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古本屋日誌
中学受験の進学塾の日能研関西で働いていた先輩の話は何回か書いた。
先輩は社会を教える講師で、東京にいる時分から、小学生相手の仕事をしていたベテランだった。
2000年にこの塾の算数課の課長だった酒井が、50日以上休みが取れず過労死したことを契機に労働組合を作り、その初代の副委員長に彼はなった。
そのため同僚の先生方から労働相談を受けることが多々あったのだが、興味深いのは誰もが抱える不思議なバイアスのことなのだ。
バイアスについてはこのところ、いろんな種類があることが知られているのだが、よく陥ってしまうのが、現状維持バイアスだ。
とにかく今のままにこだわり続けて、変化を好まない傾向がわれわれの脳にはあるというのだ。人類の長い歴史の中で、これまでのやり方を変えてうまくいったことが少ないところから、脳は現状維持を選びがちだ。
仕事においては、目前に危機が迫っていて、周りにもそれがわかっているのに、本人は平気で、今の仕事のやり方を変えようとしないばかりか、変な自信まで抱いている。
塾であれば生徒からの評価は大切にしないといけないのはいうまでもない。
例えば生徒や親からクレームがたくさん出ていて、上からも注意を受けているにもかかわらず、当の本人は危機感を抱いていないばかりか、よかれと思って耳の痛い話をしてあげている上司や先輩、つまり労働組合の幹部に対して反感をもつのだ。
本人の心理はよくわからないが、「俺はきちんと仕事している、それなのに、不当ないちゃもんをつけられている」とでも思っているのだろう。
俺がつねづね不思議に思うのは、その自信の出てくる根拠だ。全くよくわからない。
予備校業界はかつてゴールデンセブンといわれた、生徒急増期があって、3大予備校は競って全国に校舎を展開した。
大教室で100人以上1クラスの授業が行われて、先生も不足がちで、力の不足している人もどんどん採用していたと思うのだ。
予備校業界でも、もちろん生徒からアンケートを取ったりして、講師の評価をしていたのだが、あまりにもひどい人はさておき、かなり問題があったとしても、背に腹は変えられないから(お客さんがたくさん来ていて、授業を提供しないといけない)翌年も仕事を依頼するわけだ。
教育業界のみならず、どんな仕事でも大なり小なり同じことが起こるだろう。
つまりその労働者の力量なんかとは別の使う側の都合が入り込んでくる。
上の人間も、その問題のある労働者と話すときに、めんどくさいから、嫌がる話はしないケースも多い。
そのため労働者の方ではおかしな自信を持ってしまうのかもしれない。