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古本屋日誌
1995年に東京堂出版から尾形界而の『古書無月譚』が出た。
この人は一冊しか書いてないんだが、初版版を専門に扱う古本屋の駆け引きを細かく記したフィクションだ。
取り上げられているのは立原道造の『萱草(わすれぐさ)に寄す』。
この初版本が東京の大市に出た。
大市というのは古本屋が特選本を持ち寄り、業者仲間内の競りで取引をするイベントのことなんだが、ここには免許を取得した古本屋しか参加できないので、どうしてもその本が欲しいお客さんは、懇意にしている古本屋に頼み込んで入札してもらうのだ。
相場としては400万くらいなんだそうで、頼まれた古本屋は頼んできた客に「400でいけますわ、出せますか❓」てなやりとりをして入札に臨むのだ。
小説の中では、元は神田に店を構えていた老舗の古本屋の4代目が出てきて、無茶な高額入札をして掻っ攫って行く展開となる。
そのへんのやりとりも面白くはあるのだが、俺が興味深かったのは、初版本を扱う古本屋の収支だ。
なんでも初版本専門のお店では、1日10時間店を開けて、仕事は10分程度で、30万くらいの本を1冊売るのだという。
後の9時間50分は予習、調べ物をしたり、キャバレーやソープランド、時にはハワイに遊びに行っているというのだ。
店主が言うには「20万以下の買い物する客はゴミだ、相手にしなくていい。だいたい文庫やアダルトとかあつこうてる(例によってこういうタイプの方は大阪出身となっているのだ)店は5流だ。そんなやっすい本売って、30万、1日に稼ごう思たら、腱鞘炎なってまうで」
この小説では5階建ての自社ビルを建てたことになっているのだから、大したものだ。
なるほど、古本屋の経営者に多いタイプはこういう人なんだよなあ。
つまり一山当てて大儲けしてやろうという思いを抱き続ける山師みたいな人たちだ。