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古本屋日誌
航思社から岡崎次郎の『マルクスに凭れて六十年』が出た。
1983年に青土社から出た本の増補版で、古書価は高騰していて2万くらいしていた本だ。
それが増補もあり、解説や脚注も付いて4000円弱で読めるのだからありがたいことだ。
岡崎は『資本論』の翻訳などで知られたマルクス主義の研究家で、岩波文庫から向坂逸郎と共著で何冊も翻訳が出ている。
その岡崎が自らの半生を自嘲気味に描いたのが本書だ。
北海道の出で、東大の経済学部を卒業したはものの、1937年の人民戦線事件で逮捕、勾留{まる1年に及んだ)、その後渡満して満鉄調査部勤務となる。調査部では上と反りが合わず、閑職に追いやられる。
なかなか波乱の人生で、今のわれわれの薄っぺらい歩みとは雲泥の差がある。(もちろん、薄っぺらい人生の方が楽だし、平和であることは言うまでもない)
岡崎は地道にドイツ語の原書の翻訳に励ます学究肌も持ち合わせてはいたが、基本的には遊び人で、麻雀、囲碁、将棋をはじめ飲む、打つ、買うの三拍子とも揃うような状態だった。
一高時代は寮に入っていたのだが、もちろん相部屋であり、大半はさして学問に興味を持っていない学生であるから、毎夜毎夜宴会やら、将棋やら、夜遊びに余念がなく、到底集中して勉強に励める環境ではなかった。
岡崎のえらいところは、普通なら惰性で遊びに流れてしまうところを、踏みとどまり、一高の定期試験や翻訳の仕事がある際は「身体を壊した」と言い訳して寮を出て静かな環境に移って、勉学に励んだ点だ。
彼が堕落し切らなかった要因は他にもある。
学生時代から出版社から翻訳の仕事が来ていて、その締め切りはどうしても守らないといけない状態にあり、それが生活にリズムを与えて、夜遊びに一定の足枷となったことだ。
このあたりは、マスコミや出版社が櫛比する東京の素晴らしいところで、大の大人から「あんさん❗️頼んまっせ、この原稿落としてもうたら、わし腹切らんなんさかいな、あんじょうしたってや」と言われたらさすがに腹をくくらな仕方ないでしょう。
大阪や京都はそれがないから、遊び人体質の学生は止めどなくなってしまう。
歯止めといえば、いくらでもある予備校や塾の求人で、学生時代から教壇に立ってしまう。
これはたしかに生活に張りをあたえるのだが、そのまま就職してしまうことが多い。