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古本屋日誌

2021-04-26 21:54:00

山本周五郎のデビュー作は「須磨寺付近」なんだが、どの短編集に入っているのか分からずまごまごしていた。

ネットで調べるとたちどころに新潮文庫の「花杖記」だとわかり早速読んでみた。

「豹」同様、女の暴力性をテーマにした作品で面白かった。

夫が米国主張中の康子は弟と須磨寺付近の自宅で二人暮らしだったが、馴染みの清三を招いて話し相手になってもらう。

美貌の康子にもともと清三は気があった。

康子の方も平気で清三を家に住まわせ「いつまでいらっしゃれますの❓」などと気を持たせる。

いくらなんでも夫の不在で閨の無聊をかこつ人妻とはいえ、いきなり家に若い年下の男を囲うような展開は無理がある。

でも周五郎としては自然とご近所の若い男と親しくなる展開は必要だとわかってはいたが、そんなことを書きたいわけではなかったから目をつぶったものだろう。

その後も康子は色目を使い二人っきりで思わせぶりな言葉を呟く。

「私たちの結婚がこうふくか幸福でないかわかりますか❓」
まるで不幸な私を救ってくれと言わんばかりだ。

そのくせ清三が康子の手を取ろうとすると「我慢なさいませ」と逃げてしまう。

ある時など康子はわざわざ大阪の清三の職場に電話をかけてきて「夕方、松竹座で待ってます」と自分の席番号まで教えて呼びつける。

清三がふらふら行ってみたら康子は横に座った紳士とあれこれ話をしている。あとでこの男は職場の上司だとわかるのだが、親しげに女が言葉を交わすのを目の当たりにして男は平静ではいられない。

これらが全てある盛り上がりに向けての女の作戦であることがやがて明らかになる。

この程度のことは男であれ女であれ仕組むだろうけどやられた方はたまらないよなあ。



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