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古本屋日誌

2022-07-13 16:16:00

今日は三ノ宮の神戸阪急で古本市の初日だ。去年まではなかった催物なので興味深い。

 

 

神戸では毎年3月終わりにサンボーホールで大規模な古本市があったが、今年は開催されなかった。

 

 

 

聞いた話ではホールの使用料が値上げされたし、古本市での売り上げが思ったほど上がらないことが中止の理由だという。

 

 

今回の古本市はその代わりみたいなものなんだろうか。

 

早速行ってみた。

 

なにせ百貨店の催事は心惹かれる。

 

まず涼しい。汗もでない。

蚊に襲われることもない。

 

本のブース間もゆとりがある。客同士がぶつかることもない。

そして本を展示している什器が洗練されている。

 

屋外の古本市は業者からレンタルした平台に各古本屋が持ち寄った本棚からなっている。

 

平台はともかく、本棚はかしいでたり、傾いていたり、年季の入ったものだ。これはこれで味はあるが、暑苦しさや圧迫感を感じることがあるのだ。

 

その点百貨店の催事ではなかなか面白いブックエンドを見ることもできる。(後述)

 

 

さらに、くたびれたら近くのカフェで冷コーをしばくこともできる。

 

置いてある本も屋外ではないから、細かい砂にコーティングされることもない。ページをめくっているうちに砂や埃で手が黒くもならない。

 

お客さんの数も普段の屋外の古本市比べてかなり少ない。初日の朝もゆったりしていてじっくり本を選ぶことができる。

 

阪急には一階からも入れるのだが、暑いので地下から入ることにして、ネットで地下のフロアを調べて、エレベーターにほど近い入り口にオープン10分くらい前から待機していた。

 

オープンと同時に左に折れてエレベーター前に首尾よくついたはいいものの、3台あるエレベーター全てが既に5階や6階にあって上に向かっている。なるほど開店時、エレベーターは一階に止まっているわけだ。

 

会場は9階にあって今回は29の古本屋が参加している。

 

 

兵庫が10、大阪は11、京都が4、あと三重、石川、富山、岐阜。

規模はなかなかのもので10万冊くらいはあるだろう。

いつも面白いと思うのは大阪の寸心堂の展示だ。

 

この古本屋は海外文学が専門で、ディケンズやホームズ、ホフマンなど各種取り揃えているのは言うまでもない。

 

注目すべきはブックエンドだ。

 

今回は猫だ。

 

岩波文庫のホフマン『牡猫ムルの人生観』上、下やディケンズの河出文庫が本棚の1番上に乗っていて、右端には全身が黒い猫が、立ち上がって両手を伸ばして、文庫本が倒れてこないように、懸命に支えているブックエンドがある。

本も欲しいが、このねこも欲しい❗️

 

 


2022-07-11 14:33:00

消しゴム版画やテレビ評でならしたナンシー関なんだが、時にルポも、書いている。

 

 

その中でも角川文庫の『信仰の現場』は特に面白い。

 

 

ナンシーがオタク系の人達の集まりに野次馬的に参加して写真と報告をまとめたものだ。

 

 

オタク系の人たちでも日頃は大っぴらにその道の信者であることを明らかにはできない。

 

 

つまり日々ががまんなのだ。それが同好の士の集まりなんだから、一気に解放されて面白くなるだろうというのがナンシーの読みだ。

 

 

 

 

初めが平成3年の山梨県民ホールでの矢沢永吉コンサートだ。

 

 

矢沢信者にとっては、彼の一挙手一投足がメロメロになるくらい素晴らしくて、悲鳴は上がるし、バンザイはするし、足は踏み鳴らすなのだ。

 

 

 

さてここからがナンシーのルポです。

 

 

 

「ステージ上の矢沢は煽動的なMCをするわけでもなく、あくまでも音楽を演ってきるだけだ。

しかし気づいたのだが、矢沢は何度も舞台からソデへ姿を消す。

 

曲の間奏で消えて2コーラス目が始まる瞬間に戻っては歌い出すというシーンが数回あった。

 

矢沢本人は無意識なのだろうが、結果的にこれは無言の煽動だ。

 

『ステージに現れる』というのは、いわば『御降誕』である。

 

信ずる者たちにとっては、最も崇高でありがたい儀式を何度も見せているのである。もう会場は大変だ。」

 

 

信者の連中はそれこそなんでも許してしまうわけで、俺はもし教祖だとしたら、だんだんつまらなくなるな。

 

 

 

「おい❗️お前ら❗️そこは笑うとこちゃうやろ❗️あんばいきいとんのか❗️」と怒鳴り出すに違いない。

 

矢沢は、優しいよなあ。

 

信者たちが喜ぶことを何度もしてやるんだから。


2022-07-10 16:56:00

高沢皓司が、亡くなった。

 

75だという。

 

彼には『宿命』(新潮文庫)という代表作がある。

 

例の赤軍派によるよど号乗っ取り事件の犯人たちの顛末を描いたルポだ。

 

 

革命の根拠地を北朝鮮に夢見て逃亡した赤軍派メンバーはそこで、どんな思想改造を受けたか知らないけれど、世界中から日本人を誘拐してくるようになったというのだ。

 

つまり北の手先に身を落として誘拐を生業とするようになってしまったのだ。

 

 

この本は拉致問題が話題になっている頃は1500円くらいでよく売れていた。

 

