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古本屋日誌

2021-12-29 11:18:00

文藝春秋から田辺聖子の18歳の時の日記が出ている。

亡くなってから姪が彼女の自宅を整理していたときに発見したもので、昭和20年の4月からのものだ。

日記帳の欄外にはすでにいくつかの短編小説が書き込まれていてそれも併せて刊行している。

興味深いのは5月の空襲で死んだ人を地中から掘り出す作業のシーンだ。

空襲から何日かたった地面の下に死体が埋まっていることがわかり、付近の住民が集まって掘り出すのだが、出てきた死体は傷つき、切り裂かれて血肉したたる無残なものだった。

田辺はそれを目の当たりにしてそのむごたらしさに目を背けて茫然としている。

ところが近所に大人たちは

「あれは焼肉みたいやな❗️」とか

「こんがり焼けて立派なもんだよ❗️」と笑いながら言い合っているのだ。

田辺はこれを聞いて仮にも戦争で死んだ人を悼むでもなく、笑い者にするとはと憤慨するわけだ。

これはプレグマンが「希望の歴史」で書いていたことだ。

ナチスが苛烈なロンドン空襲を仕掛けて市民の戦争への意識を喪失させようとしてが、事態はまるで逆でむしろ戦意は高揚したというのだ。

日本でも同じようなことが起こっていたのは間違い無いだろう。