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古本屋日誌
角川春樹の『わが闘争』は愉快な本だ。
彼は、角川書店の後継だったが、父の経営方針とは相入れない、映像化路線で会社を大きくした。
文庫本も、それまではカバーは地味で、岩波文庫などハトロン紙で包まれていて目立つこともなかった。
ところが、角川文庫は、和田勉や杉本一文を起用してイラストを描かせて魅力的な本に仕上げた。
また横溝正史や森村誠一の本を映画化して、同時に大々的にCMを打つことで、大ブームを巻き起こした。
俺の高校時代、ちょうど横溝正史ブームの真っ最中で、クラスでも『犬神家』やら『八つ墓村』の文庫本を持ってきて、「面白いやろ❓」とか「映画行かへんか❓」と言ってくる連中がいた。
しかし俺は横溝の作品がまともな探偵小説のレベルに全然達していないと思っていたから、こいつらはバカだと思っていた。
実際横溝の謎解きなるものは、地縁血縁の拗れた怨念めいたものでしかなく、客観的推理に足る証拠も提示されておらず、読者にフェアーとは到い言えないものだ。
ごく普通に考えてエラリークイーンの方が圧倒的に優れているとしか思えない。
そのあたりを、当の角川春樹はどう考えていたのか、興味があった。
彼は俳人として有名で、センスのよさは明らかだからね。
これについて角川は『少年マガジン』に当時、『八つ墓村』の連載があって、若者に受けていることを確認したという。何事もまず漫画の方が先駆けるものだと思っていたそうだ。
また電通が「ディスカバージャパン」というキャンペーンをやっていて、日本の古いもの、土俗的なものへの興味が高まっていて、横溝の作品と一致するところがあると感じたとも書いている。
うーん、よくわからないな。
漫画の『八つ墓村』がそんなに人気があったとも思えないし、日本の古いものへの関心が高まっていた、とも俺には思えないからだ。このあたりが角川春樹の天才たる所以なんだろう。
機を見るに敏、商才にたけた逸材なんだね。