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古本屋日誌
NHKが先日『御堂筋、モダン建築でたどる大阪』を放送した。
片岡愛之助がリポーター役で、御堂筋の歴史や著名な建物をめぐる番組だ。
その中で、井上章一がコメンテイターで出ていた。
井上はこれまで欧米の都市の美しさ(高さ制限や彩色の限定、修理する際の細かい規定など)を讃え、対して日本の都市の乱雑ぶりを批判してきた。
街並みは無秩序で、周りとの調和など一切考えていないというやつだ。
坂口安吾は1942年の『日本文化史観』で、都市はもちろん法隆寺や「古代文化」がたとえ焼け落ちたとしても、「我々の生活」が健全であれば困ることはないと主張した。
井上章一はこれはアメリカ軍の空襲で都市や文化財が焼かれたとしても、なんら問題はないんだと戦争遂行を推進するためのプロパガンダだと批判するのだ。
こういう日頃の井上の言動からすれば、たかだか築50年くらいでビルを建て替えていくスクラップアンドビルドの大阪の現状は、批判の対象でこそあれ、評価になど値しないと考えられる。
なにせヴォーリズの大丸心斎橋店も建て替えられてしまったし、大正時代の堂ビルもその後の模様替えで、ずいぶんと外観がかわってしまった。大ビルなどは跡形もない。
大阪城公園にあった明治6年建築の造幣工廠本館すら、大阪城ホールのために騙し討ちのように取り壊された。
さて、井上章一のコメントだが、まず「梅田スカイビル」を持ち上げる。
「経済価値を度外視したビルで、随分敷地利用で無駄をしている。あそこを全部テナントにしたら儲かるでしょう。でもそうしない。
大阪は金にうるさいとか、ケチだとか言われてますね。その芳しくない世評に異を唱えているんです」
なるほどそういう考え方もあるのか。
確かに「スカイビル」は二つのビルを繋いで、真ん中は天空まで届く大きな吹き抜けになっている。円形の大きな空間など金儲けを考えたら、確かに無駄だな。
その上で井上は「大阪の人は街並みをそのまま保とうとは考えないんです。せいぜい50年くらいでどんどん建て替えていく。
何故かというと、資産価値がなくなるからです。
そうして大阪という街はスクラップアンドビルドを今後100年、200年と繰り返していく思いますよ。実はそれが大阪のエネルギーになっているんですね。」と語る。
先に持ち上げた、スカイビルのような金儲けを放棄した建築はやはり例外なんだということを言っている。
大阪のブルジョアジーどもは、金儲け第一なんだ、でもそこに救いもないわけではない。大阪発展のエネルギーになるのではないかというのだ。
NHKの番組スタンス(御堂筋線沿いのビルは大阪発展の象徴だということ)に合わせざるを得ないところもある。
でも本当に気に食わないんだったら、オファーを拒否したらいい。
それをしないでコメンテイターとなっているわけだから、井上章一先生も少しは考えを改めた、つまり転向したということなんだろうか。