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古本屋日誌

2024-07-03 20:28:00

山田稔は90を超えても、毎年新刊を出してる興味深い作家だ。

 

 

佐藤愛子もそうなんだが、あちらはベストセラーになって、ドラマ化までされているのに、山田の方は今ひとつ知名度が上がらない。

 

 

これは、なぜだがわからないが、出版社が、大阪のマイナーな「編集工房ノア」ばかりだということもあろう。

 

 

山田は以前は講談社とか河出書房とか、メジャーの出版社から創作集を出していたがこのところは専らノアばかりなのだ。

 

しかしそのエッセイのような小説はなかなか興味深い。

 

『幸福へのパスポート』(これも前は講談社文庫に入っていたのだが、今はノア)はフランス留学中のエピソードがあれこれ綴られている。

 

 

その中でもフランス人の青年が、アメリカについて山田の思いを聞き出そうとするシーンは面白い。

 

 

山田は、初め自分が日本から来たことを紹介する流れで「…今は日本はアメリカとの関係があって…」と話して、意識して「アメリカに占領されていた」と述べることを避けた。

 

 

向こうはアメリカに対する感想を聞いてくる。この質問に対しても慎重に対処して、政治的な文脈に流れないようにしたのだが、そのフランス青年は「原爆投下はとんでもないことですよね。私もそう思ってます」と食い下がってくるのだった。

 

 

山田によれば、こういうやりとりはフランスでは一般的なもので、質問された日本人がそれを肯定するのが定番の問答になっているというのだ。

 

 

連合国の仲間で、ノルマンジー上陸作戦の主力を担い、フランスをナチスから解放するのに尽力したアメリカに対する印象が悪いのは不思議だな。