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古本屋日誌
今日は久しぶりに京都のお客さんのところに仕入れに出向いた。
東寺のそばにある横幅は二間ほどのしもたやだ。
お話によれば「築200年くらいやろな」とのことで、玄関を入ったところに吹き抜け、煙出しを備えた台所がある。(今は物置になっている)その横に長い土間が伸びていて奥の蔵のところまで続いている。
奥に進むと、せんざい(中庭のことです)があって、石造の蔵がそなえられており、その中にいろんな本が積み上がっているのだ。
「適当に見つくろって、もってかえってもうてかまへんよって」とのことで気楽に査定を始めた。
すぐ横にこの家の主人、60がらみで楽隠居風の親父が椅子に腰掛けて見ているが、今回は俺の得意な講談社文芸文庫やちくま文庫なので、査定金額が分からず、焦るということもない。
蔵の中は風もないので蒸し暑いが、静かで集中して本をチェックできる。
なんの音もないのに、不思議なことに両膝から下がやけに痛痒くなってくる。全体が腫れぼったくて、熱を帯びている感じなのだ。
下半身を覗き込んでみたらものすごい数の蚊が足に止まったり、周囲を飛び回ったりしているではないか。
暑いので半ズボンに草履というラフなスタイルだったのが災いして、太ももより下を集中して噛んでくるようだ。
「ご主人!これはえらいこってす。蚊が多すぎますな!」と横で査定を見守っているおっちゃんに、嘆きをぶつけてみる。
「俺は、なんでなんやろか、ちょっとも噛まれへんのよ。蚊はな、足の裏から出る臭いに反応してやって来るらしいで。血液型は関係あらへん。要するに、あんさんは蚊に好かれとるな」とる呑気なことをいう。
ざっと数えただけでも20箇所くらいは優にやられていて、叩き潰した蚊はせいぜい五匹くらいで、全く計算が合わない。
「いやもう、これでは日本脳炎なるやら、下手したらマラリアになってまいまっせ、今日はもう手仕舞いさしてもらいまっさ」とさっさと切り上げて出てきた。