 

しかしこのところ拉致問題が論じられるる機会の減少でまったく売れなくなっていた。しかしよくしたもので逝去の一報を受けて立て続けに売れている。

 

 

 

今日は久しぶりに京都に出向いて古本屋を覗いた。

 

この数年のコロナ騒動で京都の観光産業は大きな打撃を受けていて、観光客はいないし、学生も意味のないリモート授業を強いられて、キャンパスも閑散としていた。

 

 

人々は先行きが見通せないことに苛立ち、とりあえず思考も停止して、現状維持のスタンスを取ったから、古本屋にもいい本は流れてこなかった。

 

 

それが、ようやく海外の観光客も入ってくるようになり、国内の待ち侘びていたお客さんも押し寄せるようになったので、古本業界も含めて活気を取り戻していると思うのだ。

 

予想通りちくま学芸文庫の『作家の日記』全6巻、『正法眼蔵読解』全10巻『西洋事物起源』全8巻

角川文庫のナンシー関『信仰の現場』

講談社学術文庫の『増鏡』全3巻

『今鏡』全3巻、『後拾遺和歌集』全4巻、『大和物語』全2巻などなかなかお目にかかれない本があった。

 

 


2022-07-08 10:23:00

インベカヲリが2冊続けて本を出した。

 

そのうち一冊は死刑囚の教誨をやっている人や、無差別殺人の友人、永山則夫の弁護をしていた人などへのインタビュー集の『死刑になりたくて他人を殺しました』(イーストプレス)だ。

 

先日の大阪で起きたクリニック放火殺人事件など、多数の無辜を、巻き込みはた迷惑もいいところだ。

 

脳生理学の観点からそういう危険人物を、脳の構造や生理から割り出せないものなのかと思うところだ。

 

 

これについて京大の岡邊健(犯罪社会学の研究者だそうだ)の話が載っている。

 

 

「岡邊氏は、人を生物学的な根拠だけで説明しようとしたら、途端におかしなことになると言う。つまり環境要因も大きいということだ。

 

(ここから岡邊の話)『社会によって犯罪は全然違うんですよね。殺人のような、わりと定義がはっきりしている犯罪ですら日本とアメリカでは、人口当たりの発生率が二十倍くらい違うんですよね。

日本はすごくすくなくて、ドイツが日本の三倍くらい、イギリス・フランスが四倍くらいあるんです。

 

 

こんなに違いがあるのって、生物学的な説明はつかないんですよ。そうするとやっぱり社会の問題になります』

この後、岡邊は例の北新地事件の犯人について生活保護をかけてやらなかったのが問題だという。

 

日本では他の先進国に比べて必要な人に生活保護の救済が行き渡っていないというのだ。

 

そしてそれが原因で凶行に走ってしまうのではないかと言う。

 

でも日本に比べて生活保護の充実している欧米各国の方が殺人事件ははるかに多い。ここを説明しないと岡邊の話は意味がないな。

 

だいたいこの手の学者先生はすぐに環境要因に逃げ込みすぎではないのか。

 

日本では凶悪事件の数なんか、たかが知れてるんだから、これまでの犯人の犯行に至るまでの細かい言動や兆候を精査してみたら、どう考えても危険だと判断できる要素が取り出せるのではないのか。

 

この本の中でインベカヲリは、秋葉原無差別殺傷事件の犯人の友人にもインタビューしている。

 

 

その中にとんでもない話がある。

 

 

(犯人の加藤は国道のライン引きの警備の仕事に就いていたのだが、一緒にチームを組んでいた高齢のガードマンがヘマをして、引いたばかりのラインを何度も踏んでしまい、地面に足跡がベタベタついてしまった)

 

「なんと加藤はいきなり高齢の警備員(72なんだそうだ)の胸倉をつかむと、柔道の足払いの要領で全体重をかけ、彼を頭からアスファルトに叩きつけたという。

 

(中略)

 

あまりの出来事に一同絶句し、時が止まったかのように場が静まった。

 

 

その中で、加藤は一人クルリと振り返ると、満面の笑みを浮かべて『大友さん!ちゃんと注意してやりましたから!』と言ったという。」

 

こういったことを平気でやるのはやはり前兆現象と思うけどな。

 


2022-07-07 14:51:00

「文藝春秋」の昭和49年11月号を入手しました。

 

立花隆の『田中角栄研究、その金脈と人脈』が載ってる号です。

 

立花によればその当時は選挙で必要な億単位の金は簡単に調達できていたという。

 

「証券会社なら、もっと簡単に(新規上場で儲けさせる手法を指している)株で金を作ってやれる。

 

政治家に安値で株を買わせ、市場に大量の買いを入れて、値を大きく上げさせ、高値で売り抜けさせる。

 

選挙、総裁選前後などには、必ずといってよいほど、異常な値動きを示す銘柄が幾つか出てくる。

 

その場合、一日に百万株単位の売買が行われ、時には一日で一千万株以上動くことがある。百円くらいの値ザヤが短時日に出ることはザラにあるから、億単位の金が簡単にできるわけだ。」

 

なるほどそりゃあ金ができるわけだが、今はいくら何でもこんなやり方は無理だな。

 

いつものまったりした立花の文章でないところも面白いな。

 

青春盛りの若者のスッキリしたレモンサワーのような文章だ。


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