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古本屋日誌

2023-03-24 09:55:00

中公文庫から武田百合子の『絵葉書のように』が出た。

 

2017年の浩瀚な単行本『あの頃』からの抜粋で編んであるエッセイ集だ。

 

武田は生前、雑誌掲載分に丁寧に目を通し、手を加えてからでないと本にしなかったそうだ。

 

1993年に亡くなって、今年でもう、30年になるものの、新たな読者を生み出し続ける人気ぶりだ。

 

出版社としても「武田百合子の単行本未収録作品を読みたい」というお客さんからの要望に応えたくなったものだろう。

 

それにしても、武田百合子の文章はうまい、うますぎる。

 

 

天賦の才であり、他の追随を許さないとしか言いようがない。

 

本屋にたくさん並んでいる作家連中の文章など、下手すぎてお話にもならない。

 

武田のそれは、企んでやっているように見えない、自然に流れ出しているかのような、努力とは一番遠い作品に思える。

 

 

長谷寺に牡丹を見に詣でた話。

 

 

「境内一円に満開であるはずの牡丹は、昨日の雨で、くちゃくちゃになっていた。

 

とんでいた鳥や蝶の群れが、いきなり、ばたばたと死にかけているような、どきりとする光景だった。

 

不機嫌な参詣客は、すれちがうとき、お互いに意地わるい眼つきをして境内を巡り、それでも牡丹の前で写真を撮ったり、撮られたりしていた。」