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古本屋日誌

2024-09-24 16:25:00

大江健三郎は現在考えられる限り最も優れた日本の小説家だ。

 

 

初期の短編から、個人のエゴを突き詰めた『個人的な体験』を経て、『万延元年のフットボール』そして私小説風の『水死』と様々なスタイルで活動を続けた。

 

 

とりわけ『水死』はノーベル文学賞受賞後の騒動も含めて身辺に起こった事件を取り上げていて興味深い。

 

 

「古義人さん(大江健三郎のこと)は十五年前、自分は戦後民主主義者で、天皇さまのご褒美は受けられないといわれたことから、わしの錬成道場の若い者らの、不倶戴天の敵となりました」

 

「前半の「昭和の精神」の申し子の十歳の少年が、尊敬している父親の口から、「現人神の天皇」を特攻機乗りとして訓練された兵士が自爆攻撃する、「人間神を殺す」という作戦の構想がでてくるとき、それをたやすく受け入れられると思いますか?」

 

 

前半は1995年にノーベル賞を受賞し、文化勲章の内示があったが、大江は天皇制を認めない、と述べて受賞を拒否した出来事を踏まえている。

 

後半はこの『水死』のモティーフとなっている父親が終戦直前に川で亡くなった事件のことだ。

 

 

この小説では愛媛で、特攻の訓練を受けた兵士たちが爆弾を搭載した飛行機で天皇を殺す計画を立てていた、それを幼い古義人(つまり大江健三郎本人)がこっそり聞いていたのだが、戦前のファナチックナ教育を受けていた古義人には理解を超えた話だったというわけだ。