦載機からの攻撃や艦砲射撃を受けたので、作戦は中止されている。

 

 

なかなか興味深い話だが、この本は誤植が多い。

 

 

「米軍の猛者を受けた」(猛攻だろう)

 

「部隊は多くの損害を生じながらも検討して陣地を保持した」(健闘だろう)

 

 

「米軍の攻撃は次第に低調となり、沖縄周辺の艦船も著しく減少し、飛行機の来襲も少なくなかった」(少なかった、だろう)

 

校正がめんどくさかったのだろうか。


2025-05-16 16:06:00

今日から谷町四丁目の古書会館で古本市。早速朝から行ってみた。

 

 

希縁庵という古本屋が初参加していたほか、横丁、寸心堂、矢野、厚生、唯、ディック、真木、汎、シルヴァン、アジア号、ソニック、杉本などが出ている。

 

 

横丁は大半の本を半額で販売していた。『大阪方言事典』『未開社会の性生活』『秘境西域八年の潜行』芙蓉書房版の上、下、『福助足袋の六十年』なんかも置いてあった。

 

矢野書房は上村一夫の様々な作品や花輪和一作品集、天牛書店の創立者、天牛新一郎の著者2冊(サイン本)に扇子を付けたセットを売っていた(5000円)。

 

 

暫く混み合った会館内で本を見てから、てくてく歩いて中央大通りに面したアパホテル一階のレストラン「銀のゆば」(11時半から)でランチ(950円)。

 

 

今日は、ビフカツか、ブリカマかどちらかを選ぶメニューで、他に2種類のおとふ、サラダ、ヨーグルト、オレンジ、ご飯、わかめのおつい、コーヒー、ミルク、オレンジジュース、野菜ジュースなんかがバイキングとなっている。

 

以前は、店の名前の生湯葉もあったし、もっと食べ放題メニューが多かったが、諸物価高騰の影響でこうなったのだろう。

 

 

ゆっくり過ごしてから、再び1時過ぎに古書会館に出向いてみたら、朝の雑踏は過ぎ去ってゆっくり本を見れる。

 

 

初参加の希縁庵はいろんな『毎日グラフ』を出していて、その中には70年の大阪万博の特集号もあって(400円)大判、フルカラーで50年前のイベントを眼前で楽しめる。

 

横丁のブースには出口王仁三郎の『霊界物語』も置いてあって500円だが、半額の250円で買える。

 

アジア号は地図や鳥瞰図、いろんなチラシなんかも出していて中にはキャバレーのチラシなんかもあった。(3000円)。

 

 

矢野書房は『別冊太陽』も並べていて、その中に千葉のホキ美術館の特集号もあって、島村信之の写実絵画なんかを楽しめる。

 

 

汎書店には『宮本百合子選集』全12巻揃が並んでいて、紐で結えてあるのだが、1500円だ。安いよね。

 

 

宮本は共産党の委員長だった宮本顕治の嫁だったのだが、文学者として極めて立派で、インテリの女が地縁血縁のしがらみや、周りの無理解にもめげず、日々災難に見舞われながらなんとかやりくりしていく日常を淡々と書いていて感動的だ。

 

 

それほどの才能がありながら、しかし世間ではなぜか評価されていない。つまり世間の評価など偏見に満ちていて、ふし穴だということだ。

 


2025-05-15 13:18:00

中央公論から齋藤達史の『完全版 沖縄戦』が出た。

 

齋藤は、防衛研究所に勤める歴史家だ。この戦いについては大田昌秀による概説書もあるが、個々の戦闘について網羅されておらず全貌は明らかになっていなかった。

 

そういった意味で江湖の渇きを癒す一冊だ。

 

 

この本によれば、海軍はレイテなどで艦隊の大部分を失い、航空兵力を残すだけになっていたので、沖縄での決戦を考えていたが、陸軍は沖縄は本土決戦を控えての準備的な戦闘と捉えていて、決戦とは考えていなかったという。

 

 

また米軍の上陸に際して、飛行場を占領されたら、そこから機動部隊を守る戦闘機を離発着できるようになり、陸海軍の特攻攻撃に支障をきたすと考えられたため、水際で叩いて、釘付けにするプランであった。

 

 

しかし、実際には圧倒的な物量と戦闘力を前にして攻撃ができず、ほぼ無血上陸を許してしまった。

 

 

そのためなんとしても占領された本島の飛行場を使用不可能にしたいと考えて、薄暮に合わせて九州、台湾、石垣島の航空基地から爆撃機を発進させて、米軍の飛行場を攻撃し、さらに翌払暁、大規模攻撃をかける作戦に出たが、思うような戦果は上げられなかった。

 

 

陸海軍とも、特攻攻撃によって、敵機動部隊に多大な損害を与えたと確信しており(つまり、プロパガンダではないということだ)現状なら空挺部隊によって本島逆上陸が可能と考えていた。

 

 

などが明らかになった。なるほど興味深い話だな。

 

 

『小林一三日記』にも連日ラジオを通じて、敵機動部隊の大損害が報じられているのに、一向に空襲は止まない。

 

 

「これはアメリカ兵はやわで根性などないと思っていたが、これほどやられても、なおめげずに向かってくるとは、凄まじいスピリッツだと言わざるを得ない」と逆に戦意を喪失したような書き方をしていたのを思い出したな。

 


2025-05-14 20:19:00

東京の、揚羽堂という古本屋の店主が2005年に書いていたブログ日記が本になっている。

 

『古本屋残酷物語』というタイトルなんだが、一読してだいぶ大袈裟なタイトルだと思ったよ。

 

のんびり本を扱う商売ができると思って店舗を構えたものの、客がなかなかついてくれず、結局店は閉めざるをえなくなり、別の場所に事務所を構えて、通販や催事中心の本屋になったというお話だ。

 

 

東京は何商売であれ、恵まれた地域であることは間違いなく、古本屋などはとりわけそうだと思う。

 

大学もたくさんあるし、出版社やマスコミは圧倒的なシェアだから仕事で本を使う人がたくさんいるからだ。

 

 

それにもかかわらず、店舗を構えての経営は2005年の段階で行き詰まっており、一方ヤフオクや日本の古本屋サイトを通じての通販は好調だったことは示唆的だ。

 

つまり甘やかされて、大名商売が出来る東京ですら、古本屋業は容易ではなくなっているということだ。

 

それにしても東京はいいよね、この揚羽堂も朝日新聞からの取材申し入れがあるし、その後はNHKからのも来た。大阪ではなかなかそういうことは起こらない。


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