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古本屋日誌
今日は久しぶりに阪急電車で石橋を経て、箕面のすぐ手前の牧落まで行き、てくてく歩いてブックオフ箕面店に行ってみた。
ここは大阪府の高額所得者が住む町であり、また大阪大学の石橋キャンパスの近くでもある。
牧落の一つ石橋よりの桜井には、古本市場がある。
高額所得者の居住地でブックオフと古本市場がともにあるのは、俺が行った限りでは、他に西宮北口がある。
西宮では明らかにブックオフの品揃えがバラエティに富んでいて、なかなかお目にかかれない本もあるように感じた。つまり両者の品揃えには大きな違いがあって、棲み分けしているわけだ。
ただここは、ちゃんとした大学があるとは言えないので、ブックオフが揃えている本もさほど驚くほどのことはなかったな。その点、条件は箕面の方がいいと思うのだ。
ブックオフの品揃えと古本市場のそれは、どの程度差があるのか、それとも箕面では変わらないものなのか、興味深い。
さてまず箕面市役所の隣にあるブックオフ。
二階建で、すぐ前には50台以上止められる駐車場も完備されている。エントランスは三ノ宮駅の歩道にも敷き詰めてある赤御影石で、その階段を上がって入り口に至るのだ。
1階は楽器、カード、マンガ、児童書、レコードなんかが並んでいる。
20段くらいある、木の幅広階段を上がると本の売り場だ。
壁に沿っておすすめ本や500円均一本がずらりと並んでいる他、平台に単行本の廉価なのが収められている。
このフロアーには大型のマンガ、文庫のマンガ、歴史、美術書、写真集、辞書、エロ、文庫、新書、文学書、実用書などが所狭しと100坪はありそうな店内にひしめく。
ちくま学芸文庫の『ツタンカーメン発掘記』『漢書』揃、中公文庫の『クララの明治日記』、『葬制の起源』、新潮文庫の『どうで死ぬ身の一踊り』の初版、新潮文庫の『洪水はわが魂に及び』揃など珍しい本があった。
店を後にして、すぐ向かいにある市役所にはhellow cycling があるので、早速電動自転車を借って、国道を桜井方面に走る。
マクドナルド、ケンタッキー、希望軒、まいどおおきに食堂などチェーン店が並んでいて、どこも広いモータープールを備えていて便利だ。
さて市役所から5分くらいで、左手に古本市場が現れる、かなり近い。
二階建ての50坪くらいの店で、店の周囲はアスファルトで固めてある。
駐輪場には40台くらいの自転車が止まっていて盛況だ。
2階が本売り場なんだが、それ以外にスニーカーなんかの中古品も並んでいる。
文庫は80円の安いものと高めのものに分けて2メートル以上ある大きな本棚にずらりと並んでいる。
岩波文庫、ちくま文庫、ちくま学芸文庫、講談社学術文庫なんかは置いてはあるものの、申し訳程度で、目を引くタイトルはなかったな。
箕面のブックオフと古本市場なんだが、扱っている本の違いははっきりしていて、またその違いが店の外観にも表れているように感じた。
ブックオフは元々はレストランだったそうで、2階には坪庭や雪隠も備えられているのだが、古本市場はごく普通の古本屋の建物だ。
2000年1月に起きた、中学受験の進学塾の日能研関西の過労死事件のことだ。
算数課の課長だった酒井の授業のことを考えている。
彼は算数課の職員を統括する地位にいた。ただし、当時の算数課の課長は2人いて、もう1人は酒井より社歴の長い酒井浩だったから、彼に全ての職責がのしかかってくるということはなかった。
酒井はなぜか自分の地位や実力に自信を持てていないところが感じられて、不思議な思いを俺は抱いている。
ただ彼は自信を持っているところもあって、それは課長の職務であったり、社員や上司、友人の見立てだったりというあたりだ。
課長の職務については、書店でビジネス書をあれこれ物色して購入し、ノウハウを学んで、自信を持っていた。
しかしこれに関しても彼の自信ほどのことはなかったのではないかと思うのだ。
