Welcome
古本屋日誌
2021-08-29 10:00:00
立風書房からでた松谷みよ子の「現代民話考」は興味深い話がたくさん収めてある。
そのシリーズに「銃後」と題された本がある。大東亜戦争中の人々の逸話を集めたものだ。
静岡の清水の話で戦時中の食糧難の最中、空襲で焼けた倉庫から缶詰を放出するとのことで、皆手に手に袋を持って遠い清水港まででむいた。
ピカピカのかんづめが人が登るほどに積み上げられていていくつもの山になっている。
兵隊さんの合図で縄のテープが切られ皆歓声を上げて駆け上がった。
私は姉と大きな麻袋にいっぱいひろい、あまりの重たさに泣きたい思いで引きずるようにして、途中一つ、ふたつと捨てながら家に着いた。
「缶が割合きれいで、振って水の音が少しすれば大丈夫」との話で、喜んで中を開けると、みかんも、サザエもパイナップルも焦げていて、ひとつも食べられなかった。
こういう話だ。
毎日腹を空かせていて何もいいことがなかった。
そこへ期待を抱かせる出来事が続けて起こるわけだ。
缶詰がたくさんあって、しかもピカピカの缶がいくつも山に積んであり、テープカットまでして期待は否応なしに高まる。
持ち帰るのに苦労するくらいたくさん手に入り、帰りしなはおそらく沿道の腹を空かせた連中から物乞いされたのだろう、でも気持ちよく恵んであげた。
そういった嬉しさの積み重ねのクライマックスが缶を開ける瞬間だろう。なんていいことがこの世にはあるのか‼️私の日頃の行いがよかったから神さまが見ていてくださったんだろう‼️てなことは思う。
しかし全ては幻に終わってしまう。
iPhoneから送信