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古本屋日誌
原書房からバイセルの『ブックセラーズダイアリー 2』が出た。
2021年に出た本の続編で2015年1年のスコットランドの古本屋の日記だ。
正編が愉快な作品だったので、続けて出版して欲しかったから、ようやく手にすることができて嬉しい。(なんでも3までイギリスでは出ているそうだ)
客とのやりとりのほか、通販での注文数とその出荷数(本が見つからなくて出荷できてないことがしばしばある)に加えて店での1日の来客数、売上高も記してある。
通販はAmazonがほとんどのようだが、注文通り出荷できている日の方が少ないくらいで、これが許されるのが不思議だ。
この本で2月のデータを調べてみると通販の注文冊数は67なんだが、見つかったのは57冊にすぎず、品切れ率は15%近い。
日本のAmazonは7日間の品切れは、2.5%以内と定めていて、これを超えるとペナルティがあるようだ。
フランスの話だが、電気屋に冷蔵庫の修理を電話で依頼して曜日と時間を決めたにもかかわらず、大幅に遅れてやってくることは常態だと聞いたな。そういうフランス時間みたいなものはヨーロッパ各地で普通なのかもしれない。
客の話では、電話での注文で「これこれの本が欲しいんだが、おたくは送料が2.8ポンドになってるけど、ほんまにそんなにかかるのか。俺は実際にかかる分しか払いたくない」というのが面白かった。
こういう客は我が国にもいる。
なんでもイギリスのAmazonは2015年当時は送料は一律2.8ポンド、すなわち470円くらいだったという。実際はそこまでかからんやろという話だ。
でも梱包資材の金が必要だし、わざわざ郵便局や宅配業者のところまで持って行く仕事があるのだから、多めにもらうのは当たり前だ。
そもそもAmazonの規定にも送料には実際の送料のほかにさまざまな手間の代金が含まれることは明記してある。
ノベルの情報誌『ダヴィンチ』が恒例のBook of THE YEARを特集している。ノンフィクションもおまけで付いていて、なんでも星野源の本がいいそうだ。『ダヴィンチ』らしいよね。
『本の雑誌』も同様の特集を組んでいて、ノンフィクションでは『力道山未亡人』がトップにあがっている。
いまさら力道山と言われても、プロレスなんか俺は関心ないし、今年は不作だったのかもしれない。
『桐島聡 逃げる』は感心した作品なんだが、誰も取り上げていないのは不思議だ。
1971年の渋谷暴動で機動隊員をあやめたとされて、半世紀近く指名手配をされていた人物で、いまさらどうでもいいようなもんだが、それでも東京近辺にずっと居住して、整形もせず、仕事を続けていたのだから俺は興味深いと思っている。
この作品を元に映画が同時進行で2作制作されていて、まもなく公開となる。
2022年の年末に印刷も終わり仕上がっているにもかかわらず、内容に問題があるとして出版元のイーストプレスが回収してしまった『中野正彦の昭和九十二年」という小説がある。
刷り上がっているのに、回収するとはよほどややこしい内容なのか、ぜひ読んでみたいところだ。
ネットで探すとAmazonやメルカリで何点か出品されているが、値段が6000円を越えている。定価は2200円のようだし、ちょっとそれでは手を出せない。
お客さんに持っていないか尋ねたり、古本まつりで気をつけたりして、ようやく手に入れて一読。
主人公中野正彦はピザ屋のバイトで貧乏な生活を送りながらも、「会長」を頂点とする秘密結社に所属して、反日と目された人物へのテロを計画し、実行している。
面白いのはほとんど実在の人物名が使われていることで、彼らが「お父さま」と呼んで尊敬やむあたわざる人物は、ちゃんと安倍晋三となっている。