算数課にはテスト問題の提出期限になっても、出さない困った社員が複数いた。
酒井はその尻拭いで、自分で問題を作らざるを得なくなっていて、怒りを覚えていたことは間違いない。
俺はその当時そういう事情に疎くて、酒井と梅田で飲もうとなって、彼に知らせずにある算数課職員にも声をかけたのだが、酒井は「あいつなんか呼ぶなよ。腹が立つ」と真剣にむくれていた。
そういう厄介な社員への指導や扱いに苦慮していたわけだ。
しかし、宴会にやってきたくだんの社員を前にしても機嫌は直らず、ブスッとしたままなのはどうなんだろう。気持ちは向こうにも伝わってしまうし、管理職としては難しいところだ。
算数のオリジナル問題を作るのは、授業力とは全く別の能力が求められる。
先輩の東が言うには「いつも問題に出来そうな事象を探して、考えておかないといけない」。
また同じく社歴も長く、算数課の課長であった酒井浩は、雑誌『中学への数学』の常連投稿者で、毎月出題される難解なオリジナル問題を誰が速く解けるかを競っていた。
そういう素地があって初めて模擬試験の問題を作成できるわけで、当然ながら、力を有している課員は限られる。
能力的に無理な人にやらせても、レベルに達しないものしか作れないだろうし、結局自分がやらなければならなくなり、二度手間になるだろう。
本来は能力のある課員を配置するべきで、それは日能研関西の経営者がなすべきことなんだが、要するに経営者は無能だから、それは木によりて魚を求めるようなことだ。
また酒井は俺の授業がダメなこともわかっていたが、それを俺自身が気にしているだろうと考えていた。
これは俺という人間を見誤っている。
前にも書いた通り、酒井など社員と違い、俺は日能研関西に収入の重きを置いていなかったから、その程度の仕事で構わないと思っていた。
だから酒井が俺にクレームを伝える時に、さも気を遣っているそぶりをしていたのは、的外れなのだ。
彼が病に倒れる直前、2000年の1月中旬にも、「来期の予備校の出講はどないなったん❓」と聞かれたが「これから博多で西南大、福岡大などの直前講習があるし、来期も九州で3日、河合塾で2日ある」と答えたら意外な顔をされた。
また1999年は彼のご母堂が還暦で、それを祝うために妹さんも含めて、大阪見物に招いていたことがあった。(その事実は彼が亡くなってから、お母さんから知らされたのだが)
上本町校で授業の前に酒井が、大阪のガイドブックを見ていたので、「どないしたんや❓なんかあんのか❓」と尋ねたら、彼は口を濁して「ちょっとな」という。
大阪の名所なら俺に聞いて欲しいところだが、彼としては親孝行のことをあれこれ知られたくなかったのだろう。
いろいろ聞かれると恥ずかしいという思いもあったのだと思う。それは今ならわかる。
でも、その頃は酒井が俺の授業に不満を持っていることもよくわかっていたし、酒を飲みに行くのもわしではなく、社会課の阿部と行っていることも知っていたので、俺はちょっと僻む気持ちになった。
今日から谷町四丁目の古書会館で、古本市。さっそく朝から行ってみた。
谷町線は喜連瓜破での車両トラブルで遅れていて、9時40分過ぎの天満橋駅ホームは南行きの電車を待つひとがたくさんいた。
谷町四丁目駅に着いて、エレベーターで上がると中央大通りの南西角で、すぐ西側にはアパホテルがある。
ここは11時半から、950円でランチのバイキングを出していて、メニューは肉か魚(今日は鶏の山賊焼とサーモンフライ)を選んで、あとはおとふ、サラダ、ヨーグルト、フルーツ、ご飯、おつい、コーヒー、オレンジジュース、野菜ジュース、牛乳などが用意してある。
大通りを南に折れると、南大江小学校。都心部回帰のため、児童数が増加して、グラウンドを潰して鉄筋の新校舎を作った。
小学校の斜向かいには託児所がある。だからこの辺りは住宅地なんだが、すべて高層マンションとなっている。
