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古本屋日誌
今年92なんだが元気に本を出している山田稔の『選ばれた一人』(河田書房新社)は大学紛争を描いた面白い作品だ。
勤務校(私大ということになってるけど、もちろん京都大学文学部だ)でしばらくバリケードストライキが続いて、解除後授業再開となり、主人公の逸見助教授は民主派(代々木のこと)の集会にひょんなことから参加してしまう。
「『先生にとって、そもそも文学研究とは何なのか。』
『むつかしい問題ですね。…わたしはですね、その、学生時代にですね、ちょうどみなさんくらいの年齢のときだったかなあ、今文学部長をしておられる堀之内先生のディケンズの講義を聞かせていただきましてね、それ以来ずぅっと…』
『われわれはそんな思い出話を聞きに来たのではありませんよ(爆笑)われわれだって忙しいんですからね』
(中略)
『文学研究とは何かという問題についてわれわれは先生のお考えを知りたいと考えているんです』
『むつかしい問題だなあ』
「それでは答えになりませんよ』
「………』
「どうなんですよ。先生にとって文学研究とは何か、答えてくださいよ!』
『…率直にいうと…』
『率直にいうと?』
『文学研究というのはわたしの楽しみ、いわば道楽みたいなものなのかもしれない。』
『道楽。道楽っていわれましたね。では先生は遊び半分に文学を研究したり、授業をしたりしておられるのですか。それが研究者、教育者の態度ですか。堀之内先生はそんな学問の仕方を教えられたのですか!』
(中略)
『もう一度たずねます。いいですか。よく聞いてくださいよ。逸見先生、逸見助教授、あなたにとっていったい学問とは何か。民主的学問とは何なのか!』」
結局逸見は30分ほど沈黙して、考えたが思いつくことができなかった。
「「もういいですよ、しかしですね、最後に、学問研究とは何であるか三十分考えたがわからなかったことを、学友諸君の前で確認してください!』
『…わたしは、学問研究とは何であるか三十分間考えましたがわかりませんでした』
いい終わらぬうちに場内から失笑とまばらな拍手がおこった。
『わたしは無能教員であることを認めます。』学生が言った。
『わたしは無能教員であることを認めます。』そう繰り返す声を逸見は聞いた。
「わたしはバカです。』
「私はバカです。』声は再び繰り返した。」
これが文学部長の逆鱗に触れて逸見は大学からパージされることになる。
しかし本当にくだらない学生どもだよなあ。
文学研究は道楽だし、それで何の問題もない。
確かに業績をあげられない、ちゃんとした単著も書けない、博士号もない教授連中は問題だけど、それはまた別の問題だ。
こういうバカばかりなのが京都大学文学部なんだよ。