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古本屋日誌
村上春樹はノーベル賞候補と言われて実に久しい。
三島由紀夫はあのような右翼的言動で知られたから、いくらなんでもノーベル賞は無理だったろうけど、村上春樹はそのようなファナティックな言動はないし、海外での浸透を考えたら妥当なところだ。
ただノーベル文学賞は毎年だいたい1人だけだから、地域別に何年に1人てな感じで割り当てがあるように思うのだ。
日本人では川端康成、大江健三郎、カズオイシグロがそれぞれ20年程度の間隔で受賞しているから、20年に1人ということではなかろうか。
そうなるとイシグロが受賞して、まだ大して経ってないわけで、村上春樹の受賞はないような感じだ。(そもそもカズオイシグロに受賞さすのがよくわからないけどな)
それでも村上春樹の本はかなり高騰している。
俺が見たところでも「1973年のピンボール」や「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」の初版、帯付はコンディションがよかったら、一万円くらいはするようだ。
いずれも刊行から、30年以上経過しているから、箱の背などに焼けがくるのは仕方ないように思えるが、世の中にはどんな保存方法をとったのかは定かではないけれど、まるでタイムマシンでも使ったかのように、一切の焼けがない、帯も完璧なやつを持ってる人がいる。
しかしこんなきれいな本はもはや読む対象ではないよな。
慎重に扱っても帯が切れてしまったり、読み癖がついてしまったりしては、ハルキストとしては忸怩たるものがあるだろう。
ようやく手に入れたコンディション良好の本はラッピングして冷暗所に保存して、読むときは新潮文庫や中公文庫のにしておくことになろう。
しかし、冷暗所に保存してある本とは別に、またいいコンディションのハードカバーを手に入れるマニアもいるのだ。
というかハルキストなら「中国行きのスローボート」初版帯付を5冊とか「1973年のピンボール」も10冊というのは当たり前のことだろう。
そうなればもう帯が切れようが、箱に歪みが生じょうが、お構いなしに寝転んで初版の完全本を読み尽くす贅沢を味わうことができよう。
昨日はナンバシティ一階の「佐海 たちばな」に嫁と行った。
ここは呑んで食べれる店で、とても美味いのだ。
夜の営業は4時半からで、予約もできる、予約したら、広めのテーブル席を用意してもらえるのでありがたい。
「たちばなセット」は1700円でお造り(鮪の赤身、鯛、はまち)に串カツ三本、明太ポテサラだ。
他にお造りの五種もり(赤身、中トロ、鯛、ハマチ、サザエ)や本鮪の盛り合わせ(赤身、中トロ、さらに、スキミを酢飯と海苔でネギトロ風にできるようにしてあるもの)も素晴らしい。
特に赤身はクジラのような深い赤色で、味も濃厚で、驚くばかりだ。
天ぷらの盛り合わせや生ハムサラダ、酢の物、枝豆や茹でピーも美味い。
飲み物は生ビールにグレープフルーツの生絞りサワー(自分でグレープフルーツを絞ってつくる)、清酒グラス三杯(呉春、楯乃川など)など。
このように食べきれないほど(実際にはすべていただきましたが)美味しいお料理を堪能いたしました。
これでお値段は14000円ほどで安いよなあ。
「たちばな」の料理の質は圧倒的で、大阪にはこういう店がいくつもあるのだ。(いや、どこの街にもあるだろう)
だから俺は、旅行に皆さん方が嬉々として出かけて行かれる意味がわからない。
たとえば博多に美味いお造りや水だきを食べに行くとするなら、新幹線代だけでも2人で往復6万くらいするし、他にも宿泊費に飲食費がかかる。
それでいて、「たちばな」のお造りや「たこ梅」の蛸やおでん、「YEBISU BAR」の水だき、 「七福神」の串カツ、「インデアンカレー」や「富士そば」のざるそばやとろろめしを圧倒できる旨さがあるのかといえば、もちろんそんなことはない。
美味いといえば美味いけど、その程度なら大阪でいくらでも食べられる。
旅行に行きたくなるのは、幼い頃からの洗脳だろう。
仕事に疲れたら、温泉に浸かって、美味しいお料理を楽しもう、きれいな景色や名所も訪ねよう、てなキャンペーンにすっかりやられてしまう。
きれいな景色といっても、確かにガイドブックやネットに上がっている写真や動画は美しいのだが、実際に行ってみたら、それほどでもないし、ゴミがあちらこちらに散らばっている。
美しいなぁとしばらく見とれていても、すぐ飽きてしまうし、その絶景から宿に戻るのも時間外かかって面倒だ。
つまり、そもそも割りに合わないということだ。
大都会の一部の連中が、便利な鉄道がいくらもあるのに、マイカーを持ちたがるのと同様の現象だ。
バスはのんびりして、安全運転なので、景色を楽しむにはもってこいだな。
枚方から高槻に向かう国道171号線はともに40万都市を結んでいる大動脈だ。
