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古本屋日誌
2022-01-25 11:46:00
去年亡くなった田辺聖子の松蔭学園時代、18の頃の日記が文藝春秋から出た。
その中に3月14日の大阪大空襲の遺体を掘り出すシーンがある。
「牛肉の筋に似てぶよぶよと赤い土まみれの一塊の肉が見える」
興味深いのは周りの大人たちの反応だ。
「ええ肥料になりますやろ。」とか
「『肉の特別配給だっせ。ご馳走したげまひょう』と年寄りまで言う。
あたりの人は胸わるそうに顔をしかめたが、年寄り婆さんは、きゃらきわらとわらった。
壕の中の男連中はしきりに死体の位置と発掘後の処置について論じ合っている。
『お嬢さん、もう止めときなはれ、御飯食べられしまへんで』隣組のおじさんが、スコップで良い土を畠へ投げながら、汗のしたたる顔で笑った。」
アメリカの無軌道な無差別爆撃で無辜の市民が虐殺されたというのに、なぜか明るいし、こともなげだ。
プレグマンの『希望の歴史』にナチスのロンドン空襲後の市民の反応を書いたところがある。ナチスはイギリス国民の戦意を喪失させるために執拗にロンドンの大規模空爆を続けたが、むしろ戦意は高揚し、空爆中の工業生産は上昇したとある。
田辺の書く大阪の大衆の反応はアメリカ憎しでもないし、戦意の高まりとは到底いえない不思議なものだ。
これまでの紋切り型の空襲体験てなんだったんだろうか。