Welcome

古本屋日誌

2022-11-23 19:31:00

小谷野敦が中央公論から『徳川時代はそんなにいい時代だったのか』を出した。

 

 

小谷野はだいぶ前に『江戸幻想批判』を出しているので、その続編だ。

 

 

徳川時代は身分で将来が決まってしまっていたから、低い身分に生まれてしまったら、いくら才能があっても埋もれたままであった。

 

 

公衆衛生の観念も発達していないし、医療技術も心許ないから、一旦重い病にかかってしまったら、あっけなく死んでしまう。

 

世評高い渡辺京二の『逝きし世の面影』はとんでもない悪書だという。

 

渡辺は徳川時代の大衆が、みな笑顔で自足していると当時日本を訪れた欧米人が書き残した記録によって論じる。

 

小谷野は笑顔で自足しているのは、いくら努力しても無駄だとわかっていて、向上心や探究心の持ちようがないからだと批判する。

 

なるほど納得できる内容だ。

 

俺もだいぶ前だけど結核にかかり、40日余りも入院を余儀なくされた。徳川時代なら間違いなく死亡していた。

 

才能のことも、現代は特段才能などなくても大丈夫というところもいい。

 

本屋に並んでいる本は、大半がくだらないものだし、映画もどうしてここまで愚にもつかないものが制作できるのか、いぶかしく思うこともしばしばある。

 

 

でも朝から夕方までの仕事でクタクタに疲れた労働者が息抜きに求めるものは、あの程度の時代小説やテレビドラマであるわけだから、その切実な要求に作家が、真摯に答えた結果なのだ。

 

 

いわば工場でジュースやビールがベルトコンベアで、目にも止まらぬ早技で生産されるように、小説も映画も判で押したようようなものが量産されている。

 

そういう大きな需要がある社会は、バカを甘やかしてくれる社会なわけだから誠にありがたい。

 

俺もあやかりたいと思っていることは、いうまでもない。