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古本屋日誌
辺見庸の小説をマンガ化した『ラーゲリ』が文春現代史コミックスで出た。
河井克夫が作画で、敗戦後のシベリア抑留の話だ。
主人公の山本は、戦時中、情報局に勤めていたことが、ソ連にばれてシベリアから帰国途中、列車から再び奥地の収容所に連行されてしまう。
それでも腐ることなく、俳句の同好会を組織して、強制労働の最中皆に生きがいを提供していた。
また、仲間が病に倒れて亡くなってしまった時も、葬式の最中に入ってきたソ連兵に強く抗議して追い返すなど、骨のあるところもあった。
その山本が齢45で帰らぬ人となって、彼が残した妻や家族宛の遺書を6人の兵隊が少しずつ暗記して伝えようとする。
メモなど書き記したものは、ソ連兵に没収されてしまうからだ。
6人は記憶したものを帰国後に改めて文字起こしをするなどして、遺族のもとに届けたのだ。
シベリア抑留は、ソ連による戦争犯罪であり、無辜の大衆を大量に誘拐して、強制労働させた暴挙だ。
「鉄条網の3メートル以内に入ったものは射殺する」というルールや、少ない食料、極寒の中での長時間労働など想像を絶する。
その中で赤の他人の遺書を、危険を冒してまで暗記して、伝えようとするのは不思議なことだ。
よほど山本に思い入れがあって、悔やんでも悔やみきれない強い思いがあったのだろう。
それは彼がソ連兵にゆうべきことを堂々と主張して、言い分を通した英雄的な面や、帰国の途中で再び連行されるという同情すべきところがあったというだけでは説明できないのではなかろうか。
やはり心の拠り所となっていた俳句同好会の主宰者であったことがポイントだろう。
極限の環境の中、不安だけが心を占めている、唯一の慰めが句会であったのだ。
寒い、ひもじい、侘しいなか知恵を絞って吟じた一句一句がその日を生きる糧となったのだろう。