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古本屋日誌

2021-10-26 13:40:00

筑摩書房から岸政彦編纂の「東京の生活史」がでた。

普通の人にこれまでの人生を自由に語ってもらうという本で、150人からの聞き取りが掲載してあって1000ページを優に超える大冊だ。

以前猪瀬直樹が「日本凡人伝」シリーズを出して市井の名もなき凡人にあれこれ語らせて面白かった。

ただ猪瀬の本は凡人となってはいるが、米の収穫高日本一で表彰された篤農家や東大生協の地下で何十年も時計の修繕を積み重ねてきた職人など、ちょっと凡人とはいいかねる人も取り上げてあった。

今回の本は本当に凡人の語りばかりで実に面白い。

もう皆さんもお気づきの通り世間でよくある偉人伝の類いは全然面白くない。

名を上げたプロセスなどワンパターだし、波乱万丈でもない。また、フィクションに描かれた人生も現実に比べたら作り話に過ぎず退屈だ。

レコードが好きで将来的自分の店を持ちたいと思っていた男の話がある。

男はレコード店であれこれレコードあさりをして気に入った盤を買い満足はするのだが「レコード店は長く余韻に浸って過ごせる場所じゃないでしょ」という。

金を払ったらレコードを抱えた出ていかなければならない。

そこでレコード屋の中には喫茶店を作ればいます手に入れたばかりの名盤をじっくり楽しめると考えた。

なかなかいい考えだし、人が多くて多趣味だし、仕事絡みの需要も期待できる東京が出店するには一番だと思われた。

「しかしな、東京はおんなじような店がなんぼもあるでしょ。うちの店の近所のレコード屋に客がようさん入ってうちはからっきしなら気になるでしょ」というのだ。

「あれだけの人出で通りに人がようさん歩いてるのに、なんでうちの店には入らないんだ‼️て腹が立ってくるでしょう」

ということで店は東京から遠く離れた田舎に開いた。

「うちの近所はあんまり店もないし、東山レコード屋は一軒だけ。通りも人が歩いてないからうちの店には客がいて入ってこないのも当たり前で気分もスッキリしていい」

居直りなのか、自分に言い聞かしているのか、本心なのか、それにしても面白い。

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