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古本屋日誌
2023-02-07 12:44:00
西村賢太が死んでもう一年だ。
命日の2月5日付けで文藝春秋から『蝙蝠か燕か』が出た。
西村は魅力的な作家だったが、一つよくわからないのは藤澤清造へのえらい思い入れようだ。
全集を出すとかいって、豪華な内容見本を作ったり、小説にもしばしば傾倒するさまが書いてあった。
西村の尽力で藤澤の作品が文庫本となって刊行もされた。
新潮文庫の『根津権現裏』は代表作なんだが、読んでみてもつまらない小説だ。
グダグダと同じ話が繰り返され、ギャグのような部分も笑えない。
つまりどこがそんなにいいのか、わからないということなのだ。
今回の作品集にその点に触れた内容がある。
「妙にネチネチした、くど過ぎる程にくどい文体でもって一つの事を延々と語り続けるその小説は、(中略)一種異様な雰囲気があった。無論、いい意味での異様さではない。成程、この私小説家が往時も今もマイナー的存在として扱われている理由も窺い知れた思いであった」
「この小説世界がもしかしたら現在の自分が置かれた状況、それに伴う心境に塩梅にフィットするかもしれぬとの期待が生じ、再読する気になったのだ」
なるほど西村賢太も『根津権現裏』を評価しているわけではないのだ。
ただ、四面楚歌の自分(田中英光の親族を酒の席で殴ってしまい、それ以降、田中の研究を続けられなくなって、ひどく落ち込んでいた)が、藤澤清造の境遇に近いものだと思え、惹きつけられたわけだ。
自分に引き寄せて作家を読み込むことは誰にもよくあることだよなあ。