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古本屋日誌

2025-07-10 19:45:00

世間には不器用な人がいて、なんでそんな役回りを自分から買ってやってるんだろうと不思議に思うことがある。

 

変に学歴がある連中もそうで、俺は数年京都大学の熊野寮に住んでいたが、大半の京大生はバカで怠惰だった。

 

とりわけ、金沢から来ていた法学部のAというやつは頭は悪いし、気弱でナヨナヨしてるおかしなやつで、ただルックスは優男のイケメンで、普通にやってれば女もほっとかないのに、勉強も仕事もする気がなくダラダラ自堕落な生活を送っていた。

  

 

 

1996年に関西書院から出た田辺明雄の『永遠の妻』という自伝風の小説を読んだんだが、著者の不器用な生活ぶりにも呆れた。

 

 

この人は大阪大学文学部の大学院を中退して、その後住之江ボートの警備員の仕事をアルバイトで長年やっていた。

 

その前に自分で塾を経営していたのだが、やる気が起きず潰してしまい、結局そこに落ち着いたのだ。

 

 

確かに文学部は仕事の範囲が限られるかもしれないが、昭和の時代なんだから塾や予備校は勃興期で、探せばいくらでもいい条件のところが見つかったはずだ。

 

作者は文学に取り憑かれて、創作意欲に燃えていたようだが、それでも時間の余裕が取れる仕事はある。東京に出たら雑誌社の仕事なんかたくさんあった。

 

 

のちに田辺は、真山青果の研究書で毎日出版文化賞を受賞し、その表彰や江藤淳らとの座談会に出席するため、住之江ボートの仕事を休もうとしたのだが、上司はがんとして受け付けず、休みを認めないため、一悶着起きる。

 

 

結局は作者は許可のないまま東京に出向いて、座談会に出るのだが、帰阪して上から叱責され、始末書を書く羽目になる。

 

 

毎日出版文化賞は、かなり有名なものだし、評論家の江藤淳は漱石の研究で知られている。

 

 

晩年、日本は無条件降伏などしていないなどと珍妙なことを言い出して、反米に血道を上げたおかしな人ではあるが、著名人であることは間違いない。

 

 

それなのに、住之江ボートの、作者の上司の課長や部長はそういう文化的なステータスにはなんらの価値も認めておらず、ひたすら叱責してくるのだから、馬鹿を相手にするのは大変だよね。