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古本屋日誌
1983年の夏休み、京都大学の教養部は静かだった。
理学部の太田くんは図書館で勉強しょうと、D、E号館に続く南北の道から、入り口まで数段設けられた階段にかかっていたところで、ポニーテールの20くらいの女に呼び止められた。
「私、聖書を研究しているものなんですが、聖書に興味はないですか❓」
「ないような、あるような」
「今の世界は、どうなんでしょう、夕張の炭鉱事故のような痛ましい惨事がありますね、頑張っても報われないおかしな世界だと思いませんか」
「そら、思うわな」
「人間が堕落してしまった原因を解き明かした理論があるんですよ、ぜひ耳を傾けてみませんか❓」
「こないだ正門で揉めてた原理の人ちゃうん❓」
「いや、いや、もめてません、ちょっと手違いが……」
とここで、全然見ず知らずのロン毛の女が介入してきた。
「お前な❗️原理研やろ❗️(つまり統一教会の人間ということ)わかっとんねんからな。ええ加減にさらせよ」
「何やねん❗️勝手にでしゃばるな❗️今この人と話しとんねん」
この後お二人はかなり長い時間、ああでもない、こうでもないとやり合っていた。
太田くん「ちょっと俺、せくよって、いぬわ」と図書館に入ろうとする。
女「ああ、そうなん、でも気ぃつけたってや、こんなバカ女の話聞いとったらあかへんで」
太田くんはちょっと前に正門で統一教会の猛者とぶつかって、本人は大したケガはせなんだものの、スクラムを組ました戦略的な誤りについて、後でいろいろ言われていた。
初めから全部わかってて、この女をおちょくってやろうとしていたわけだ。
ただ途中で全然関係ない学生が介入して、きたのでやや消化不良に終わったな。
この80年代初頭では、統一教会の胡散臭さは普通の学生にも浸透していて、左右両翼でもない連中でも、攻撃的になることがあったのだ。
それにしても俺だったら、喧嘩をした連中をその後おちょくったろうとは思わないな。