中野は彼が反日的と判断した人たちをあれこれ理屈をつけて罵るのだが、確かにそういう人たちはいるわけで、その言動をリアルに描いてあると感じたな。
ストーリーは急転直下、今まで「お父さま」と仰いできた安倍晋三に加えてトランプ大統領も暗殺せよとの司令が会長からもたらされる。加藤はそのテロ計画に参加するのだが、実行当日東京は直下型の大地震に見舞われて大混乱に陥るのだ。
出町柳近くの枡形商店街に12月9日、ぼあい書房が新しく店を出した。
ぼあい書房はこれまで百万遍の古本まつりなどの行事に出店するほか、枡形商店街の古本屋、上海ラヂオに本を並べていたのだが、この度めでたく独自の店を構えたわけだ。
この商店街には、上海ラヂオとエルカミノの2つの古本屋があるので3軒目だ。
他にあれこれの名画を上映するミニシアターもあって、ここにも新刊のほか、映画関係の古本も置いてある。
また河原町通から商店街に入ってすぐ右手にあるスーパーの2階にも旅行代理店みたいな店舗があって、その店の前の廊下にもみかん箱に入れて古本が販売されている。
さて早速、ぼあい書房に出向いてみた。
店は商店街の奥、西側にあって元は花屋だったという、間口1間半の細長い15坪くらい。
店頭には木枠の平台があって、版画や和紙の絵柄見本、昔の絵葉書セットなんかが並んでいて、中に入るとまたすぐ、平台があって今度は最近の絵葉書セットがたくさん並んでいる。
さらに進むと真ん中に木のテーブルがあって2列に木箱が置いてある。中は戦前の古い雑誌。
右手には吾妻ひでおのマンガがたくさん並んでいるし、展覧会図録、写真集、美術書が店の奥まで続いていて壮観だ。
スーパーリアリズム美術で有名なホキ美術館の図録、写実絵画の画集がたくさんあるほか、川西英コレクション、アラーキーの『東京日記』、『谷内六郎幻想記』なんかもある。
左側の本棚には文学書、哲学書が並んでいる。大江健三郎の初版本、南方熊楠関連のたくさんの本、みすず書房の本、北条団水なんかが目についた。
さらに奥にはスティール棚があって文庫、新書が並んでいる。『中井英夫全集』、角川文庫の江戸川乱歩シリーズ、ちくま文庫の『泉鏡花集成』なんかが目についた。枡形は京大や同志社に近く学生や教職員も多いから、いい本を集められることは間違いない。
またラブホテル同様、古本屋もかたまっているほうが、客は全てに入ってくれるので集客力も増すことは間違いない。
それにしても大衆が好む時代小説やベストセラー小説の類は全くないのは潔いな。店主の好みがよくわかる品揃えだ。
お店を拝見して、再び河原町通に出て、豆大福で名高い「ふたば」の、とえはたえの行列を拝見して横断歩道を渡り、すぐのコンビニでわさび入りのお稲荷さんと生姜、茎わかめの麦おにぎりとおーいお茶をこうて、てくてく高野川に掛かる橋を歩いていると、突然後ろから、手元に衝撃があった。
お稲荷さんは放さなかったが、おーいお茶はコロコロ、ハッとして左側を見ると大きく左右に翼を広げた鳶の姿がある。麦おにぎりは鳶に見事にかっさらわれてしまった。
それにしても「鳶に油揚げさらわれる」という諺はどうなのか、お稲荷さんを残していくとは不思議だ。
古本屋の仕事の宿命なんだが、腰痛に悩まされる。
本は材木とおんなじで、そもそも重たい上に、お客さんの家では押し入れの中に段ボールが入れてあってその中に本がぎっしり詰まっていることもしばしばある。
押し入れは中腰で入らなければならないくらい高さがないから、重たい段ボールを手前に引き寄せるだけでも、ずいぶん負担が腰にかかっていそうだ。
俺の場合は左側の腰がよく痛む。ネットで調べて腹筋や背筋を伸ばすストレッチをやってみているが、なかなかそううまくはいかない。