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古本屋日誌
関西大学の永井良和が『ジャズとダンス』を出した。
戦前の大阪、神戸、京都でのダンスホール(ジャズをかき鳴らしながら男女ペアの社交ダンスができる)の話だ。
ジャズの一曲はだいたい3分間で、その間ダンスの相手を務めるダンサーにチケットを渡して踊るシステムだという。
道頓堀、千日前には、たくさんのダンスホールがあって、1923年の関東大震災以降は被災した東京、横浜からたくさんの音楽家、文化人が関西に移住してきたこともあって、一挙にジャズ文化が花開いたという。
しかし1927年には大阪府内でのダンスホールの営業が禁止されて、ブームは一息つく形になった。永井の本は丹念に沿革を伝えるとともに、ホールやチケットの写真を資料としてたくさん掲載していて魅力的だ。
それにしても不思議なのが1927年の禁令だよな。満州事変もまだだいぶ先だし、世界恐慌も始まってない。大正デモクラシーを謳歌して、モボ、モガの時代なのになぜなんだろうか。
俺はやはり風俗壊乱の恐れがあるというのが理由だったと思うな。
現在、さんちかホールでは古本市が開催中なだ。
ここはJRと阪急、阪神の三ノ宮駅の至近で神戸の繁華街の中心だ。
そういう目ぬき通りで、古本市を毎年開くことができているのはすごいことだと思う。
梅田のディアモール、銀座の時計店前で古本市は行われていないからね。
すぐ近くにはブックオフセンター街店がある。普通の本の品揃えでブックオフを上回ることは出来ないと思う。
だから、さんちかホールの品揃えは、かなり古い単行本、古地図、一枚刷、古写真、郷土史、古い雑誌、プレミアの付いている文学書、古文書、図録、美術書、雑版文庫などに特化している。
このあたりのジャンルはブックオフはほとんど置いていないから、うまく棲み分けできる感じもする。
ただ図録や美術書に関してはかなりかぶってくるし、雑版文庫に関してはブックオフの品揃えの方が明らかに優れているから棲み分けできているとは、俺には思えない。
しかしこういうジャンルの品物は、古本というよりは骨董品であって、客層がかなり絞られてくると思う。好事家や読書人で年齢もかなり上だろう。
普通の人たち、もちろん学生や大学の教員も含めて、必要とするのは、ブックオフの扱っている本だろう。そのため売り上げが上がってこない場合もあるのではなかろうか。
こうなった原因は、もちろんブックオフが抜群のコマーシャル戦略で、業界を席巻して、かなりいい本までも取り揃えられるようになってしまった(客はブックオフに行けばいい本が買えるわけだから、望ましい事態だ)ことがまず挙げられる。
しかしまた、古本屋業界にも原因はある。
かなり多くの古本屋は一山当てたいと目論んでいて、どこかにお宝が眠っているだろうから、それを自分が掘り当てたいと思っているのだ。
そういう考えを抱いてしまうと、ごく普通に流通していて、手に入りやすい本なんかより、稀覯本、珍しい本の初版だとか帯付きだとかに目がいってしまうようになりがちなのだ。
でも、本の値段とその価値は全く別物だ。
吉田満の『戦艦大和の最期』は500円くらいで簡単に入手できるけど、これを上回る本は多くはないだろう。
『源氏物語』も110円で買える時があるほど安いが、大変面白いし、人間の嫌らしさや美しさが丁寧に描いてあってこれを上回る小説はわが国にはないだろう。
大江健三郎の『個人的な体験』だって安いけれど、作品の質は戦慄すべきものだ。
中学受験の進学塾である、日能研関西の社会の講師だった人で、定年になって今は反体制運動をしながら、乏しい年金生活をしてる先輩がいる。
日能研関西では60になると講師は一律時間給が2割カットされ、担当の授業時間も2割程度減少し、年収では6割程度になってしまう。
先輩はこの扱いに反発して、神戸地方裁判所に提訴したが、うまくいかなかったということがあった。(その経緯についてはこれまで何度か書いてきた)
今は先輩は、寄せ場の労働者や野宿者の支援、反戦運動なんかをしていて、そういう集会に集まるのは高齢の労働者が多いと聞いた。
俺「学生が来ることないん❓1980年代90年代はあれやったよね、学生の方が集会参加は多かったよね。労働者も来てたけど、集会の演説とか聞かんとラジオで競馬聞いてたり、寝てたりしとったよね。でも労働者階級本体やからゆうて、みな気ぃつことったよね」