その並びには焼き鳥屋やうどん屋、居酒屋、薬局、企業相手の健康診断を扱う診療所、ファミリーマート、卸のコーヒー豆専門店(ホットとアイスを持ち帰りも出来る)なんかもある。
その和泉町の一角に古書会館がある。
今回も文学書の矢野書房が参加しているほか、西洋文学の寸心堂、SFの古書ディック、文庫や新書のほか辞書や民俗学の本を集めた真木書店、和本の古本横丁、一枚ずり、錦絵のアジア号、古い雑誌やプレイガイドジャーナル、左翼文献を集めた唯書房、杉本、汎、淡路の古本屋、厚生なんかが本を並べていた。
移動期でもあり、いい本(堀井憲一郎の本、『収容所群島』全6巻、たくさんの『プレイガイドジャーナル』、高橋源一郎の著作、大量の、雑誌『太陽』や『本の雑誌』、今東光の著作、共産同の雑誌、左翼雑誌『序章』、三島由紀夫のいろんな単行本、谷内六郎の単行本などなど)がたくさん並んでいて、お客さんもみんな嬉しそうでありがたいことだ。
全国的に移動期になり、古本屋にたくさん本が入ってくる。
しかしほとんどは零細企業なので、買い付けた本をスピーディーに店に並べられなかったり、ネットにもアップできなかったりする。
客がせっかく店に来てくれてもその求めに応えられる力がない。
この形は20世紀のもので、客がひまじんとかリタイヤーした趣味人なんかの場合は問題はない。
本に囲まれた空間が近所にあることが幸せだからだ。
また忙しい人でも、対人スキルが高く、店主と仲良くなれたり、馴れ馴れしく入り込めたりする人なら、まだ整理も値付けも済んでないほんの山に入ることを許されて、安くいい本を手に入れられるだろう。
しかし今は21世紀で、そういうややこしい近所付き合いのような濃密な人間関係は敬遠され、初めから及び腰になる人が大半だ。
今後は間違いなくブックオフのスタイルが古本屋のスタンダードになることは間違いない。
ターミナル駅のねきに位置し、清潔で大きな空間に本や雑誌だけでなく、さまざまなジャンルの品物が置いてあり、通路も広く、店員とややこしいやり取りをする必要もない。
またマンパワーで売れない本は220円、110円の安売りコーナーに移動させ代わりに入荷した新しい本を棚に入れることができる。
ブックオフは日本一の古本屋だけのことはあって、店員の数がすごい。
大阪なら、心斎橋店は地下から3階まで4フロアーもあって、同時に20人くらい働いてるように見える。
時給が1500円だとしてもそれだけで1時間30000になるわけだから、よく儲かっているのだろう。
それだけ人が動かせたら、新しく本が入った時に、棚から売れない本を引き抜いて220円か110円のシールを貼って安売りコーナーに移動して、代わりに仕入れたばかりの本を差し込むことがスムーズに出来る。
ただこの心斎橋店は、やはり地代が高いのか、一直線に220円に直すのではなく、1200円の本は750円とか、980円のは420円とかワンクッション入れる形になっている。
阪急京都線の上新庄駅のそばに古本屋「小町書店」がある。
今年で3年目になるそうだ。
ついこないだまで開店2周年セールで、1000円で本の詰め放題をやっていた。
昨日からは文庫本、新書本5冊800円セールをやっている。今回は岩波、講談社学術、ちくま、ハヤカワ文庫が並んでいて壮観だ。
これはいいアイデアで、どんどん本が売れる。
この時期古本屋には買取依頼が増えるから、在庫は積み上がっていくのだが、店舗のスペースは限られていて、今本棚に挿してある本が売れてスペースができない限り、新しく仕入れた本を並べられない。
せっかく店まで足を運んでくれたお客さんも「前とおんなじ本が並んでるなあ、これでは値打ちないわ」とがっかりすることになる。
もちろん店の方で、動かない本は本棚から抜き取って、新しい本を入れたらいいのだが、マンパワーが不足していて、とてもそこまで手が回らない。
そこでこういう廉価販売をすれば、お客さん手づから、在庫処理をして下さることになって店も儲かる上に、労力も軽減されてみんなが得をすることになる。