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古本屋日誌
シャーロックホームズ全集はいろんな版が出ているのだが、中でも、ちくま文庫の『詳注版』は人気だ。
この中に「犯人は二人」という短篇がある。ゴシップ(結婚前にショーパブの男に恋文を出していたとか、タチの悪い男と付き合っていたとか)をネタに上流階級の紳士、淑女を脅して金をせしめる男、ミルバートンの話だ。
この話は探偵小説ではなく、ホームズが悪漢を追い詰めるだけのものなのだ。(まあもともとホームズは推理をしているようには思えないけどね)
ホームズとワトソンは夜闇に紛れてミルバートンの屋敷に侵入して、浮気の証拠となる手紙の類を処分しようとする。
それはとりもなおさず、住居不法侵入、器物損壊などの犯罪ですな。手段、方法を選ばず、必要なことはどんどんやる、これにみんな惹かれるんです。
そこへ、ミルバートンが帰ってきてしまい、2人はカーテンの向こうに隠れるのだが、またそこへ、10数年前にミルバートンの奸計で夫となるべき紳士を自殺に追い込まれた女が現れて、ピストルでミルバートンを撃ち殺すのだ。
ワトソンは止めようとするのだが、ホームズに強く制止される。
2人は、銃声を聞いて駆けつける召使から何とか逃れるのだが、翌日デストレード警部が現れて、二人組の犯人の人相を語り、どうもそれがワトソンによく似ている。(そりゃそうだ)
しかしホームズは「普通は被害者に同情すべきものだが、復讐となれば、加害者の行いももっともなことだ」などと言って殺人をこともなげに正当化するのだ。
ここがホームズ人気の原点だよな。やられたらやり返す、殺人には当然殺人で報いる、これは人間の本質をよく示している。
復讐してこそ人間らしさを取り戻せるし、平穏でいられるのだ、と俺も思うよ。
明治の法学者、穂積陳重が『復讐と法律』で述べている。
徳川時代の仇討ちを禁じたのは、処罰の権限を国家権力が独占したいからである。
別段復讐が人間を堕落させるからでも、野蛮であるからでもない。
こういう当たり前の話が素晴らしいのだ。