先輩「学生は、来ることもある。でもロートルの周りの連中は気を遣って『よう来てくれたね、大学では何の専攻なん?』みたいなこと言ってる。」
「そうなんか、バカな学生風情に気を遣うなんぞ馬鹿げてるよな、そういう運動もどうなんかね」
「学生の方も、自分がはたからチヤホヤされてるのをわかってるから、なんか居心地も悪い様子が見える」
「ふーんそうなんや、学生にしたら、就職はしっかりできるし、左がかった方に組みするインセンティブがないよね。」
昨日から谷町四丁目の古書会館で月例の古本市、早速朝から行ってみた。
文学書を扱う、人気の矢野書房は以前は毎回参加していたが、少し前から隔月となり、今月は出店していた。
またSFを得意にしているディックは毎回きれいな文庫本や新書本もたくさん出している。山口昌男の岩波現代文庫『敗者の精神史』上、下もあった。
真木書店も毎回たくさんのサイン本を出品していて、今回はそれ以外に、森瑤子のたくさんの赤い角川文庫、ちくま学芸文庫の『ニーチェ全集』なんかもあった。
欧米文学を専門にする寸心堂はいつもおしゃれな展示をしている。ワゴンにはたくさんの文庫本を詰めているが、その上には小型の本棚を二段に重ねて、単行本、文学全集の端本をきれいに並べている。
今回は河出文庫の『フィネガンズ ウェイク』全3巻がとりわけ目を引いた。
古本横丁は300円均一でいろんな本を並べていて、線引きがあってコンディションは悪いが、筑摩叢書の『ツタンカーメン発掘記』も並んでいた。
汎書店はワゴンいっぱいのブルーバックスを出品していた。
厚生書店は今回もワゴンにたくさんの文庫本を出品していて、素晴らしく、中には講談社文庫の『パンとペン』も見られた。
今月末に古本組合から『大阪古書組合百年史』が8000円で刊行されるとのことで、事前予約を勧めるチラシが配られていた。
昨日からさんちかホールで恒例の古本市。早速朝から行ってみた。
さんちかは改装工事が進んで、ホールのある3番街の前、阪神電車よりの、以前はヴィッセル神戸の巨大なペイントを描いた仮囲いのスペースだったところには上島珈琲店が出来ている。
10時にオープンして、階段を降りてホールに行くと、震災30年ということで、特設コーナーが設けてあって、あの地震を扱ったいろんな本が並んでいる。
中でも目を引いたのは1月17日から数ヶ月におよぶ朝日新聞などの束で、黄ばんではいるものの、しっかりしていて、よく保存していた人がいたものだと驚いた。(値段は3万)
もちろん17日の朝刊一面は、地震とは関係ない貿易摩擦の話で、そういう日常が粉々になってしまったわけだ。
また神戸の古い写真もたくさんあって、中には手彩色された美しいものもあり、俺は興味はないけれど、研究者やコレクターには垂涎ものなんだろう。
小野十三郎の詩集やエッセイもたくさん並んでいて珍しかったが、新書の『大阪』はなかった。
だいぶ前に出た本だが『廣重名所江戸百景、新印刷による』が外箱に傷みがあるものの5千円で売っていたのは安いと思ったな。
「サンコウ書店」のブースでは1948年に出た『復興 大阪』(毎日新聞)という敗戦後間もなく出た大阪ガイドブックが3000円で出ていて、こんな本があるのかと驚いた。
パラパラ見るとホステスが横について接客するスタイルの喫茶店が簇出、復活したダンスホールの脅威となっているとある。
そりゃそうだろう、下手くそなダンスなんか踊りたくないからな。
いしいひさいちの『バイトくん』1から3(プレイガイドジャーナル)が4000円で売っていた。この本の前にでた『バイトくん』はヤフオクでえらい高値で取引されていたが、「いしい商店」という彼のサイトで電子で復刻されている。読むだけならそれで充分楽しめる。
この古本市では古書目録も発行されていて、その中には毎日新聞社が、だいぶ前に出した『川瀬巴水木版画集』(二重箱付)が10万で載っている。
さんちかは30分くらいで切り上げてブックオフセンター街店に行ってみた。
ここはセンター街に面していてニトリやサイゼリアが入っているビルの5階ワンフロアーを占めていて、実に広いし、本は整理整頓されているし、通路も幅がとってあってお手洗いまで完備されていて素晴らしい。
日本一の古本屋の名に恥じない店だと思う。
唯一問題なのは、本のチェックが甘いことで、線引きがある本に気づかず高い値段で売っているケースがしばしばあることだ。
物凄い量の本が入ってくるので、限られた人数ではチェックしきれないということだろうが、いうまでもなく古本屋としては恥ずかしいことだ。