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古本屋日誌

2022-03-07 10:58:00

死を予感した人間が無意識のうちに周りの親しい人たちに別れをいうということがあるのかね。

 

昨日発売の「文学界」には先日突然死んだ西村賢太の遺稿が載っていた。

 

その中に初の単行本が出ることになっていささか浮かれ気味の貫多にある編集者が冷や水を浴びせる場面があった。

 

このことは昨日書いた。

 

ショックを受けた貫多は七尾に立てた藤澤清造の墓の隣りの骨壷に入ることになったかもしれないという話だ。

 

その前に亡くなった評論家の坪内祐三の場合はもっとはっきりしている。

 

亡くなる直前にある雑誌で自分の親の世代は長生きする人が多く、90超えても矍鑠としているのだが、自分たちの世代は実は早くして死んでしまう人が多いんだと書いていた。

 

私の友人酒井博之くんは早くも2000年にくも膜下出血で死んでしまった。

 

倒れる数日前に上六の古本屋「天地書房」の藤田さんに買い取りを頼んだ話をした。勉誠社から出ていた「歌舞伎台帳集成」の何冊かを売ったのだ。

藤田さんはなんでも思ったことを素直におっしゃる魅力的な方でこの時も「これ揃てまへんな、値になりませんわ、もったいないことやな」と叱られました。

酒井の部屋にもいろいろ本があることを知っていたので

「あんたんとこのごちゃごちゃした本も売ったらええんちゃうか」

「俺んとこのは大した金にもならんのばっかりやで」てなやりとりをした。これが2000年の1月20日で、その後23日に彼は早朝倒れてそのまま亡くなり、結局残った本の処分は2月頭に天地書房の藤田さんに頼むことになってしまった。

 

藤田さんは残っている本の種類を聞いてから、「まあそういう特別な事情がおありなんだから、引き取りに行ってあげますわ」と西宮の門戸厄神まで来てくださった。