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古本屋日誌
今日は天王寺さんの古本市の最終日だ。
出荷を済ませてから行ってみた。
今回は先週金曜から始まったのだが雨にたたられ、晴れたのは2日目と昨日だけで、客がたくさん来る三連休の大半は雨だった。
そのせいもあってか今日は値引きしている店がたくさんみられた。持って帰るのは手間だし、なんとか現金化しようという意図だろう。
「りせんしゃ」は150円付けている文庫本を全て50円にしていたし、そのほかの本も半額。
「クロックワーク」は文庫は7冊で500円だった。
「栞書房」は300円以下の本を100円にしていた。
「不死鳥ブックス」は全て一冊100円。
「瀬戸内アーカムハウス」も全て一冊100円だ。
そして会場南端の100均コーナーは500円で詰め放題となっていた。
今回の古本市で驚いたのは「瀬戸内アーカムハウス」の品揃えだ。
なんでも岡山市内に拠点があって「今はもう店舗はやってない」そうだ。
「佐多稲子全集」「ルカーチ著作集」「トロツキー著作集」「飯田龍太全集」「渡部直己全集」戦前の旧制高校のテキスト 「佐藤栄作日記」「人類の知的遺産」シリーズ 児玉誉士夫の著作 「歴史主義の成立」「文藝春秋の田中角栄の金脈の号」大量の「朝日ジャーナル」いろんな発掘調査報告書 鳥取県伝説集 滋賀県方言集 古い「中央公論」中核派の著作などなど、全て300円(最終日は100円)で売っていた。
それぞれの本の末尾には鉛筆の端正な字体で「1000円」「3500円」「500円」などの表記があって、その値段はネット価格として納得できるものだ。
通販でならもっと高く売れそうな感じがするのだが、(まったくもって大きなお世話の話をしているのではあるが)すごいことだ。
スティーブン・ピンカーの『人はどこまで合理的か』が出た。
ピンカーは『暴力の人類史』で20世紀が2度の世界大戦でたくさんの人が死んだ悲劇の時代だったというわれわれの通念を見事に打ち砕いた社会学者だ。
さて新著の中で、ピンカーは原子力発電への毛嫌いを謬見だとして退ける。
彼は脱炭素社会に歩みを進めるためには、CO2を出さない原子力発電が不可欠だと考えているのだ。
これまで起きた3度の大事故のリスクを分析する。すなわちスリーマイル島、チェルノブイリそして福島第一原発だ。
ピンカーはこれらの原発事故での死者数について次のように考察する。
「スリーマイル島の事故では死者は出ていない。福島の事故では数年後に作業員一人が死亡した。チェルノブイリでは、事故による死者が31人、癌による死者がおそらく数千人になると思われるが、それでもなお石炭の排煙による1日当たりの死者数とは同じレベルである。」
そうなのか、チェルノブイリの数千人の死者は石炭によるたった1日のそれと同じというのだから驚きだ。
今週の金曜日は断続的に3時くらいまでかなり激しい雨だった。
天王寺さんの古本市は初日で、屋外に出してある平台にはブルーシートがかかっていて、雨を防いでいた。
ところが翌日、シートをどけて確認してみたら、雨を防ぎきれず大量の雨水が小分けされた平台に侵入し、本が水を吸ってパンパンに膨らんでしまっているお店があった。
それでも、あるお客さんは、目当ての本があるのか、指を本箱に突っ込んで中の一冊を取り出そうとするが、押しても引いてもいっかなびくともしない。
何の本かなと気になって、覗いてみたら集英社文庫の「萬葉集」のきれいな本が詰まっているのが見えた。このシリーズは人気があって一冊700円くらいはするだろう。
「おじさん❗️これびくともせーへんで❗️」
「欲しいのあったらな、やるわ、持っていんでや」
「えー❗️嬉しいけど惜しいことしましたな」
「こんなもん惜しいことあらへん、あらへん」
「ブルーシートが一枚でな、薄かったんや」
「でもこれ、きれいな本やし、売値も高いんちゃいますのん❓」(このお店には全て一冊150円、4冊で500円の表示があった)
「そんなもん、若い人(若い古本屋の店主という意味だ)はな、ネットで値ぇ調べてやってるけど、俺は関係あらへん、そんなもん」
もう面白すぎるなあ。
通販が隆盛の昨今、古本の値段はAmazon価格が幅を利かせるようになった。
以前、街の古本屋しかなかった時代に比べると、通販の値段は高い。
通販は、顧客が全国にいるので、割り高でも買うてくれるお客さんがあるわけだ。
店舗での販売は客層が限られるから安くする必要があるという理屈だ。
ただ不思議なのは古本組合が開催している業者の市だ。
ここには古書組合に加盟している古本屋が、自分の店には合わない本を持ち寄ってセリで販売するのだ。
卸値みたいな値段で落札できるのかな❓と考えるところだ。
ところが実際は相当に高額で取引されている。
Amazon価格なんかより高い値段だったり、もちろん店舗で売る値段なんかとはかけ離れている場合がずいぶんある。
「こんな高い値段で誰が買うんだろう。商売になるとは思えんな」と俺なんかは思うのだ。
しかし、もちろんちゃんと高い値段で、文句一つ言うでもなく買うてくださるお客さんがいるのだ。
つまりその古本屋と昔から懇意にしていて、売るのも、買うのも専らその本屋という太っ腹な方々を持っているということなのだ。
今日から天王寺さんで古本市だ。早速行ってみた。
今回は大阪、京都、奈良、兵庫、滋賀の古本屋のほかに静岡市、鳥取の米子、岡山から参加している。
米子はつまり皆生温泉のあるところで、相当な遠隔地だ。
天気予報では、少なくとも2時くらいまでは激しい雨とのことで、開場の朝10時はもちろんかなりの雨脚だ。
いつもなら古本市の初日はかなりの人出で、各店舗の本棚には数人がとりついて、本を物色しているから、ゆっくり選んでいるゆとりがない。
ところが今日は天気予報通りの強い雨脚がずっと続くこともあって、極端に人が少ない。
露天に並べてあるたくさんの平台にはブルーシートがかぶせてあって、今日は販売されない。
これも客が少ない原因だろう。
100円均一コーナーが南の端に設けてある。
大きな白いテントが、平台の上を余裕をもって守っていて、強い雨でも身体は濡れない。
しかし昼過ぎなど5、6人しかいない。古本市の100均コーナーで、邪魔されずに本を眺められたのは今回が初めてだ。