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古本屋日誌

2025-01-27 00:00:00

中学受験の進学塾の日能研関西での過労死のことを考えている。

 

当時算数課の課長(実際には「リーダー」という職種)だった酒井が2000年1月末にくも膜下出血で倒れて、そのまま意識が戻ることなく亡くなってしまった。

 

 

この病気には前兆として頭痛や吐き気、食欲不振などがあるといわれているが、個人差があるともいう。

 

 

前回、地下鉄で立ち上がれなくなるくらい体調がすぐれなかったのに、その後、部下を指揮して入試問題の突き合わせをしたりできるほど元気になっていた話を書いた。

 

またその同じ日に、やはり上本町校で、俺が「こないだな、藤目ゆき、ゆうやつの『性の歴史学』ゆう本、読んだんやけどな、例の廃娼運動の問題点を詳細に論じていておもろかったわ」という話をしたら、酒井はちょっと沈黙して、(この沈黙が興味深いのだ)「それ文学部の女やろ、ちょっと知ってる、一緒に住んでたことがある」という。

 

 

俺は彼との付き合いが長いため、妙な沈黙をする時はウソをついてる時だとわかっているので、それ以上追及するのはやめた。

 

代わりに「酒井先生はどんな研究をやりたかったんや❓藤目みたいなあれかいな」と聞いてみたら

 

「在日朝鮮人の歴史をやりたい思っていたよ」と実に意外な答えだったが、このへんのやりとりもいつもの彼の雰囲気だった。

 

 

またその時、俺が勉誠社から出ていた『歌舞伎台帳集成』という一冊が12000円くらいする大冊を何冊かまとめて、上本町の古本屋『天地書房』に売った話を酒井にした。

 

「向こうの藤田さん(天地書房の、俺が懇意にしてもうてる人だ)に値付けしてもうたんやけど、『そろてないよね、売らんともっといたらええのに』言われたわ」

 

するとすぐに顔を歪めるように笑って「そらそう」と短く言う。これは楽しい時の彼の表情なので、普段と変わらない印象を新しくした。

 

そこからしても、自宅で倒れる直前もかなり体調の良い時もあったと思うのだ。

 

 

また酒井が「付き合わせ‼️」と叫んで連れてきた部下は算数課職員の武村なんだが、彼に亡くなる前の様子を聞いてみた。

 

「酒井さんと昼ごはんに行ってましたけど、普通でしたよ」という。

 

やはり調子のいい時とそうでない時が現れて、まだ大丈夫かなという誤った思いを抱かせていたのだろう。