高槻市は阪急電車の特急、JRの新快速電車が停車する北摂の中心地で、コンパクトな街並みながら、駅前には阪急百貨店、松坂屋がある。
枚方市はTポイントカードのTSUTAYA発祥の地であり、駅前には巨大な書店とスーパーが合体したT-SITEがそびえ立つ。
この巨大都市を結ぶ国道には淀川、ドンキホーテ、古本市場、東海道新幹線、万代、星乃珈琲店、自動車教習所、トヨタ、軽自動車専門の中古屋、バイク屋、ガソリンスタンド、歯医者、しゅうせんや、学習塾、高槻中学、高校、マクドのドライブスルー、Joshin、ヤマダ電機、丸亀製麺、ラーメン屋、焼肉屋、金のブタ、伊丹米、新聞販売店、村上製作所、ゴルフ場、マッサージ屋、ラブホテル、カラオケなどなんでもある。
とりわけ夕方のバス乗車は素晴らしい。
夕闇が迫ってくるので、各店舗とも早々とイルミネーションに彩られて、昼間は特色がなかった店舗が別の顔になる。
高槻中学のすぐ前にそびえ立つラブホテルは外壁が桃色の4階建てなんだが、国道173がカーブしている加減で、ちょうど側面全体がバスからまず目に入る。(枚方に向かう時だが)
背面の両端に強力なビームライトが備わっていて、それぞれ対角線を描いて壁面上方に光を放っていて、ピンク色がとてもきれいに映る。
この路線で見当たらないのは大きな病院くらいで、死はこの世には存在しないとでも言いたげな人間の欲望と享楽が渦巻いているわけだ。
ただ淀川にかかる枚方大橋から下流を眺めると、夕闇の中、河原は暗闇に閉ざされ、そのずっと向こうに北摂の山々が大きく黒々と迫ってくる様子が眺められる。
ここだけは人間の力なんか、なんの意味もないんだよと、心が一瞬にして冷めてしまうような雄大な眺めなのだ。
西表島の、見渡す限り続くジャングルを高台から眺めた時と変わらない。
ネットで本が簡単に手に入るようになるまでは、一度見つけた本が次にまた見つかる保証は全然なかった。
だから当面読む予定がなくてもこうていた。しかし今やネットで検索できない本などない。(値段が問題だが)
それにもかかわらず、新刊にせよ、古本にせよ次から次へと買うてしまう。
女のやつでカバンをよう買うのがいる。
俺なんか仕事にもっていくカバンが一つあるだけで、それは丈夫でたくさん本が入り、ファスナーが大きくて入れやすい物で、つまりは実用しか考えてない。
しかしカバンマニアの話では
「そんなもん橋筋(心斎橋筋のこと)に行く時は、ええやつやけどちょっとこうとなんで、キタやったら派手なやつ。
倅の学校に行く時用、連れとカラオケに行く用とか、いろいろな組み合わせがあるやん。なんぼあっても足らんわ」とのことです。
なるほど言われてみたらわかるよなあ。
いろんな場合を想定して、コーディネートしていくのは、時間もかかるし、金もいるけどなかなかいい趣味だよなあ。
特に老後のあり余る時間にはもってこいだな。
本も通勤の電車で読むエッセイ、よく揺れるバスの車内で読むスリラー、勉強用のきちんと読む本、布団に入って眠るためのつまらない本とか、用途によってわけて読んでいけばいいのだろう。
しかし本にしてもカバンにしても、問題は二つある。
一つは場所を取ることだ。
それに本は重たい。
確かに床に積み上げておくこともできるんだが、そうするとどこに何があるかわからなくなりがちだし、埃まみれになったり、帯が切れてしまったり、カバーにスレができたりしてしまう。
そうすると本屋で手に取った時のときめきがやや損なわれてしまうから厄介だ。
また二つ目には、そのうち何をこうたのかすっかり忘れてしまうのだ。
本屋でこうてきた本を楽しんでいると、目の前の本棚におんなじ本が刺さっているのを目にすることがある。
付箋が付いていて、確かに一度は読んだはずなんだけれど、その記憶も一切ない。
『本の雑誌』にライターの岡崎武士の連載がある。
岡崎は古本に関するエッセイをたくさん書いているのだが、『サンデー毎日』などの連載が打ち切られ、収入が大きく減ってしまうので古本屋をやりたいという。
今月号の連載では幼馴染で、京都で古本屋をやっている山本善行(古本屋『善行堂』)に相談したという。
岡崎は資金の問題で店舗を構えることは考えていないと言う。
山本はAmazonでの通販は本は売れるけど、面倒なこともある。古本組合に加盟したらどうか❓とアドバイスしたとある。
山本は岡崎の蔵書は文学書が多いから、日本の古本屋サイト(古本組合が運営している)で十分売れると言うのだ。
東京はマスコミやら出版社、大学その他本をネタにしてメシを食う産業を独占しているから古本屋商売は簡単だ。
店舗を構えてもなんの問題もなくやっていける。
そもそも文学書を求める客は古本市や店舗で実際に手に取って、コンディションや刊行年、刷などを確かめてから買うことが多い。
通販で販売すると『カバーが求めていたものと違う』とか「刷が違うだろう❗️』とか『こんなに焼けがあるならいらない」とか様々なクレームのもとになる。
よそさんの商売のことだから、なんの興味もないけど、ちょっと気になったのでわざわざ書いてみたのだ。