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古本屋日誌

2022-06-22 12:20:00

向田邦子のエッセイ『眠る盃』に「痴漢」に遭った話がある。

 

1972年の作品でその時点で20年前の話だとある。

 

当時著者の自宅近辺は今とは違い、電灯もなく鼻をつままれてもわからない闇夜だった。

 

夕刻帰宅を急いでいたら、つけてくる足音が聞こえて手を掴まれて、刃物を突きつけられた。

 

向田が「お金ですか❓」と2回繰り返したが男は無言で竹藪に連れ込まれてしまった。

 

その時左手に人から借りたカメラを持っていて、それを振り回したら、男の腹に当たって、男がひるむすきに逃げ出したとある。

 

警察に届けたのだが、向田邦子は悔しくてならず、自分の手で犯人をあげようと電車に乗る時刻を10分ずつ変えて、ぼんやりとだが覚えている犯人の顔を手がかりに、それらしい人物を探し求めた。

 

結局1週間目に車内で犯人を見つけて、睨みつけたら人をかき分けて逃げようとしたので、追いかけて手に怪我を負いながらも警察に引き渡した。

 

その後警察の事情聴取を受けに署に出向いたら同じ犯人にやられた3人の女性と出会った。

 

そのうち1人は刃物で腹を刺されて3ヶ月も入院したというのだ。

 

その後向田は何度か出所した犯人と電車で遭遇することがあった。

 

男は向田に気づくと、はじいることもなく「今日は天気ですね」などとにこやかに話しかけてくるのだった。

 

いやまあ、とんでもない話だよな。

 

向田は「痴漢」と書いているがその域を超えていて明らかに監禁であるし、傷害で強姦未遂だ。

 

またその犯人がいけしゃあしゃあと被害者に話しかけてくるというのも不気味だし、他人事なんだが想像しただけでも肌が粟立つ。

 

これを読むと、どう考えても今の方がどれほどマシな時代であるかよくわかるよなあ。