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古本屋日誌

2022-05-29 12:05:00

西村賢太の新刊「雨滴は続く」を読み終えた。

 

38歳で芥川賞候補になった通知を受け取る(実際の受賞は44歳)ところで未完のままとなっている。

 

西村が急に死んでしまったため、おそらく単行本化の際には十分に手を入れるであろう箇所が放置されていて、肩透かしを食らったような感が否めない。

 

特に藤沢清造の菩提寺のある七尾で、法要の取材に来た地元新聞の新人女記者に入れ上げて、なんとかデートにこぎつけようとするシーンはもったいない。

 

 

主人公の貫多は小説家志望の新人記者の気を引こうと、自身の短編小説やエッセーが載っている文芸雑誌を、いそいそと速達で女の元に送りつけて、相手からの返事に一喜一憂するのだ。

 

これはこれで面白いのだが、やがて貫多が意を決して女に好意あることを打ち明ける手紙を書くシーンがあるのだ。

 

 

その手紙の内容は、あからさまには好意を抱いているとは書いてはいないけれども、小説家志望の女が読めば十分にその意あるところがわかる文面だということになっている。

 

しかし肝心の手紙の文章は一切掲載してないし、また相手からの返事の文面もほとんど載っていない。

 

これはラブレターの書き方を、高名な芥川賞作家から教わろうと目論んでいる俺には隔靴掻痒だなあ。

 

単行本にするときは間違いなく、推敲に推敲を重ねた文面を拝めるはずだったのだろうけれど、今となっては望むべくもない。