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古本屋日誌
地下鉄谷町線の千林大宮駅の近く、1号線沿いにあった「尚文堂書店」が閉店した。
店主はもう80がらみで、そういう日が遠からず来るだろうとは思っていた。
店は間口は二間ほどで、店頭には平台にたくさんの時代小説を廉価で並べていた。老人が多い千林には当然のラインアップだ。
入ってすぐ右側の棚には歌集、詩集俳句の本、その奥には歴史書、哲学書。真ん中の本棚には片側には講談社学術文庫、ちくま文庫と新書が並び、もう片側は大量の時代小説が並んでいた。
店主の座っている結界のところには辞書や大阪の本。
そして左側の本棚には占い、オカルト、歴史、考古学、画集が並び本棚から突き出した平台にはカバーなしの大量の岩波文庫が積んであった。
近くには大阪工業大学があって、千林大宮駅は、朝夕大勢の学生で賑わっていた。しかし理系の学生は時代小説や歴史書は読まない。
尚文堂の顧客の大半は近所の老人だった。
阪大の石橋キャンパス近くの太田書店や、京大本部前にある吉岡書店のように理系の学生相手に教科書を売ることはなく、地元民に密着した商売に徹していた。
年齢を重ねると、重たい本を取り扱うのは骨だし、車の運転も反射神経の衰えだおぼつかなくなる。
店主は、店頭で客が持ち込んだ本を買い付ける他に、谷町四丁目にある大阪古書会館に出向き、市に出る本も買い付けていた。
さてその重たい本の運搬はどうするんだろう?と思っていたら、「本はな、赤帽さんに頼んでここまで持ってきてもらうんや」とのことだった。
なるほど1号線沿いで店の前にバンを横付けできるロケーションだし、赤帽も嫌がらなかったのだろう。
自分で運転して店まで運び込むのに比べて、確かにコストはかかる。
しかしそれコミで経営していくことは十分できるんだということがわかって、頼もしかった。