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古本屋日誌
2022-02-05 11:53:00
中央公論社から「伊藤整日記」が出ている。
1960年代の伊藤整の日常や文壇、世相が興味深いものだ。
その第6巻は1963年から翌年にかけてのものなのだが、不正入試に絡む話がある。
「塩谷出身の海藤十二郎の息子さんの中大入学」を知り合いの高橋健二に依頼するのだ。
高橋はあれこれ取り計らったようで、「文学部なら」「補欠で入れる」との返事を伊藤整に伝えている。
その後便宜を図ってもらったお礼として海藤十二郎から高橋のところに「洋服地」を送ってきたので、「送り返した」との記述もあった。
中大は私学であるし、入学者選抜において情実や諸般の事情を考慮することはおかしなことではない。
以前同志社大学の神学部で地方の牧師の不出来な息子の点数に下駄を履かせて入学させていた事がマスコミの知るところとなり一部で騒ぐ向きもあった。
しかし同志社は神学部は教会の存続のために存在する学部だという意味合いもあるとして、謝罪などはしなかった。その通りだと思う。
日記には伊藤整の娘の奇行も記してある。
ある日西荻窪のレストランから伊藤家に電話があった。
伊藤整の娘のユキ子が白づくめの洋装でレストランを訪れて仕事をしたいという。
しかし金を盗まれたと言って店から300円を借り、「荷物を取りに」と言って出て行ってしまった。後に残された上着に手帖があって伊藤家の電話番号があったというのだ。
このような娘の不祥事に、悩まされながらも伊藤は「日本文壇史」を書き続けていたんだなあ。