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古本屋日誌

2023-07-18 12:02:00

神戸、元町の「花森書林」は魅力的な古本屋だ。

 

花隈の駅からほど近い、路地裏の、元は倉庫ではないかと思われるスペースに25坪くらいはゆうにある長細い店だ。

 

 

店の前には均一本が並んでいるが、入るとまず目に入ってくるのが、料理や手芸、安野光雅などなど絵本のコーナーだ。

 

さらに、本のほかに、お皿、小物、アクセサリー、仏像、海外の雑貨などもところ狭しと並んでいる。

 

店主はまだ若い女の人で、気さくにお客さんとあれこれ話をしている。

 

なんでも弟さんも一緒に店を切り盛りしているのだそうだ。

 

俺がこの店を知ったのは上本町にあった「一色文庫」のマスターから「神戸の古本屋でゆうたら、花森が一番いいのとちがうかな。いい本たくさん持ってる」と聞いたからなのだ。

 

その後実際に訪れてみてその言葉に偽りはないと思ったのだが、当の一色文庫のマスターは突然店を閉めてしまった。

 

 

その後花森書林に行った際、店主に「知ってはらへんかなあ。一色文庫が閉店してしまいましたんや。以前マスターから花森のことも聞いてたんで、お知り合いやろう思てね。」

 

 

「えーーそうなんですか。それは知りませんでしたわ。あのお店はたくさん馴染みのお客さんもついてたし、赤字ゆうことはありませんからね。また聞いときますわ」てなやりとりをした。

 

その後も阪神百貨店での古本市に花森も参加していたことがあった。初日ではない何日目かの昼下がり、出向いてみたら花森の店主がリュックサックから本を取り出して本棚に詰めている。

 

 

通常、古本祭りでの本の補充は、オープン前にやってしまうことが多い。それで「ご主人❗️えらい勢が出ますな」と話しかけたら

「いやいやいやいや、用事が、用事がありました」という。

 

何か早朝や前の晩に大阪までやって来にくい事情があった訳だ。

 

さらにコロナ騒ぎがあった。

 

全国で古本まつりは軒並み中止となったが、店舗での営業は続けているところがほとんどだった。

 

その中で花森はしばらく店を閉めていた。

 

後で聞いてみたら、子供さんがまだ小さくて、感染したら困るとの心配からのことだったようで、それはその通りだと納得がいったし、あの阪神百貨店でのこともそのあたりの事情だったのかなと思ったのだ。

 

コロナ騒ぎも収まって、また花森に来てみると、次第に本よりも雑貨、小物の方が増えてきていた。本は量が増えないし、同じ本がいつまでも棚にある。

 

古本屋なんだから、本も集めてもらいたいところなんだが、そうなるのは何か訳があるのだろう。

 

ここからは俺の勝手な想像、つまり邪推なんだが、普通の古本屋は買取に慎重だ。

 

 

自分の店の商品に合わない本は買い取らない。

 

いわんや、雑貨や小物なんかは扱ったこともないし、価値もわからないから買い取ることはない。

 

でもお客さんは「ここらへんにな、あるやつはな、こないだタイに行たときにな、こうてきたもんなんやけどな、もうただでええよって、姉ちゃんにやるわ。頼むよって持っていんでんか❓」てなことを言ってくるものなのだ。

 

花森の主人は(想像なんだが)日頃から店に来てくれるお客さんとあれやこれや話をして、人間関係ができてしまっているから、無下に断れない。

 

「そしたら、もって帰りましょうか」となって、結果、店には本以外の大量の雑貨、小物が溢れることになったのではなかろうか。

 

実は雑貨や小物が好きなお客さんは旅行が趣味の方が多い。

 

そういう方は本を読まない。だから旅行好きのお客さんへの買い取りが増えてきてしまうと、勢い古本屋が雑貨屋みたいになってくるのだ。

 

もちろんこれは俺の勝手な憶測だ。

 

ところが、その花森書林のホームページを見るとつい最近の、7月15日付の書き込みがあって、まだ若い店主が(43とあるから若いよなあ)5月に亡くなったとある。

 

店はしばらく閉めていたが7月17日から、弟さんが店主を引き継いで再開するとなっている。

 

これには驚いたよ。そんなことがあるんだとしか言いようもない。

 

本当に残念だ。

 

今から考えたら店主の健康状態があって、本の買い取りが十分にはできなかったのが原因なのかもしれないと思っている。

 

花森にはよくミニコミやら新聞の取材が来ていた。

 

若い女の経営者というのが物珍しいというのもあったのだろうが、彼女に喋らせると面白いというのもあったと思う。

 

 

今までよく覚えているのは、ミニコミの取材を店で受けていて、店の歴史を語っていた時のことだ。

 

実は花森は前に「トンカ書店」という屋号で別の場所で古本屋をやっていたのだ。

 

 

その辺から話し始めて、やがて店を移す話になる。このへんはよう覚えていないのだが、店が入っていたビルが老朽化していて、雨漏りがするようになったという話だったようだ。

 

 

それで今の店に移ってくるのだが、この辺になると彼女はすごく興がのってきて、「それで、それでここなんですが、倉庫だったところなんです。実は。ちょっとそうは見えないでしょう。そこを手を入れてね」と聞かれてもいないことを話し始める。

 

 

そのあと、ふと我に帰るのか「あー倉庫でという訳じゃないんです。実は」という。

 

店のお客さんやミニコミの読者が古本屋の場所が倉庫なのか、コンサート会場なのか、テナントビルなのか、そんなことを気にするとは俺には思えない。

 

 

そんなもんどこであったかて、なんの問題もないんだが、彼女はふと喋ってから、これは失言だと思ったようだ。