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古本屋日誌
新潮新書から北川央の「大坂城」が出た。
北川は大阪城天守閣の館長を務める。大阪城の本はいろいろ出ているがどれもおんなじようなことしか書いてなくて紙のムダと思っていたが、この本は長年の研究成果を惜しみなく盛り込んだ面白い本だ。
例の、堺の南宋寺にある徳川家康の墓については、以前からあった墓を改装するにあたっての碑文が載っている。
碑文によれば、大坂夏の陣の際家康は討ち取られて命を落として南宋寺に葬られたのだそうで、その正しさを当時の堺市長やナショナルの松下幸之助が保証するということだ。
堺市長であれ松下なんとかごときが保証したところで誰が信じるのかバカバカしい限りではある。
ただ面白いのはそこではない。
実はこの碑文を建てる時に金を出したのは松下幸之助なんだが、それを幸之助に持ちかけたのは水戸徳川家の家老の子孫である三木啓次郎という人物なのだ。
なんでも幸之助が二股ソケットを四天王寺境内で戸板を敷いて販売していたら、ヤクザに因縁つけられた。
そこへ偶然通りかかったのが三木啓次郎でヤクザを追い払って幸之助を助けた。恩義を感じた幸之助は三木の願いは何でも叶えたんだそうだ。
水戸の家老の筋とはいえ、ヤクザ相手に喧嘩を売るとはそもそも何者なんだろう。
それ以上に水戸の徳川家が偉大なる家康が大阪で殺されたんだと主張し、墓を改築し碑文まで建てる意図は何なんだろうか❓
オフセット印刷とは違い、コピーの要領で手軽に一冊でも本を作れるようになった。著作権の問題もあるけれど、本の歴史は3000年以上にわたるから大半の著作は自由に出版できる。
絶版になっている本も今までは最低200部くらいは売れる見通しがたたないと出版できなかったが、今や一冊でも問題なく印刷できるし、さらに需要があった際も同じように提供できるのだ。これは古本屋にとっては喜ばしくない事態であることはいうまでもないね。
またAmazonやヤフオクそしてメルカリなどの通販サイトは、隆盛を極めており、店舗を構えている古本屋の店内でもスマホでAmazonの価格を、臆することなく調べて買うかどうかを決めている人が極めて多い。
店の側からすると苦々しいことなんだが、それが世の趨勢というものだし、そもそも自分の店もAmazonやヤフオクで大々的に販売しているからそういうものだとあきらめている。
でも高齢化社会では死ぬまでの長い時間をいかにしてつぶしていくかは極めて重要な問題だ。金がある連中は海外で悠々自適に過ごすのかもしれないが、全く生活に余裕のない年寄りの方がずっと多い。
必要な本ならネットの検索は極めて便利で効率的だが、老後はそんな能率はかえって生活を貧相にしてしまう。
それなりの規模の古本屋があって、本は10万冊は置いてあって、座る椅子やソファーもあり、2時間座り読みをしても大丈夫なところがあっても誰も困らないだろう。
正月2日でまず難波の高島屋に行く。晴天で風もなく
百貨店は今日から営業している。地下一階の「今庄そば」も昼前から行列のできる盛況だ。
南海本線の住吉大社駅から東に伸びる参道の人出は例年よりかなり少なく、おまけに出店は全て禁止されていて寂しい初詣風景だ。
昨日の伏見稲荷はたくさんの露天が櫛比していたのに、大阪では全く反対の対応、びっくりした。
今日は昼から嫁と伏見稲荷に出向いた。例年ほどではないかまずまずの人出で土産物屋も一安心だろう。
バイセルの「ブックセラーズダイアリー」にはスコットランドのせどりの話がある。
Amazonが隆盛を極める前には「ランナー」というせどりで生計を立てている業者がいてイギリス全土に車を走らせて、ある特定の専門分野の本を買い回って利鞘を稼いでいた。
その専門分野はいろいろあったが、共通して言えるのは地方史だったそうで、確かに古本屋も自分店がある地域以外の地方の歴史の本は売りあぐねているだろう。
「ランナー」はレジにそういう本を積み上げて店主と話して、店主の方も店では売れない本が片付いたことを寿いで「ランナーには一割引で売る」ルールが古本界には存在したという。
それが今ではほぼ消滅することになったのはもちろん通販が隆盛を極めているからだ。
バイセルの経営する古本屋はスコットランド最大の規模を誇り、在庫は常に10万冊を超えるのだが、それでもAmazonの脅威はひしひしと感じている。
ある時女から電話があって
「新刊書のところでスコットランドの廃墟の庭についての本を見つけたんですけどね。題名を教えていただけないかしら」という。
「いえ、残念ながら教えられませんね。でもどの本かわかりますから、喜んでお売りしますよ」
「どうして題名を教えられないの❓」
「題名を言ったらアマゾンで買うつもりでしょう」
「とんでもない、母に頼んでそちらの店まで行ってもらうつもりよ」
「いいでしょう。ではクレジットカードの番号とお母さんの名前を教えてもらえますか❓お支払いいただいたら取っておきます」
ここで女は電話を切った。
そこまで神経質にならなくてもいいのではとも思うけど、実際に店の売り上げが落ち込み、これまでの客も通販で買ってしまうのを目にしたらイライラもつのるだろう。