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古本屋日誌
現代社会がかかえ続けるバカの問題はなかなか深刻だ。
振り込め詐欺という犯罪においても、宝くじに当たっただの、特別給付金があるだの、およそ普通の人間なら信じるわけがない荒唐無稽なストーリーが作られて、それに引っかかる人が一定数いる。
ストーリーはむしろ荒唐無稽なほどいいのだ。バカを見分ける指標として使えるからだ。
どこの職場でも、長年やっている業務がきちんと出来なかったり、同じ失敗を繰り返して学べない人がいる。
銀行の窓口でも、通帳を持って現れて「これな、1円引かれてますねん。どないなってまんねんやろな」と血相変えて詰め寄るバカがいる。
「あーこれね、半年分のお利息1円がついてますねん。マイナスちゃいます。プラス1円です。」と言われて赤恥をかいたのに、それもたくさんの人が待っているのにもかかわらず「あのな、この頃寒なったり、暑なったりしまっしゃろ。頭があれなってますねん」とまだ話し続ける。
人の能力には、はっきりした差異があるから、これは仕方のないことなのだ。
そういうケースは周りの心優しい人や、優しくはないが、仕事なのでやむなくケアを引き受けている人たちがいることで、なんとかなっている。
バカの存在は煩わしいこともあるのだが、その一方で恩恵を受ける時もしばしばある。
職場ではバカ相手に真面目に競争を仕掛ければ当然勝つから、地位の面でも収入の面でも潤うことができる。
日常でもバカな人はいつまでも現金で支払ったり、アプリを使わなかったりするから、その余分な支払いは、ネット決済での還元の一部になっている。
2007年に国書刊行会から『戦争と美術』という1937年から1945年の戦争中に描かれた戦争画を集成した大型本が出た。
ただ藤田嗣治の絵が遺族の反対のために掲載できておらず、これは後の新版である程度収録が可能となった。
ここには小磯良平、向井潤吉、宮本三郎、田村孝之介をはじめたくさんの画家の絵が網羅されていて素晴らしい。
編者の1人、針生一郎は戦争画に批判的で、藤田の絵について「彼は野次馬の嗜虐的な興味に駆られてこのむごたらしい場面を描きながら、その効果をニヒルに、偏執狂的にたのしんでいるだけだ。」と書いている。
しかし戦争中の絵なんだから、俺はそういうものだろうと思うけどね。この本には入ってないが、藤田のサイパンやアッツ島、ノモンハンの絵を見ると、ごく普通に、誰もが心を打たれると思う。
あの時代は戦争以外の選択肢はないわけだから、それを批判することは無意味だ。
支那への侵略はもちろん植民地化を意図したものだが、それはその当時の列強のどの国もやっていたことであり、大日本帝国も遅ればせながら尻馬に乗っかろうとしたにすぎず、特別問題のある行動とは思えない。
戦場で敵兵を撃ち殺す、マシンガンを打ちまくる行為は今でいえば会社で、個人商店で顧客のために懸命に働く行為と基本的には何も変わらないと思う。
大日本帝国の行った戦争を批判するためには、日常の真面目な商売や行動を否定する論理を組み立てないと出来ないことだと思っている。
今日の価値観に乗っかって批判するのは幼稚な理屈でしかない。
1978年にダイヤモンド社からアーサーハーツォグの『ヒート』という小説が出た。
CO2の排出が増えて、地球が温暖化して、巨大な竜巻や台風が発生して、異常気象が頻発する。
その原因がCO2だとわかるのだが、アメリカ政府は、政治的理由からそれを隠そうとして、科学者たちを逮捕して、スキャンダルを流して名誉を傷つけようとする。
ところが温暖化は予想を遥かに超えるペースで進み、ニューヨークでも夏が続いて最高気温が50°近くになってしまう。
遅ればせながらアメリカ政府は国民に忍耐を迫り、CO2の排出を減らすため、クーラーは禁止、車も個人所有は基本禁止、旅行も制限するという事態になる。
今から50年近く前に、時代を先取りするような興味深い小説だな。
空飛ぶクルマなどというばかげたものは論外としても、スマホでサーフィンするごとに当然CO2は増える。
しかし我々は一旦手にした利便性を手放そうとするほどお人よしではない。
この小説でもアメリカの、ある平均的な街でこれまで享受してきた便利なアイテムを手放せるかどうか、聞き取り調査する話がある。
もちろん皆、拒否するわけだ。
それが、致し方ないと変わるのはハリケーンや竜巻で街が破壊されて、いっときに死者12000とかが出てしまう、夏場の気温が50°にも連日達して忍耐の限界を超えてしまうようになってからなのだ。
京都大学が発行している『京大広報』の1969年から1980年夏までの分を入手した。
大学の動きを月2回程度学内に知らせる広報誌だ。
全部で200号あって、例の大学闘争期間で、集会、衝突、バリケード封鎖、機動隊導入、団交などの細かい話が時間も含めてたくさん掲載してある。
1970年には安保条約を巡って、学生が構内をバリケード封鎖し、自動延長に反対した話がたくさん載っている。
普通に考えて、大学を封鎖して機能を停止させた程度で、安保条約にはなんの影響もない。
意味のない行動で不思議だよな。
文学部は本館も、新館も長くバリケードで封鎖されていることがわかるんだけれど、例えば考古学教室なんかどうだったんだろうか。
発掘作業は、体育会系の肉体労働で、上下関係もしっかりしているから、教授に異を唱えることは考えにくい。そのあたりはどうなっていたんだろうか。
工学部でも、1日中実験している教室もあるから、その作業手順なんかは徒弟制度的に教えてもらわないと出来ない。クソ生意気な学生の入り込む余地はないように思うのだがな。
評論家の唐沢俊一が亡くなった。
弟の漫画家のなをきが発表したのだが、2人は長らく付き合いもなく絶縁状態で、なをきの言葉では、晩年は金の無心もひどいし、嘘はつくし、罵詈雑言の被害を受けていたという。
親子、兄弟は身内ということで、他人同士なら気を遣い合うのに、遠慮なくなんでも言いたいことを行ってしまうケースがある。
それはさておき、唐沢俊一はおかしなB級漫画の復刻をいっときやっていた。
好美のぼる、森由紀子、原やすみなどなんだが、トンデモ本に分類されるこういうへんな漫画を発掘したのは彼の功績だ。